米MicrosoftがYahoo!の買収を目指す本当の動機は恐らく「悔恨」なのではないだろうか。調査会社comScoreが発表した2月のオンライン動画視聴に関する調査データも、そうした見方を裏付ける内容となっている。
調査会社の米comScoreによると、米国のインターネットユーザーが2月にオンラインで視聴した動画の本数は100億本と、前年比で実に66%も増加しており、そのうちGoogleの動画が占める比率は35%と、そのほか上位10社を合わせたシェアの約2倍となっている。
comScoreがそのほかに指摘しているポイントは以下の通り。
- 米国のインターネットユーザーの約73%が2月に少なくとも1本はオンラインで動画を視聴した
- YouTube.comでは2月に8000万人以上のユーザーが計34億2000万本の動画を視聴した。これは、1ユーザー当たり約43本の動画を視聴した計算になる
- すべての動画サイトを平均すると、ユーザーは2月に平均75本の動画を視聴した計算になる
- ユーザーがGoogleのサイトで動画の視聴に費やした時間は平均109分、一方、Microsoftのサイトで費やした時間は19分となっている
Googleのサイトで視聴された動画のうち、YouTubeが占める比率は96%となっている。考えてみれば、そうした動画はすべてMicrosoftのサイトで提供されていたかもしれないのだ。
企業名 | 閲覧回数(単位:百万回) | シェア(%) |
---|---|---|
3,567 | 35.4 | |
Fox Interactive Media | 586 | 5.8 |
Yahoo! | 293 | 2.9 |
Microsoft | 293 | 2.9 |
Viacom Digital | 218 | 2.2 |
(資料:comScore Video Metrix) |
2006年にGoogleが16億ドルでYouTubeを買収する約6カ月前に、Microsoftはわずか50万ドルでYouTubeを買収するチャンスをふいにしているのだ。通常Microsoftは買収を検討する際には、「自社で開発するのと買収するのとではどちらが得策か」を検討するようにしている。YouTubeについては、Microsoftは買収よりも自社でMSN Soapboxを開発する方を選択した。今にして思えば、このときMicrosoftが下した判断は、単に間違っていたというよりも、ひどく愚かな判断だったと言わざるを得ない。
先週も説明したが、長期的な広告収益を上げるためには、ユニークビジター数やクリック数よりも、ユーザーがオンラインで費やす時間の方が重要だ。Googleはまさにそれを手に入れている。そして、それ以上のものも手に入れている。
- 視聴者は動画のスタート前に挿入されている広告はいやでも見ざるを得ない。そうした広告はバナー広告や検索キーワードと比べて、ユーザーの視線を確実にとらえられる
- 動画にはユーザーからユーザーに口コミで広まる性質があるため、短くて見やすい動画がヒットしやすい。2月には、動画の長さは平均で約3分間だった
- 視聴された動画の数が多いほど、潜在的な広告インプレッション数も増える
- オンラインで動画の視聴に費やされる時間がユニークビジター数をはるかに上回る場合もある。例えば、ABC.comのユニークビジター数は約700万人にすぎなかったが、動画視聴時間ではABC.comは第2位にランクインしている。
広告の可能性を開拓するという点では、Googleはまだ初期の段階にいるが、実際、広告は大きな可能性を秘めている。そして、それはすべてMicrosoftのものになっていたかもしれないのだ。
企業名 | 閲覧者1人当たりの閲覧時間(単位:分) | ユニーク閲覧者数(単位:千人) |
---|---|---|
109.4 | 81,791 | |
ABC.com | 51.2 | 7,042 |
Viacom Digital | 29.3 | 21,280 |
ESPN | 22.5 | 7,186 |
Microsoft | 18.8 | 27,080 |
Yahoo! | 16.6 | 37,111 |
(資料:comScore Video Metrix) |
Microsoftが逃した小さな魚は実に大きく成長した。だから同社は代わりにYahoo!を欲しがっているのだろう。前回の失敗の反動からだろうか? YouTubeでひどいへまをやらかしたしてしまったMicrosoftは何が何でも代わりのチャンスを確保したいようだ。もう二度とチャンスを逃すわけにはいかないということなのだろう。
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