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「女子は数学が苦手」はステレオタイプのせい――米大学

» 2007年05月25日 14時53分 公開
[ITmedia]

 「男子の方が女子よりも数学が得意」――このよくあるステレオタイプが女子に不安を与え、問題解決に必要な心的資源をむしばみ、数学の成績を悪くしているとの研究結果を米シカゴ大学が発表した。

 この研究では、不安が女子の作業記憶を低下させることが示された。作業記憶とは、問題に即時対応するのに必要な限定的な情報を制御し、活発に維持する短期記憶。

 またこの研究では初めて、数学への不安によるダメージの後、心的な能力がすぐには回復しないために、ほかの学術分野にもこのステレオタイプの脅威が及ぶことが示された。この研究結果はJournal of Experimental Psychology: Generalに掲載された。

 研究は数学の成績がよい女子大学生を被験者に行われ、被験者は2つのグループに分けられて数学のテストを受けた。テストの前に、片方のグループは「男子が女子よりも数学が得意な理由を調べるためのテストを行う」と告げられた。もう片方は、単に数学能力の実験とだけ告げられた。

 前者のグループは成績が低下し、プレテストでは約90%だった正答率が80%程度に落ちた。後者のグループは、わずかに成績が上がった。

 前者のグループの被験者に、テストの最中にどんなことを考えたか質問したところ、多くが「どうして一般的に男子が女子よりも数学の成績がいいのかを考え、ミスをしないようにいつもよりがんばった」「男性と女性の数学能力を比較するためのテストだと思って、ナーバスになった」など、集中力を削がれたと答えた。後者のグループの被験者は、そのようなことをあまり考えなかったという。

 さらに言語情報に関する作業記憶テストを行ったところ、男子の方が数学が得意だというステレオタイプを聞かされたグループの方が成績が悪かった。これにより、ステレオタイプに関する不安が、そのステレオタイプに直接関係する分野だけではなく、同じ処理リソースを使うほかの分野にも影響する場合があることが示されたと研究者らは述べている。

 「女生徒が数学のテストを受けた後で言語テストを受けると、数学に関する不安を経験しなかった場合と比べて、言語テストの成績が良くない場合があるかもしれない。この研究は、女生徒が朝一番に数学の授業を受け、数学に関して何か不安になることがあったら、その後の授業にも影響が出る可能性があることを示唆している」とシカゴ大心理学助教授のシアン・ベイロック氏は述べている。

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