AIエージェントを30分で作成! プログラミング知識ゼロで挑んだ開発体験の一部始終

PR/ITmedia
» 2025年08月28日 10時00分 公開
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 手ぶらで来て「AIエージェント」を自作できる。もちろん予備知識やプログラミング知識は不要。――こんなハンズオン講座が開催された。ビジネスパーソンであれば無料で参加できる。座学とハンズオンを合わせてわずか120分で複数のAIエージェントを開発するという。

 AIエージェントの導入・活用に期待が集まる一方で、「会社の上層部が決めること」と遠巻きに見ている人も多いだろう。業務プロセスや無駄を一番知っているのは現場であるのに、「人手でやらざるを得ない」「他にもやるべきことがあるのに手が回らない」という現実がある。しかし今、現場担当者自身がAIを使って非効率な業務を効率化・自動化できる時代が訪れている。

 本稿は、デル・テクノロジーズが2025年7月に開催したセミナー「AIエージェント ノーコード開発ハンズオン講座」をレポート。ビジネスにおけるゲームチェンジャーとなり得るAIエージェントの基礎知識からノーコード開発のポイントを解説する。

photo デル・テクノロジーズが主催したAIエージェント ノーコード開発ハンズオン講座

AIエージェントはどんな処理をしているのか

 セミナーは、講師を務めるデル・テクノロジーズの若松信康氏による講義から始まった。

 AIエージェントは、与えられた目標を達成するために自律的に行動するAIシステムだ。検索エンジン、ビジネスアプリケーション、SFA(営業支援システム)などと連携することで、AIがこなせる業務の幅が広がる。若松氏は、自律的なプロセスについて生成AIを組み込んだロボットを例に説明した。

 「大規模言語モデル(LLM)を搭載しただけのロボットに『コーラを買ってきて』とお願いしても『どこで買えますか?』と問い返したり、『こういう方法で買えます』と手順が返ってきたりするだけです」

 AIエージェント型ロボットは、「コーラを買ってきて」と指示されると「どこで買えるか」を検索して、最寄りの自動販売機までのルートを策定。移動、購入、帰宅するまでの計画を自ら立てて実行する。「コーラが売り切れていたら、コンビニを探すなど代替手段を考え、計画を修正してコーラをあなたの下へ届けます」

photo デル・テクノロジーズの若松信康氏(マーケティング統括本部 シニアアドバイザー)

 ロボットがコーラを買ってくる世界はまだ先の話だが、AIエージェントがPC画面の向こう側で取っている行動はほぼ同じだ。ユーザーが設定した最終目標に対し、AIエージェントは必要なタスクを細分化して、連携しているツールを使って行動する。その結果を評価・検証し、目標を達成するまで試行錯誤を繰り返す。AIモデルが自らPDCAサイクルを回すイメージに近い。

 「今手元にあるPCを使ってAIエージェントをノーコード/ローコードで開発できるオープンソースのツールが多数公開されています。オープンソースなので予算がなくとも際限なく試し続けられます。そこで成果を見積り、必要なだけ投資して社内外展開のための環境を作ればいいわけです。『何から始めればいいのか』『何が必要なのか』『どのくらいの成果が見込めるか』――これらが分からないという人は、まず試してみることが一番の近道になります」

AIエージェントデビューには「Dify」がおススメ

 若松氏は、AIエージェント開発の初手にふさわしいツールとして「Dify」を挙げた。オープンソースのAIエージェント開発プラットフォームで、類似ツールの中でも成熟度が特に高いという。GUIベースの直感的な操作性、活発なコミュニティー、頻繁なアップデートとバグ修正、無償で始められる手軽さが支持され、企業の導入実績も増えている。

 「Dify自体は非常に軽量で、CPUが2コア、メモリが4GBもあれば動作します。多くのビジネスPCで動くでしょう。約30分で一から環境を構築できるので、昼休みに試せるレベルの手軽さです」

