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コラム

著作権保護期間延長はクリエイターのためになるか小寺信良(1/3 ページ)

文化庁に提出された著作権保護期間の延長を求めた要望書に対して、11月8日、「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」が発足。そのメンバーでもある筆者が考える著作権保護期間延長に関する思い、そして現在の著作権法が抱える問題とは?

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 今年9月、日本音楽著作権協会(JASRAC)など16の著作権保護団体が作る「著作権問題を考える創作者団体協議会」が、著作権保護期間の延長を求めて文化庁に要望書を提出した。これまで著作権の保護期間は、映画を除いて著作者の死後50年とされてきた。これを70年に引き伸ばすというものである。

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要望書を提出するため文化庁に向かう発起人達

 これに対して11月8日、この著作権保護期間の延長に関してもう少し慎重に議論すべきではないかということで、「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」が発足した。かく言う筆者も、その発起人の一人として末席をけがすこととなった。

 発足の記者発表会では、一人ずつ1分間ほどで意見を述べることができたのだが、複雑な事情が背景にある問題に関して、短くまとめるのはなかなか難しい。本当はもっといろいろ言いたいこともあったのだが、とりあえずの立場表明だけで終わってしまった。

 そんなわけでここでは、筆者が考える著作権保護期間延長に関する思いと、現在の著作権法が抱える問題について考えてみたい。

変質する著作権のあり方

 最初にこの保護期間延長に対しての筆者の立場を明らかにしておくならば、「反対」である。この立場は、以前もコラムの中で表明しているので、ここでは繰り返さない。後で聴いた話によると、通常識者と言われる人であれば、「条件付きで反対」とか「条件付きで賛成」など退路を確保しておくものだそうだが、筆者はバカなんでそういうトコまで考えなくて済むわけである。

 著作権保護期間延長に対して、賛成/反対それぞれの理由に関しては、国民会議のサイトにまとめられているので、そちらを参照していただくといいだろう。ただこの段階では、最初に賛成派の主張があり、それに対して反対派の反論という形になっている。事態はそれから若干進んでいて、11月13日には、賛成派の主張の詳細がNPO「日本文藝著作権センター」の機関紙(PDF)として発表されている。そちらも併せてご覧いただきたい。

 これらの資料から考えると、賛成派の主体は「著作権問題を考える創作者団体協議会」であると考えていいだろう。一方で反対派として「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」があるかというと、そうでもない。国民会議はあくまでも、いろいろ議論した方がいいんじゃないか、という立場であり、発起人には反対派、中立、賛成派が入り交じっている。単純に「著作権問題を考える創作者団体協議会」VS「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」という図式ではないことに注意していただきたい。

 とは言っても、8日に集まった国民会議の発起人は、大多数が反対の立場を取っている。さらに言えば、反対の立場を表明している方のほとんどが何らかの著作者であることも、国民会議のスタンスを想像するに足るだろう。

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