生成AIは「使ってなんぼ」 Boxとリコーが語る、“日本企業あるある”なPoCの壁と突破口

PR/ITmedia
» 2025年10月10日 10時00分 公開
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 多くの企業が、業務効率化や生産性向上の切り札として大きな期待をかけている生成AI。既に大手企業を中心に、生成AIの実務への適用可能性を探るためのPoC(概念実証)が盛んに行われている。しかし残念ながら多くはPoCの段階で足踏みしており、なかなか実務への導入にまでは至っていない。

 どのような壁が生成AI活用の前に立ちはだかっているのか。それを乗り越えるためにどのような戦略や施策が求められているのか。先進的なAI製品やサービスを打ち出しているリコージャパンでAIビジネスをけん引する児玉哲氏と、数多くのパートナー企業とAIソリューションを共創するBox Japanの安達徹也氏が、AI活用にまつわる課題をどのように解決できるのか語り合った。

photo (左から)リコージャパンの児玉哲氏(デジタルサービス企画本部 AIソリューションセンター センター長)、Box Japanの安達徹也氏(上席執行役員 チャネル営業本部長 兼 アライアンス・事業開発部 部長)

多くの企業が直面する「データの散在」「アクセス権限」の問題

──企業が生成AIを活用するに当たって直面している課題について、お二人はどのように捉えていますか。

※以下、敬称略

安達: 多くの企業が生成AIのPoCから実用化のフェーズに進めない原因の一つは、データのアクセス権にまつわる課題を解決できないことです。データを生成AIで活用するためには、さまざまなシステムからデータを1カ所に集めてこれをベースにRAG(検索拡張生成)などの仕組みを用いて生成AIのアプリケーションを開発します。

 集めたデータを、PoCのために一部のユーザーに限定して公開するのは問題ないですが、いざ全社展開となるとデータのアクセス権限を適切に設定する必要に迫られます。しかし、集めたデータにイチから適切なアクセス権限を設定するには膨大な手間と時間がかかるため、結局は就業規則のように「全社員が問題なく参照できる情報だけを扱おう」となりがちです。そのような限定された用途にわざわざお金と時間をかけて生成AIを導入する意義はさほど高くありません。

photo AIの実用化を阻むデータのアクセス権にまつわる課題(提供:Box Japan)《クリックで拡大》
photo 「日本企業の書類は親切心から写真やグラフなどを盛り込んだ『おもてなし文書』が多い」と言うリコージャパンの児玉氏

児玉: 生成AIで活用したいデータが散在してしまっているという問題とデータのアクセス権管理の問題は、私たちもお客さまからよくお聞きします。

 生成AIが期待通りの精度の回答を返してくれないという問題もありますね。理由はさまざま考えられますが、要因の一つは企業が扱うビジネス文書や帳票が、生成AIが扱いやすい形になっていないことです。

 欧米のビジネス文書は文字情報が中心ですが、日本のビジネス文書は文字だけでなく図やグラフ、矢印などがふんだんに盛り込まれています。私はこれを「おもてなし文書」と呼んでおり、欧米発のLLM(大規模言語モデル)はこうした日本特有のビジネス文書の読み取りが苦手です。「“ドキュメントのリコー”なんだから、何とか読めるようにしてくれないか」という相談をお客さまからよく頂いてきました。

──そうした相談に対して、リコーはどのような解決策を提供していますか。

児玉: 当社は国の生成AI開発力強化プロジェクト「GENIAC」に参画しており、その一環で日本特有のビジネス文書や帳票の読み取りに長(た)けたマルチモーダルLLMを開発しました。その結果、海外製を上回る精度での読み取りに成功しました。

 こうした取り組みで得られた成果を企業に還元することで、業務プロセスを効率化してより価値の高い働き方を実現できるようにサポートしたいと考えており、それがお客さまの企業価値の向上にも貢献すると信じています。

AIエージェントを通じたBoxと他社AIサービスとの連携

──両社でAI関連の製品連携を進めているとのことですが、BoxとリコーそれぞれのAIソリューションについて教えてください。

photo 「非構造化データのAI活用に関してはBoxのAIエージェントに任せておけば大丈夫、という世界を実現したい」と語るBox Japanの安達氏

安達: Boxは「Box AI」というサービスを提供しており、Boxに保管したドキュメントに対して生成AIを使った要約や翻訳、質疑応答などができます。これに使う生成AIのモデルは当社が開発したものではなく、世の中で広く使われている他社製の最新LLMを適材適所で利用できます。

 最大のポイントは、コンテンツにあらかじめ設定されているBoxのアクセス権限が、生成AIを利用する際にもそのまま適用されるという点です。これによってアクセス権限にまつわる課題を容易に解決し、かつBoxのセキュアな環境下で生成AIを安全に利用できます。

 ただし、Box AIの機能だけでお客さまのニーズに全てお応えできるとは考えていません。そのため「Box AI API」を通じてサードパーティー製品からBox AIの機能を利用できるインタフェースや他社のAIエージェントからアクセスできるMCPサーバ機能も用意しています。AIエージェント同士の通信プロトコルである「A2A」にも対応しており、これらを通じて「非構造化データのAI活用に関してはBoxのAIエージェントに任せておけば大丈夫」という世界を実現しようとしています。

photo Box AIエージェントが非構造化データの活用を促進(提供:Box Japan)《クリックで拡大》

児玉: 外部のAIエージェントからアクセスできる標準インタフェースにいち早く対応していただけるのは、私たちのようなソリューションパートナーにとって大変ありがたいですね。