 Difyは、「ChatGPT」「Gemini」「Claude」などのクラウド上のLLMとAPIで連携できる他、オープンなLLMをローカルPC上に展開して連携することも可能。そのため、公開されている幅広い情報に基づいて知見を得たい場合はクラウド上のLLMを使い、セキュリティの観点から社外に出せない機密データに基づいて意思決定したい場合はローカルPC上のLLMで処理させるといったように、データや意図に応じた使い分けの仕組みも簡単に組み込める。

非エンジニアがAIエージェント開発に挑戦

 セミナーの後半は、Difyを使ってAIエージェントを開発するハンズオンだ。若松氏の解説を聞き、配布されたテキスト(PDF)を見ながら作業する。テキストは160ページを超えるボリュームで、Difyの基本操作、AIエージェント構築手順、プロンプト例まで必要な情報が網羅されていた。これだけでも講座に参加した価値があるというものだ。

 非エンジニアの筆者も体験させてもらった。使用するのはデル・テクノロジーズの「Copilot+ PC」で、Difyのインストールと基本設定が済んでいた。Difyのメニューはほぼ日本語化されており、分かりやすいアイコンで機能が説明されている。難しい操作は不要で、ノーコードのワークフロー作成ツールを使うイメージに近い。「難しそうだからやめる」といった苦手意識は一切芽生えなかった。

 Difyで開発できる主なAIアプリケーションは次の4つだ。

  1. チャットボット:RAG(検索拡張生成)を使った情報検索が可能なチャット型AI
  2. エージェント:チャットボットにツール連携と自律性を加えた単一タスク実行用AI
  3. チャットフロー:会話に基づいて複数のタスク(RAGやツール連携含む)からなる業務フローを自律的に実行するAI
  4. ワークフロー:入力データまたはファイルのアップロードに基づいて複数の独立したタスク(RAGやツール連携含む)の組み合わせからなる業務フローを自律的に実行するAI

photo Difyのアプリケーション作成画面《クリックで拡大》

「営業メール作成・配信エージェント」で学ぶ基本操作

 ハンズオンで挑戦したのは「営業メール作成・配信エージェント」の開発だ。新規開拓した企業や新たに担当した顧客に営業がアプローチする場合、顧客のニーズを無視して商材に関するメールを送ることはないだろう。通常は、相手企業の戦略やビジネス課題を調べ、顧客にメリットを提供できる商材をフックにアプローチすることで本提案につなげる。こうした下調べやメール配信を1社ずつ行うにはかなりの時間を要する。

 この「顧客のニーズを把握し、提案内容を考えてアプローチする」という作業をAIエージェントに任せられる。営業担当者が顧客企業名を入力すると、AIエージェントがWeb検索によって相手企業の課題や戦略を調査。AIエージェントがその企業の課題や戦略にマッチする自社商材を社内の製品資料から特定し、それに基づいてアポ打診メールの文面を作成する。営業担当者が文面をチェックし、必要に応じて修正を指示。問題なければAIエージェントが配信してくれる。

 今回の最終目的は「メール配信」であるため、ツール連携によって単一のタスクを自動化できるDifyの「エージェント」を使う。手順は以下の通りだ。

  1. 変数の設定:ユーザーが入力する顧客企業名、送信先メールアドレスなどの項目を変数として登録
  2. ツールの設定:変数に入力された企業名に基づいて企業情報を調査するための検索ツールや、メール配信に使うツールを設定
  3. コンテキスト(RAG)の設定:調査した企業情報に基づいて、その企業に最適な提案商材を特定するために使う自社製品情報を設定
  4. プロンプトの設定:変数やツール、コンテキストをどのように扱ってタスクをこなすのか自然言語で指定

photo DifyのAIエージェント開発画面(出典:若松氏の説明資料)《クリックで拡大》

 変数は、AIエージェント開発ツールを使う際に必須の設定項目であり、ユーザーが毎回異なる情報(A社、B社、C社など)を入力しても、AIが毎回同じ処理ができるようにその情報を入れておく箱の役目を果たす。ここでは、「RECIPIENT_COMPANY」(お客様会社名)、「RECIPIENT_NAME」(お客様氏名)など8項目を指定した。これによりユーザー入力フォームが自動的に出来上がった。

photo Difyの変数設定画面(出典:若松氏の説明資料)《クリックで拡大》

 「Tipsとして、企業ごとにメール件名や本文の内容をユーザーが任意に方向付けしたい場合、メール件名とメール本文に当たる変数も用意して入力項目を作っておくとよいでしょう。メール件名の入力欄に『DX』というキーワードを入力すれば、AIはそれを含んだメール件名を作成します」

