公式メニューという“強力すぎる”メディア
各キャリアは公式メニュー充実に力を入れて、キャリア自らサービス提供に乗り出していますが、それがサードパーティーの自由なサービスを圧迫し、モバイルネットの発展の足かせになる可能性もあります。
パケット定額制が普及し、携帯電話のネット機能を頻繁に使う人が増えた2003年以降、各キャリアの公式メニューが大きなメディアパワーを持ち始めました。コンテンツへの“入り口”となる公式メニューをキャリアが独占している現状は、サードパーティーの自由なサービス提供を圧迫し、モバイルネットの発展の足かせになるのでは――という不安もあります。
公式メニューは「電話帳」のようなものだった
iモード・EZwebなどの公式メニューは当初は、モバイルネットユーザーが目的のサービスにたどりやすくするためのリンク集で、通過点でしかありませんでした。開始当初は画像もなく、電話帳のようなメニューの1つ――という見え方をしていたといえます。
流れが変わったのは2003年末以降。パケット定額制が普及し始め、公式メニュー経由でどれだけページを閲覧しても通信料を気にする必要性がなくなった結果、公式メニューがPCでいうポータルサイトに近い役割を持ち始め、「メディア化」が進むことになりました。auはWIN端末向け公式メニュー「WINポータル」(現在の「au one」)を2004年に開始、ソフトバンクモバイルはヤフーのトップメニューと融合した「Yahoo!ケータイ」を2006年に始めるなど、ポータルとしての色彩を濃くしています。
キャリアは公式メニューをポータル化する一方で、特定のサービス事業者と提携して公式サービスを直接提供するようになりました。オークションが代表例で、NTTドコモは楽天と、au(KDDI)はDeNAと、ソフトバンクはヤフーと共同でサービスを展開しています。
検索サービスも2006年から公式メニューに組み込まれました。ユーザーが最初に訪れるポータルとしてのポジションを保つためには、誰もが利用する検索サービスを公式化することは不可欠。そうしないと、ポータルの座を他の検索事業者に奪われる可能性もあったでしょう。
キャリアの強すぎる力がサードパーティーの成長はばむ?
こうした構図は、PCで言えばISPのポータルサイトに似ています。ただ、携帯電話のWebブラウザの仕様は通信キャリアが規定するという点が大きな違い。排他的な立場を生かし、サードパーティよりも強力なポータルを作り上げることができます。
PCでは検索やSNSが台頭したり、サードパーティーのポータルが力を持ち、ISPのポータルが弱体化する――ということも起きましたが、携帯公式メニューは、検索やSNSも巻き込むことで、従来通りの「最も便利な入口」としての立場を保とうとしているようです。
それがユーザーにとってメリットがあるならば歓迎すべきでしょうが、キャリアが提携した特定の事業者を優遇することが、モバイルネットサービス進化の足かせになるのでは、という不安もあります。総務省は、モバイル業界のオープン化の流れを推進するため、通信キャリアがさまざまなサービス事業者と幅広く提携すべき、という方針を示しており、今後のキャリアの出方が注目されます。
モバイル経由でネットにつなぐユーザーが、PC経由よりも多い時代、ネット業界の覇権をケータイから握るチャンスが来ている――と言えるかもしれません。モバイルネットの動向を把握するのは、PC向け大手ポータルの携帯進出より、通信キャリアの動向に注目すべきかもしれません。
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