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MSの買収提案撤回で、Yahoo!株主はどう動く?

» 2008年05月06日 10時42分 公開
[Joe Wilcox,eWEEK]
eWEEK

 このニュースを知らない人のためにもう一度言っておこう。5月3日、MicrosoftはYahoo!に対する一方的な買収提案を取り下げた

 わたしがこの記事を執筆している最中に、早朝の取引で16%下落した後、株価は落ち着きつつある。執筆時におけるYahoo!の株価は24.83ドル。5月2日の終値は28.67ドルだった。3カ月前、Microsoftが1株当たり31ドルで買収するという一方的な買収提案を行ったときの株価は19ドル前後だった。

 それを考慮しても、24.83ドルはMicrosoftが用意していた33ドルには遠く及ばない。しかし、この2時間ほどで株価は徐々に上がりつつある。株価は1月のレベルまで急降下するとの推測があったが、まだその事態には至っていない。Googleの株価にも動きがある。5月2日に581.29ドルで引け、週明け5日は599ドルで始まった。その後若干値を下げ、記事投稿時には589.84ドルとなった。

 これに対し、Microsoft株主は3日のニュースに大きな反応を示していない。29.95ドルで始まったが、これは2日の終値より71セント低いだけ。投稿時には29.49ドルとなっていた。

 MicrosoftとYahoo!の合併不成功に対する株式市場の反応は、この件で起きた出来事を解釈し直す鍵になる。Yahoo!のジェリー・ヤンCEOが同社の将来戦略を主要株主に対して効果的に伝えることができていたとしたら? Microsoftが最後の4週間で与え続けたプレッシャーを考えると、Yahoo!の沈黙には合理的な説明がつかない。しかし、主要株主が同社を独立企業として存続させることを支持するのを取締役会が知っていたとするならば、かたくなに合併に反対し、沈黙を守ってきたのもうなずける。

 Googleが大きな影響力を持っているのかもしれない。GoogleとYahoo!とが広告および検索で正式に提携するとのうわさが先週駆け巡った。

 Microsoftのスティーブ・バルマーCEOは、ジェリーに撤退を告げる手紙で次のように書いている。

 「今週の話し合いを後で考えるに、Microsoftが貴社の株主に対して直接提案を行うのは適切ではないことがわたしにとって明白になりました。この方法をとれば、長期間の委任状争奪戦、そして最終的には株式交換ということになるのは不可避です。話し合いの中で、貴殿がYahoo!をMicrosoftが買収するのに望ましくないものにするための方策を当面は取るであろうとの結論を得ました」

 では、なぜMicrosoftが株主に直接提案を行うことは適切ではないのだろう? Microsoftはこの買収を本気で望んでいたのに、なぜもっと強く勝負をかけないのか、なぜ委任状争奪戦に臨まないのか? Microsoftが既に主要株主と交渉しており、株主たちが委任状争奪戦を支持しないということが分かっているのであれば、それは納得できる。Yahoo!が提案された金額に満足しないことも、この解釈なら分かる。

 しかし、この取引が不成立に終わったのは、ブログやニュースが報じているような株価の問題ではない。理由はGoogleなのだ。最初にバルマー氏の手紙を読んだとき、同氏の言う「方策」はYahoo!が「毒薬」を仕込むことだと考えた。しかし、この毒薬とは、バルマー氏が「Yahoo!をMicrosoftが買収するのに望ましくないものにするための」と言及した方策で、それはGoogleとの広告/検索に関する正式な提携だ。Microsoftに対するこの手段は、多くのYahoo!株主にとって毒薬というよりも甘美な香水のようなものだ。

 Yahoo!株主による反旗はまだこれからかもしれない。しかし、わたしはもはやそれはないだろうと確信している。別の視点から見れば、一連の出来事は整然とした筋書きに沿っていることが分かる。すなわち、MicrosoftとYahoo!の動きを観察している人たちが考えるほど、株主たちは怒っていないということだ。

 それでも、バルマー氏がジェリー・ヤン氏にあてた手紙と、Microsoft幹部らによるこの10日間のコメントは、Yahoo!株主の怒りと後悔の念をかき立てようとしているように思える。

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