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2003/11/27 16:00 更新

通信と放送の“非”融合〜何が両者の間を隔てているのか?〜
第4回:ブロードバンドで「トリビアの泉」は見られるか?(1)

今回からは通信用のネットワークを利用して、放送波がこれまで扱ってきた情報やコンテンツをテレビ向けに送信する「ブロードバンドTV放送」を取り上げ、「通信」と「放送」の融合に向けた課題について考えてみたい。

 2003年11月現在では、「ブロードバンド経由で、地上波テレビで放映中の『トリビアの泉』を視聴できる」というネタはまだ投稿できる段階にはないが、すでにブロードバンド経由で地上波テレビの番組を視聴できるサービスを検討する動きが起こりつつある。

 そして、そこには「通信」と「放送」がなかなか「融合」し難い課題が浮き彫りとなっている。

 今回からは前回までの「ケータイから見た“非”融合」に引き続き、通信用のネットワークを利用して、放送波がこれまで扱ってきた情報やコンテンツをテレビ向けに送ろうとするサービスである「ブロードバンドTV放送」を取り上げ、「通信」と「放送」の融合に向けた課題について考えてみたい。

ブロードバンドTV放送の立ち上がり

 このところソフトバンクグループの「Yahoo!BBケーブル」、スカイパーフェクTV!の「オプティキャスト」、KDDIの「光プラステレビ」、オンラインティーヴィ等々、ブロードバンドの通信ネットワークを用いてテレビ受像器向けに映像を配信する事業が続々と立ち上がっている。

KDDIの光プラステレビのトップメニュー画面

KDDIの光プラステレビのトップメニュー画面

 いずれの事業者も「電気通信役務利用放送事業者」の登録を行い、いよいよ通信と放送の融合(より正確には通信による放送事業への参入)が商業サービスとして立ち上がったとして注目を集めている。

 通信ネットワーク部分については各社それぞれに技術的な特色を打ち出しているが、基本的には、映像をMPEG2(ないしは4)の圧縮方式を採用し、2〜4Mbpsの画質、通信用のネットワーク経由で映像データを各家庭まで運び、加入家庭はレンタルしたSTBを経由してテレビ受像器で再生する、という点では共通している。

 チャンネルラインナップにおいても共通点が多く、CS放送やCATVで提供されている委託放送事業者のものが並んでいる。

事業者名 BBケーブル オプティキャスト KDDI オンラインティーヴィ
サービス名 BBケーブルTV 光プラステレビ
株主 クラビット(ソフトバンク・グループ) スカイパーフェクト・
コミュニケーションズ
ジュピタープログラミング、セコム、東北新社、日本経済新聞社
伝送ライン ADSL FTTH FTTH ADSL/FTTH
チャンネル数 20ch スカパー!で提供される全番組 28ch 20ch程度
VOD 約1,600タイトル(2004年に5,000程度に拡大予定) 無し 2,000タイトル程度を予定 1,000タイトル程度を予定
サービス開始(予定)時期 2003年3月 2003年12月 2003年12月 今冬
月額料金 2500円 スカパー!と同一の料金体系 6950円(ネット接続、IP電話含む) 未定

 実際、テレビ画面で見ると、いずれも既存の放送波経由のテレビ番組と比較しても遜色のないものとなっている。そして今後は、「通信」としての強みを活かした双方向性の強いサービスとして従来のテレビにない付加価値を提供する存在へと発展していくことが期待されている。

ブロードバンドで地上波TVは見られるか?

