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GoogleとSunの提携――中身はどこに?

» 2005年10月19日 14時36分 公開
[Eric Lundquist,eWEEK]
eWEEK

 かつてメインフレームが全世界を支配していたとき、IBMは次世代ビッグアイアンの名前を口にするだけでライバルの運命を決めることができた。顧客が次のIBMシステムが登場するまで新しいシステムの購入やリースを控える中で、同社が早めに新しいメインフレームを発表すれば、市場全体を凍り付かせることができた。単純な価格の変更でも、市場を何カ月も混乱させたものだ。本当に恐竜(メインフレーム)が支配する時代だったのだ。

 Microsoftはメインフレームを構築することではなく、どんなライバルをも飲み込めるOSと、深く統合されたアプリケーションスイートを構築することで、いつの間にか同じ立場に立っていた。スペルチェッカー、インターネットブラウザ、最近ではセキュリティソフトが、ライバルがかつて収入源として当てにしていた製品を(Microsoft製品を買えば)無料で提供するという同社の能力の餌食になった。

 GoogleとSunが最近、記者会見を開いた後――「何が提供されるか」ではなく「何が提供されないのか」が目立った会見だった――で、この歴史の教訓が思い浮かんだ。出席者が親しげに背中をたたきあったり、Microsoftのホームオフィスの方向性に辛らつな言葉を向けたこの会見で発表されたのは、「ユーザーがJavaをダウンロードしたときにSunがGoogleのツールバーを含める」という条件だけでGoogleとSunが協力するというあいまいな約束だった。

 しかし、この発表はあいまいではあるが、十分だった。この提携に関する意見や分析は、「MicrosoftのOfficeスイートの中核に大打撃を与える」というものから、「広がるWebサービスの世界で今なお生きているMicrosoftのファットクライアントにはかすった程度の打撃でしかない」「元Sun社員で今はGoogleのトップを務めるエリック・シュミット氏が、スコット・マクニーリー氏の金融アナリストに対する立場を強めるためにちょっと出てきただけ」というものまでさまざまだ。実体はないものの、この騒ぎは圧倒的だった。市場を動かし、ライバルを揺さぶり、顧客に新たな代替選択肢を考えさせるのにはそれだけで十分なこともある。

 Sun-Googleが皆の前でハイタッチしている間に、わたしとeWEEK編集チームの何人かは、シリコンバレーとオレンジ郡の有望な企業との長きにわたる1対1の会談を進めていた。これらは人材、ベンチャーキャピタル、顧客を魅了する製品を集めた企業だ。これら企業の多くについては向こう数カ月にわたって記事が載る予定だが、わたしとしてはこれら企業の「実体」を、GoogleとSunの発表の実体のなさ、Microsoftが新しいソフトの購入を正当化する理由としてしばしば付けている生産性の強化というコンセプトのあいまいさと比べずにはいられなかった。

 VoIPインフラ上に載る新しい便利なビジネスアプリケーション、企業のバックアップ・災害復旧用のシンプルだがかなり低コストなストレージ、IT部門が必要とするデータ精度に関連した、ユーザーが理解できるリポートツールを備えたビジネスインテリジェンスソフトに、カリフォルニア州などの新しい企業は取り組んでいる。

 では、Google(世界中のすべてを記録する途上にある)とSun(世界中のすべてが同じネットワーク上にあるということを証明する途上にある)が、ユーザーが簡単に互いを見つけ、安全に電子メールやIM、音声、ビデオで通信できるメッセージングプラットフォームを発表していたら、わたしは真っ先に「Microsoftは大問題を抱えることになった」と言っていただろう。一部のアナリストはGoogle-Sun(SunGoo?)がOpenOfficeをMicrosoft Officeのライバルにできるかどうかに注目しているが、次の市場闘争は文書や表計算やPowerPointをめぐるものではない。次の戦いはビジネスアプリケーションユーザーの心をめぐって争われ、これらの旧世代のプロダクティビティプラットフォームをビジネスコミュニケーションプラットフォームに変えるだろう。

 われわれが訪ねた新しい企業は、ITが証明できる実体の時代にあることを理解している。次はMicrosoft、Google、Sun、そのほかの大手ベンダーが、提携を裏付ける製品を用意する番だ。

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