 次に、外部連携のための「ツール」を設定する。Web検索用の「Google Search」、メール配信用の「send email」などを選択。続けてRAGに当たる「コンテキスト」に製品資料などの社内情報を指定して、エージェントに専門知識を持たせた。

 最後に、「プロンプト」でAIエージェントの挙動を指定した。テキストに記された5ページにわたるプロンプトをコピー&ペーストで入力。エージェントに明確な役割を与え、行動すべき内容を指示した。

〜プロンプト例〜

役割

あなたは、企業営業のエキスパートとして、新規商談を創出するための戦略的セールスメールを作成する任務を担っています。受信者が思わず開封し、返信したくなるメールを作成し、配信してください。


命令

次のSTEPでメール文を作成してください。

(以下、略)

〜各ステップのイメージ〜

STEP1:RECIPIENT_COMPANYの企業の戦略や課題をgoogle_searchで検索する

STEP2:相手企業の戦略や課題に合った製品をコンテキスト(RAG)から探す

STEP3:「メール構成」に従ってメールの文面を作成する

STEP4:メール文面を出力し、人間の確認を仰ぐ

STEP5:確認後、send_emailで配信する

 AIエージェントは自律的に行動するはずだが、なぜ各ステップや使用ツールを細かく指定しているのか。若松氏は次のように説明した。

 「自律的にできるからといって、AIに全てを任せるかどうかは検討が必要です。トークン(クラウド上のLLMを使う際のAPI課金ならコスト)と時間を消費してツールの選択や手順を推論させる必要のあるタスクかどうかがポイントになります。手順を指定しないと、新規開拓企業のため社内に情報がないとわかっていても、最初に社内のコンテキストを検索してしまうケースがあります。特にシングルエージェントで単一タスクを実行させる場合には、手順を指定した方が経済的かつ効率的である場合が多いです」

 つまり、利用料金がかさむのを抑え、意図しない行動を防ぐための実用的な実装方法というわけだ。

 プロンプトに話を戻そう。先ほど指定した変数は、Web検索やメール文面の作成に利用している。

〜メール構成のイメージ〜

件名:

その企業の課題に対して定量的にどのくらい改善できるのかを簡潔に示してください。

数字・緊急感のいずれかを含める

12-15字程度で簡潔に


本文の書き出し:

かならず以下の文面で書き出してください。

RECIPIENT_COMPANY

RECIPIENT_NAME様


(中略)


STEP4

作成したメール文を一旦出力し、内容の確認を仰いでください。

 STEP4に入れている人間の確認フローは「Human in the loop」というもので、人間のチェックを挟むことでAIの出力物に対する信頼性を高める効果がある。

 ここまで来ればAIエージェントの開発も大詰めだ。最後にAIエージェントの“頭脳”となるAIモデルを選択する。ハンズオンでは2024年6月にリリースされた「Claude-3.5-sonnet-20240620」を選んだ。「Claude 4」「GPT-5」など最新の推論モデルを使いたくなるが、若松氏は次のようにアドバイスした。

 「推論モデルを使うと、手順を指定しなくても自律的に計画を立てて実行してくれますが、同じタスクに対して毎回計画を立てる必要はありません。『Deep Research』のように追加で必要な情報を聞いてくることもあります。そうすると人が介在する工数や時間、コスト増えてしまうため、今回のような手順に落とし込めるタスクは、推論モデルを使わずに手順を指定した方がより経済的に自動化できます。定型業務の場合、自律化させることよりも安定自動化させることの方が重要なので、自律化の領域を減らして安定性を向上させる実装方法が適しています。逆にマルチエージェント間の対話に基づいて行動させたい場合は、手順とツールを細かく限定せずに推論モデルを使う方が良いでしょう。ただし、コストの他にセキュリティに対する考慮も重要になります」

