大阪ガスは2017年11月、タイのAgriculture of Basin Companyと共同で、農業残さから発生するバイオガスからCO2を取り除き、高純度のメタンガスを製造して、天然ガス自動車へ供給する商用実証事業をタイ国内で開始したと発表した。
実証事業では、ABC社が自社のパーム(あぶらヤシ)油製造工場で工場廃水中の有機物をメタン発酵させ、発生したバイオガスを大阪ガスが精製し、メタンガスを製造。ABC社は精製メタンガスを自社が所有する天然ガス自動車の燃料として利用する。実証事業は約1年間の予定。大阪ガスは商用展開を想定した250N立方メートル/h規模のバイオガス精製装置を試験運転し、長期の運転における安定性を確認するとともに、メタンガスの製造コストを最小化するための運転方法、自動車燃料としての有効性などの検証を行う。ABC社は、今回の実証試験の成果をもとに、今後も工場で発生するバイオガスを天然ガス自動車の燃料として有効利用する取り組みを積極的に展開していく。
大阪ガスでは、未利用となっているバイオガスを有効利用し、省エネルギーと地球環境保全を推進するために、2012年からバイオガス精製技術の開発に取り組んできた。同社独自のハイブリッド型バイオガス精製システムは、CO2を選択的に吸着する吸着剤を利用し、バイオガスからメタンガスを取り出す「PSA」と、PSAから排出されるオフガスからCO2を除いてメタンガスを回収する「分離膜」を組み合わせている。これによりPSAで高純度のメタンガスを精製しながら、オフガスをリサイクルすることで、世界最高レベルというメタン回収効率99%以上を実現する。
農業が重要産業の1つであるタイでは、サトウキビの搾りかすやパーム残さ、食品系工場廃水といったバイオマス資源が豊富であるとともに、天然ガス自動車の普及も進んでいる。大阪ガスはタイでバイオマス資源を有効活用し、温室効果ガス排出量削減に貢献できると考え、実証事業を行うこととした。
大阪ガスは、長期経営ビジョン「Going Forward Beyond Borders 2030」で、海外エネルギー事業の拡大を目指しており、タイでは既にグループ会社を中心にエネルギーサービス事業やコージェネレーションシステムのオンサイト事業を積極的に展開中だ。今後、2018年内のバイオガス精製技術商用化を目指して同実証事業に取り組み、東南アジアでのエネルギービジネスの更なる拡大、バイオマス資源の有効活用による温室効果ガス排出量削減への貢献を図っていくとしている。
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