“お薦めしにくい”という先入観を払拭したい――Qualcommが示す「これからのCopilot+ PC」の姿

PR/ITmedia
» 2025年09月30日 10時00分 公開
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 生成AIのビジネス活用が広がる中、AI PCは未来を切り開く存在として注目を集めている。中でも、40TOPS以上のNPU(Neural Processing Unit)性能、16GB以上のメインメモリ、256GB以上のSSDを搭載してAI処理能力を格段に向上させた「Copilot+ PC」は、ビジネスパーソンの生産性を飛躍的に伸ばす新たな武器になるだろう。

 しかしCopilot+ PC登場前のOS「Windows on Arm」にはアプリケーションやドライバの互換性がなかったために、現在のCopilot+ PCに対してもいまだに互換性の懸念が根強く残っている。この課題はどこまで解消されたのか。Qualcommはいかにしてその先入観を覆し、克服しようとしているのか。クアルコム シーディーエムエー テクノロジーズでマーケティング統括本部長を務める泉宏志氏に、ITmedia AI+編集長の井上輝一が話を聞いた。

※以下、敬称略

写真1

「Windows on Armの互換性問題」という懸念を拭い去るために

井上 Snapdragonと聞くと、スマートフォンのチップセットというイメージを持っている人が多いのではないかと思います。

 日本ではまだまだ知名度が低いので、スマートフォンで認知してもらえているだけでもありがたいです(笑)

 Qualcommはスマートフォン向けの通信技術や半導体開発をなりわいにしてきた会社なので、デバイスを小さく作ることを特に重視していました。ラップトップ向けのプラットフォームも、モバイルのチップセットをベースに作り直していたため、パフォーマンス不足や、接続可能な周辺機器数の少なさなどがあり、今思えば使いやすい製品ではありませんでした。こうした反省から、ラップトップ専用のSoC(System on a Chip)を新たに開発するという戦略にかじを切り、誕生したのが「Snapdragon Xシリーズ」でした。

泉氏 クアルコム シーディーエムエー テクノロジーズの泉宏志氏(マーケティング統括本部長)

井上 貴社が2023年にSnapdragon Xシリーズを発表したことが、Copilot+ PCの普及につながったのだと思います。しかしCopilot+ PC登場前のWindows on Armには、アプリケーションやドライバの互換性に課題がありました。Snapdragon搭載Copilot+ PCには「Prism emulationエンジン」を搭載し、互換性の問題を解消したというメッセージを打ち出しましたが、今でも販売店やITベンダー各社は、Copilot+ PCにおいても互換性の懸念を拭いきれず、“お薦めしにくい”という先入観を持っているのが実情ではないかと思います。互換性の課題を解決するために、現在までにどのような取り組みを行い、現在はどのような状況なのでしょうか。

 おっしゃる通り、以前のWindows on Armでは日本特有のアプリケーションやプリンタドライバの一部で動作しないものがありました。こうした認識は、関係各社さまの努力によって好転しつつあると思っています。プリンタドライバならば、リコー、キヤノン、エプソン、ブラザーなどプリンタメーカー各社がWindows on Snapdragon(Windows on Arm)をサポートすることを表明しており、今後、サポートされるモデルと機能がさらに拡張されていく予定です。以前は動作しなかった日本特有のアプリケーションも、この1年の取り組みでほとんどが動作可能になりました。

 これはMicrosoftの尽力が背景にあります。もちろん弊社もエミュレーターのパフォーマンス改善に取り組んでいます。Copilot+ PCを触っていただければ、互換性の課題は目に見える形で解消され、大半のドライバやアプリケーションが違和感なく利用できると理解していただけるはずです。

井上 Qualcommとしてもプリンタベンダーやアプリケーションベンダー各社に「Windows on Armをサポートしてほしい」とアプローチをなさったのでしょうか?

 ええ、そうです。サポートしていただける可能性があるか、というコミュニケーションを弊社から全方位的に、泥臭く続けてきました。ドライバやアプリケーションのリリースは単発で終わるものではなく、リリース後に継続的なメンテナンスが必要になりますから、いかにわれわれを信じていただくか、市場の動向を信じていただくかにかかっています。未対応のドライバやアプリケーションについても、サポートしていただける可能性を模索し、エンドユーザーの皆さまにうれしいニュースをお届けできるよう努力を続けています。

井上 なるほど。これまではx86版Windows向けドライバやアプリケーションをビルドすればよかったのが、Windows on Armにも対応していかなければならない。これはベンダー各社にとって大きな決断であり、市場に対する信頼感が醸成されている現れでもあるのですね。

モバイルで積み重ねた準備とAI時代の到来が起爆剤となり大きく成長

井上 Microsoftが2024年にCopilot+ PCをリリースする際に、Qualcommとの協業を発表していました。発表当時にCopilot+ PCの要件に適合するチップセットを出していた半導体大手はQualcommだけでしたが、先行できた背景には何があったのでしょうか。

井上氏 アイティメディアの井上輝一(ITmedia AI+編集長)

 MicrosoftはAI事業に投資する過程で、AIの基本的な処理をクラウドだけでなくエッジデバイスで実行することの重要性に気付き、エッジAIにも重点を置く戦略を選択しました。そのために省電力で高パフォーマンスを発揮できるソリューションが必要だったわけです。まさにQualcommがモバイル分野で培った強みだったことが、先行できた背景にあったと考えています。Microsoftの戦略にフィットしていたのがQualcommのSnapdragonだったことから、協業に至りました。

井上 2025年に登場する次世代Snapdragonのチップセットは、全ての価格帯で45TOPSのNPUを搭載しているのが特徴ですよね。

 AI技術の普及では、オープンな環境を作ること、どんなモデルでも動かせることが重要です。Qualcommは業界でもいち早く、スマートフォンのSoCにAI処理用のプロセッサを組み込んだり、SDK(Software Development Kit)を提供したりしました。

井上 AI PCという文脈でエンドユーザーが関心を持っているのは、ローカル環境でLLM(大規模言語モデル)を動かせるのか、という点だと思います。Qualcommはそうしたユーザーの期待に応えるために、他にどのような支援策を用意していますか?

