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RFIDにみる米国先端技術動向ITソリューション:海外便り

» 2005年01月14日 04時32分 公開
[渡辺哲,野村総合研究所]

ここ数年急速に注目を集めてきたRFID

 RFIDとは、物体にタグを貼り付け、そこに埋め込まれた識別情報により、無線による個体識別を可能にする技術である。これ自体は、新しいものではなく、第2 次世界大戦中に、敵と味方の飛行機を識別するために発明された。それがここ数年、急速に注目されるようになってきた。

 その理由としては、(1)製造技術向上によるコスト低減、(2)RFID関連技術の標準化が進められたこと、(3)大手流通業者や米国では政府機関が積極的に導入を進めていること、があげられる。

 とくに米ウォルマートストアーズ社と米国防総省(DoD)は、2005年1 月から納入業者(ウォルマートの場合は取引額上位100社が対象)に対して、納入するケース、パレットへのRFIDタグ貼り付けを義務付けることにした。その経済規模によるインパクトの大きさが、RFIDブームの牽引車となったのである。

 もっとも、納入業者にとっては、RFIDタグやリーダーの購入もさることながら、導入にともなう新たなシステム開発のコストが重荷となっており、その評判はあまり芳しいとは言えないようである。

台頭するRFIDミドルウェア

 こうした事情を背景とし、2004年になって米国でにわかに注目を集めるようになったのがRFIDミドルウェアである。

 これは、RFIDタグを利用したシステムを構築するのに必要となる共通機能をくくり出したもので、ゼロからシステム開発するよりも導入コストの低減が期待できる。大きな需要が見込めることから、IBM社やマイクロソフト社、SAP社などの大手ITベンダーも、当該製品の投入を表明している。

 一般にRFIDミドルウェアに必要とされる機能としては、(1)各所に多数分散配置されたRFIDタグリーダーの集中管理、(2)読み込んだRFIDタグのデータ内容による適切な宛先へのルーティング、(3)重複して読み込んだRFIDタグデータのフィルタリング、(4)RFIDタグデータと既存のSCM(サプライチェーン管理)やERP(統合基幹業務システム)などのシステムとの連携、(5)企業間でのRFIDタグデータの共有・交換、(6)大量のRFIDタグデータを処理できる信頼性・拡張性、(7)RFIDタグリーダー故障などの障害の検知・通知、などがあげられる。

先端技術実証実験ラボでの取組み

 NRIパシフィックでは、工場での生産から物流・卸、小売までのサプライチェーンへのRFIDタグ適用を目指し、RFIDミドルウェアプロトタイプの開発・検証を行っている(図1参照)。

図1 (クリックで拡大表示)

生産工場で商品に貼り付けられたRFIDタグは、入出荷検品、在庫管理、小売店舗での購買(POSスキャン)といった局面で、データの読み込みが行われる。そこでまず、ミドルウェアの機能として重要となるのが、読み込んだタグデータを、商品データベースや在庫管理、売上管理、発注といった既存システムと連携させることである。また、サプライチェーンのなかで、ある商品が現在どこにあるかを追跡することや商品のカタログ情報を全体で共有することを可能にする機能も重要である。また先に一般的な機能として掲げたような、リーダー管理や末端でのフィルタリング処理、障害監視も当然必要である。

 ミドルウェアがこうした機能をサポートすれば、既存システムとの連携が容易になることでシステム導入コストが抑えられ、商品が現在どこにあるか正確、迅速に把握できることで全体として無駄のないインテリジェントなサプライチェーン管理が可能となる。

 NRIパシフィックは、現在、このような目標に向けたプロトタイプの開発に取り組んでいる。リーダーの階層的管理や外部の商品位置情報、カタログ情報に接続できる機能など、RFIDネットワークのインフラ機能を提供できることについては、すでに確認済みである。

 次のフェーズでは、既存システムとの連携、フィルタリング、振り分け処理といった機能を実装していき、数年後の実用化を目指す考えである。

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