 全ての設定を終えてプレビュー画面を開くと、情報入力フォームとチャット欄が表示された。企業名に「アイティメディア」を指定し、筆者の名前とメールアドレスを入力して「メールを作成してください」と指示。メディア業界の動向を反映した提案メールがすぐに出力され、確認を求められた。チェックして問題なければ「配信してください」と指示すると、AIエージェントがメールを送信。筆者のメールボックスにメールが届いた。

photo プレビュー画面。左側が設定一覧で、完成イメージが右側に表示される《クリックで拡大》

 テスト後に「公開する」ボタンを押せば、営業メール作成・配信エージェントの完成だ。セミナー会場の様子を見ると、参加者は迷わずAIエージェントを完成させることができたようだ。

AIエージェント応用編 一括処理できるワークフローを構築

 Difyのワークフロー機能を使った「営業メール一斉配信ツール」の開発にも挑戦した。1社ずつ企業名を入力して指定するのではなく、企業名やメールアドレスなどをリスト化したCSVファイルをアップロードするだけで、営業メール作成・配信エージェントで実行した手順を一気に処理できる。

 変数、エージェント機能、RAG、メール作成――こうした各ステップを「ノード」として連ねてワークフローを構築する。ノードごとに変数やプロンプトを用いて挙動を指示する必要があるが、ノードのつながりが視覚的に表示されるため迷わなかった。

photo ワークフロー構築画面。「エージェント」「知識検索」「LLM」といったあらかじめ用意されたノードをつなげて簡単にワークフローが作成できる《クリックで拡大》

 完成したワークフローを開いてCSVファイルをアップロードすると、個社ごとに調整されたメールが一斉配信された。1社ずつ処理が走るのではなく、リストに載っている複数社の処理を――Web検索、RAG参照、メール配信を並行して行う。今回は2社分を記載したリストで実施したところ、メール配信までにかかった時間は1分17秒だった。並行して処理されるため、社数の増加に比例して処理時間が増えることはない。時間がかかったとしても、人間よりもはるかに早く処理可能だ。AIエージェントに任せれば、この工程での人間の作業工数はほぼ削減できる。

 もしエラーが起きた場合、どのノードでエラーが発生しているかが視覚的に表示される。各ノードの実行内容を見て原因を特定できるため、修正の負担も少なそうだ。

 「今日作ったのは基本的なワークフローですが、より発展的なものも構築可能です。プログラミングの知識があれば、『コード実行』ノードを加えてPythonでデータを整形、スコアリングしたり、需要予測を計算した上でLLMノードに渡したりするといった複雑なロジックを組み込むこともできます」

約30分でエージェント開発 AIのビジネス活用に追い風

 ハンズオンでは試さなかったが、テキストには「社内問い合わせチャットフロー」の開発手順も掲載されていた。AIエージェントとワークフローの開発にかかった時間はそれぞれ約30分だった。詳細なテキストや若松氏の手ほどきがあったとはいえ、非エンジニアの筆者でもつまずくことなく完成させられたのは驚きだ。ビジネスパーソンがAIを活用するハードルが大幅に下がったと言えるだろう。

 今回のセミナーは、デル・テクノロジーズが実施している無料の「AI人財育成プログラム」の一環だ。ビジネスパーソンが対象で、5000人以上が参加した「生成AIビジネス活用セミナー」、200社以上が参加した「Microsoft 365 Copilotハンズオン講座」などがある。中でも今回の「AIエージェント ノーコードハンズオン講座」は毎回、告知から約1時間で定員上限に達するという。参加者アンケートの回答でも「無料というのがもったいないほど充実した内容」「社内のメンバーにも参加させたい」「もっと長い1日コースでもいい」といった反響があり、今後は3時間に拡張して実施していくという。今後の開催予定はこちらで確認可能だ。AI活用を加速させたい企業の担当者は参加してみてはいかがだろうか。

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提供:デル・テクノロジーズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia AI+編集部/掲載内容有効期限:2025年9月10日