 「ブロードバンドTV放送」各社のチャンネルラインナップを見ると、いずれもこれまでCATVやCS放送で提供されてきた番組が揃っており、「多チャンネル放送をブロードバンド経由でも見ることができるようになった」といえる環境が整いつつある。そしてこれらのブロードバンドTV放送事業者の中には、次のステップとして地上波やBSで流れている番組を自社のサービスでも同時に流すことを検討しているところが登場してきている。

 もしこれが実現すれば「ブロードバンド経由で地上波の『トリビアの泉』も視聴できます」ということになり、自社が提供する他の有料チャンネルとあわせて、競合となるCATVと同等以上のサービス提供が可能となる。そして民放事業者側の同意さえあれば、技術的にはこのようなサービスはすぐにでも実現可能な段階に来ていると言える。

 しかし、このようなブロードバンドTV放送向けの地上波やBS番組の「同時再送信」に対し、民放事業者側は現時点では難色を示している。その背景には、いくつもの要因が絡んでいるが、そこには通信と放送が“非”融合であるがゆえの諸問題が垣間見られる。

自らコンテンツを制作する側と流す側の意識の違い

 「同時再送信問題」に対して民放事業者側が慎重な理由の一つとして、違法コピーの流出に対する警戒感があるとされる。これに対してブロードバンドTV放送事業者各社は万全のシステムを整えていることを強調している。しかし、いまだ両者の意識調整が十分ではないというのが現状である。その背景には、コンテンツを制作する側と流す側の意識の違いがあると言えよう。

 放送系の事業者は番組を制作するにあたり、権利関係者との調整に神経を尖らせており、おのずと著作権の問題に対して敏感になる。特に、放送系の事業者は単にコンテンツの制作だけでなく流通(=放送)に至る全てをコントロールしてきた歴史があるだけに、自分がコントロールできない流通経路に自らのコンテンツを流すことに対しては神経過敏になりがちである。

 これに対して、通信系の事業者の多くは著作権処理も含めたコンテンツ制作が完了したものを流す場を提供することが多く、自らコンテンツを制作した経験に乏しい事業者も少なくない。こうなると「著作権者が何に対して神経質になるか」「著作権処理に当たってどのポイントを押さえなければならないのか」、という点では、どうしても放送系の事業者との間に温度差ができてしまう。他方で、著作権管理のシステムを厳重にしていくと、付帯コストもかさむうえにユーザー側の使い勝手にも影響してきてしまうことをむしろ通信系の事業者側は気にする。

 つまり、両者の行き違いは、コンテンツ管理のシステムの完成度の問題もさることながら、制作する側と流す側の意識の違いという側面も強いのである。

“調和”志向と“挑戦”志向

 また、両者の企業文化の違いも大きく影響している。放送系の事業者、中でも民間放送事業者は50年かけて「無料広告型」のメディアビジネスのフォーマットを確立してきた。そこには長い時間をかけて利益分配のルールを確立してきた経緯があり、業界秩序が明確に形成されている。したがって業界内部での調和を重視する傾向は強いし、メディアビジネスのフォーマットに変化を生じさせることに対しては慎重になる。

 違法コピーや同時再送信の問題一つとっても、万全を期して関係各所との調整の上、話を進めようとするスタンスとなる。

 これに対して、新規参入者となる通信系の事業者にとっては、優良コンテンツを色々なところから調達してきて有料加入者を一人でも増やすことが優先課題となっており、そこでは調和をはかるよりも「まずはやってみよう」という挑戦志向が強い業界文化となる。もちろん違法コピー対策は彼らにとっても大きな課題となるが、これについても「まずは挑戦してみる」というスタンスで挑むことになる。

 このように出発点の異なる両者間の調整に際してはどうしても摩擦が生じざるを得なくなるのである。

 これまで述べてきたとおり、「放送」と「通信」の融合、中でも「通信」側が「放送」のものを取り込んで新しいビジネスを展開するに当たっては、「『放送』側が何に敏感になるのか」、「どのような企業文化を背景としてもっているのか」を踏まえた上で、両者間の調整を進めていくことが重要になってくる。

 そこで次回は、ブロードバンド上でのコンテンツビジネスを展開する上で、常に課題となる「著作権処理」についての「放送」と「通信」の温度差という観点から、両者の違いと、融合のための課題をさらに具体的に検討していきたい。

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▼OPINION:電通総研

[井上忠靖,電通総研]

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