 AI技術のオープン化の一環として、Qualcommはアプリケーション開発者向けに「AI Hub」というサービスを提供しています。ここから、Snapdragonに最適化されたAIモデルのライブラリや、AI開発プロセスを効率化する各種ツールをご利用いただくと、エッジで簡単にAIモデルを利用できるでしょう。

 ローカル端末とクラウドのどちらか一方ではなく、両者を組み合わせて機能や処理を分担する「ハイブリッドAI」の考え方はこれからも重要です。デバイスとクラウド間でいかに協調するか――この部分で柔軟性を確保するために、SDKなどの開発を通じて、AIモデルの使い分けや切り分けがしやすい環境を整えます。この点はMicrosoftとも協力し、AIモデル活用の裾野を広げていきます。

ユーザー体験の改善は、プラットフォームベンダーに課せられた使命

井上 少し遅れて、IntelやAMDのCPUを搭載したCopilot+ PCも登場しました。QualcommのCopilot+ PCはどこが違うのか、何が強みなのか、という点をあらためてお聞かせください。

 スマートフォンで培った省電力と高パフォーマンスは、Qualcommの揺るぎない強みです。スペックシートだけでは違いが分かりにくいかもしれませんが、一度使っていただけるとバッテリー駆動時間に驚かれるでしょう。ACアダプター未接続の状態でも処理性能が落ちないことも大きなメリットです。

 発熱量が少ないこともメリットの一つです。ファンレスPCや薄型PCなどが開発しやすい環境をOEMベンダーに提供でき、各社がデザイン性を発揮できます。より薄型に、よりバッテリーを大容量に、という方向の進化が起きるかもしれません。これらのメリットは、省電力を実現できるからこそです。真のモビリティデバイスを成り立たせる要素として、Qualcommはユーザー体験の向上に寄与できると自負しています。

写真2 Qualcommプロセッサ搭載の「Dell Latitude 7455」

井上 私自身もこれまでさまざまなノートPCを使ってきましたが、モバイルで利用する場合はバッテリーが長時間使えてサクサク動くことを重視します。スマートフォンが登場したときは、「手のひらにコンピュータが載る」ことに未来を感じていました。QualcommのCopilot+ PCを自分自身で使ってみて、スマートフォン登場以来のワクワクを感じています。

 ユーザー体験の改善は、スマートフォンでも、ラップトップでも、プラットフォームベンダーに課せられた使命なので、その部分を評価していただけるのはうれしいかぎりです。今後もより多くの方にSnapdragon搭載Copilot+ PCの魅力を知っていただけるよう、努力を続けます。

井上 触ってみれば良さが分かると。まずは実際に触って体験してほしい、ということですね。具体的に、そうした体験の場を増やすような取り組みをされているのでしょうか?

 B2C市場向けには、駅のイベントスペースやデパートでのタッチ&トライイベントを企画し、ビジネスユーザーを含めた認知拡大を目指しています。東京と大阪の家電量販店ではSnapdragon X搭載製品を展示し、試用いただけるイベントを展開する予定です。B2B市場向けには、ディストリビューター各社とのエンゲージメントを深めていきます。お客さまや販売店の方々のフィードバックを誠実に受け止めながら、改善すべきところを改善し、アピールできるところはアピールする活動を続けます。

 ラップトップの購入機会は量販店が主軸となりますので、販売員の方々にネガティブな印象を抱かれたままだと売っていただけません。だからこそ、量販店向けの情報発信や研修機会の提供などに注力することを考えています。

井上 「Snapdragon X Elite」「Snapdragon X Plus」の搭載製品がこの1年で立て続けに発表され、今後Snapdragon Xシリーズのさらなるハイエンドモデルが登場する、といったうわさも聞こえてきています。今後の展望について、現時点で言える範囲で教えていただけますか?

 先日、Snapdragon Xシリーズの後継となる「Snapdragon X2シリーズ」を発表しました。新しい製品グレードである「Snapdragon X2 Elite Extreme」が加わったことで、ハイエンドから普及価格帯まで、全方位のラインアップが提供可能になります。

井上 超ハイエンドですね。例えば「Apple Silicon」が採用しているユニファイドメモリアーキテクチャや最近のAMD製プロセッサと同様に、メモリ帯域幅がボトルネックにならない構成で、しかも計算性能が高く、長時間バッテリー駆動となると、LLMを動かすのが好きな人間にとっては非常に魅力的です。

 そうですね。メモリのボトルネックは軽減できると思います。

井上 おお。とても楽しみです。

 ありがとうございます。ぜひお試しいただき、その性能を実感していただけるとうれしいです。

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提供:クアルコムジャパン合同会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia AI+編集部/掲載内容有効期限:2025年10月23日

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