風力発電のタービン検査にAI活用、検査時間4分の1に:IT活用
シーメンス・ガメサが風力発電用タービン羽根の品質検査に、富士通のAIを活用。熟練技術者が6時間をかかっていた超音波画像の確認時間を、1.5時間に短縮した。
富士通は、風力発電大手のシーメンス・ガメサ(Siemens Gamesa Renewable Energy、スペイン ビスカヤ)に、深層学習(ディープラーニング)を活用したAI(人工知能)ソリューションを導入し、風力発電用タービン羽根の品質検査時間の大幅な短縮を実現したと発表した。
同AIソリューションは、超音波による非破壊試験で収集した画像をAIに学習させてモデル化することで、稼働中に羽根に不具合を起こす可能性がある製造上の欠陥を、自動で識別可能にしているという。これにより、従来、熟練技術者が6時間を要していた羽根の品質検査における超音波画像の確認時間を、1.5時間に短縮できたという。
シーメンス・ガメサの品質保証検査の責任者ハイネ・バッハ(Heine Bach)氏は、「故障があってはならない風力タービンの羽根の品質検査時間を短縮するためには、検査の精度や製品の安全性を損なうことなく画像の確認を迅速化できるソリューションが必要だった。富士通のAIソリューションを導入することで、風力タービンの羽根の品質検査を従来の4分の1で行うことが可能になるなど、品質検査に必要な時間を大幅に短縮するだけでなく、目視では確認が困難である微細な欠陥も検知することが可能になった。これにより、技術者はこのソリューションで検知した箇所の目視検査に集中することができる」と述べている。
富士通は、個客の要求に合わせて作り込んだAIソフトウェアを、柔軟性のあるライセンスモデルで提供しているため、シーメンス・ガメサは初期投資を最小限に抑えることができるという。同AIソリューションは、富士通のPCサーバ「FUJITSU Server PRIMERGY」で構築されたオンプレミスのシステム上で作動し、風力タービンの羽根のモデル変更に対しても容易に対応できるよう設計されている。富士通は今後、同AIソリューションをクラウドサービスとして2018年に提供する予定だ。
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