 リコージャパンは「RICOH デジタルバディ」という生成AIサービスを提供しています。業務ごとに用意されているAIエージェントが、チャット形式でユーザーに依頼された仕事を自動的にこなすというものです。Boxと連携させることで利便性が大幅にアップします。

photo リコージャパンのAIサービス概要(提供:リコージャパン)《クリックで拡大》

 AIエージェントがさまざまなデータソースを横断して情報を探す際、ファイルがBoxに集約されていれば設定されているアクセス権限がAIにもそのまま適用されます。これによって、本来アクセス権がないファイルの情報をAIがユーザーにうっかり公開してしまうというリスクを防げます。Box内のファイルの更新情報も自動で反映されるため、常に最新の情報に基づいた回答を返せます。

──こうした仕組みがあれば、これまで生成AIのビジネス利用を阻んできたアクセス管理やデータ管理にまつわる問題もクリアできそうですね。

安達: リコーさんとのAI関連の製品連携はまだ始まったばかりですが、これまでの取り組みが高く評価された結果、2025年9月に米国で開催したイベント「BoxWorks 2025」でリコーさんが「Japan AI Partners of the Year」として表彰されました※1。日本発の先進的な事例が、グローバルでも注目を集めた好例だと捉えています。

※1:https://www.boxsquare.jp/blog/boxworks-2025-partner-award-winners

日本企業特有のニーズに寄り添い、Boxの活用を広める

──リコーとBoxはさまざまな分野で協業していますね。

安達: Box Japanのパートナーには、製品の販売に協力していただくリセラーパートナーと、製品を連携させてソリューションを開発するソリューションパートナーがいます。リコーさんとは双方において深いパートナーシップを長年築いてきました

 児玉さんがおっしゃった「おもてなし文書」のような、日本のお客さま特有の課題にリコーさんは長年寄り添い、Boxの製品やサービスだけではカバーできないニーズを満たす製品やサービスを提供していただいています。複合機でスキャンしたドキュメントを自動的にBoxに保管するサービスから始まり、現在はAI関連の製品連携まで実現します。

児玉: 当社から見ても、これまで長年培ってきたドキュメントソリューションの知見を生かせるという意味で、Boxさんのソリューションとは極めて相性が良いと考えています。

安達: リコーさんは全国に拠点をお持ちで、お客さまと常に近い場所でドキュメントに関する困り事の解決を手掛けていらっしゃるので、当社のように国内の拠点や人員に限りのあるベンダーにとっては本当に心強い存在です。

 リコーさんには、Boxに関する豊富なノウハウや知見をお持ちの方が多くいらっしゃいます。2025年会計年度の「Box Japan Partner Award」ではリコージャパンさんが3部門受賞され、リコージャパンの社員の方が個人賞も受賞されました。

児玉: こうしたアワードの受賞は、大変光栄に思っています。Box Japanさんに適宜サポートしていただきながら、日本のお客さまにさらに高い価値を一緒に提供していきたいですね。

AI活用で先行する他社に置いていかれないよう「とにかく使ってみる」

──今後はどのようにAIソリューションを発展させたいとお考えですか。

安達: Boxは以前からずっと、自社単独ではなくパートナー企業との連携によってお客さまに高い価値を提供することを目指してきました。AIについても同様です。今日紹介したMCPやA2Aなどを通じて、外部のAIエージェントと連携したソリューションをこれからも提供したいと考えています。特に日本市場では、お客さまの近くで課題の解決にずっと尽力されてきたリコーさんは非常に重要なパートナーです。

児玉: リコーは「AIの民主化」を掲げて、事業部門の非エンジニアがノーコードツールを使ってAIアプリケーションを開発する取り組みに力を入れています。「1人1AIアプリ計画」と銘打って始めた取り組みですが、既に現場の社員が生成AIを使って業務の困り事を迅速に解決できるアプリケーションを開発し、利用しています。こうした取り組みを今後さらに加速させるためにも、APIやMCPサーバ経由でBoxのコンテンツに容易にアクセスできる点はとてもありがたいですね。

──最後に、企業がこれから生成AIを活用する上で重視すべきポイントをお聞かせください。

安達: AIは「使ってなんぼ」ですから、とにかく早く始めることが何よりも重要です。多くの企業がいまだにAIの導入に慎重で、AIを使うための環境づくりに長い時間をかけていますが、その間にいち早くAIを使い始めた企業との差はどんどん開いていってしまいます。とにかく早く始めて、自社にナレッジをためることが必要ではないでしょうか。

児玉: 同感です。恐らく、生成AIを導入することに一種の“怖さ”を感じている企業が多いように思います。でもAIの使い方を誤ったからといって命には関わりませんし、仕事を奪われるわけでもありません。不安なことや分からないことがあれば、私たちのような企業がいくらでもサポートできますから、まずは怖がらずに一度使ってみていただきたいですね。

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提供:株式会社Box Japan
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia AI+編集部/掲載内容有効期限:2025年11月5日