世界でも有数の知名度を持つAmazon.comは、Web2.0の主導的存在としてインターネットを通じた書籍、CD、DVDの販売で富を築いてきた。しかし今や会員制Webサービスとストレージ事業、いわゆるクラウドコンピューティングに長期的な展望を描いている。
過去3年でAmazonは、オンラインストレージのS3(Simple Storage Service)とソフトウェア開発者のためのオンラインプラットフォームEC2を打ち出した。いずれも大きな成功を収めている。
S3では個々のユーザーや企業がストレージを好きなだけ「リース」して、仕事用の書類や写真、ビデオなどあらゆる類のデジタルデータを保存できる。
EC2では、開発者がWeb環境で動作するソフトウェアアプリケーション構築のための標準的なインフラと豊富なコンピューティングパワーを利用して、多額の経費を節減できる。新興企業にはうってつけだ。
Amazonがクラウド事業にすべてを賭けていることを示す物理的証拠として、同社は現在、利用できる帯域幅の3分の2近くを、急成長しつつあるこの事業のために使っている。オンラインストアは今も毎分何千件ものトランザクションを処理し、それだけで十分成功しているのだが。
言い換えれば、Amazon.comはありがたいことに、米国のマクロ経済がこれほど激動する中でも極めて好調なのだ。
Amazonの製品管理/開発者関係担当副社長アダム・セリプスキー氏は、カリフォルニア州イーストパロアルトのFour Seasonsで開かれた2008 Global Technology Leaders Summitでわたしに言った。「S3ストレージは290億オブジェクトを突破した。つまり、まあ、たくさんのものが保存されているんだ」
うそではない。Amazonはそれほど宣伝もしていないのに成長しているのは、昔ながらの口コミのおかげだ。
「(シアトルの)オフィスにあったチャートを見せよう。これは当社が全事業のために使っている1日当たりの帯域量を示したものだ」。セリプスキー氏はサミットの休憩時間に説明してくれた。「オンラインサービス事業の帯域幅を示す線は、数カ月前に、ストア事業の帯域幅を示す線を越えた。つまりわれわれは目標に沿って進んでいる」
セリプスキー氏の言葉は信頼性がある。同氏はAmazonの全ストレージ事業とオンラインサービス開発事業の責任者なのだ。
創業者のジェフ・ベソスCEOも最近アナリスト向けの説明会で、未来はWebサービスプロビジョニングにあると語った。同社がどこに向かっているかは明らかだ。
「われわれはさらに多くのオンラインサービス開発にも取り組んでいる。今はまだ言えないが、これからも情報は伝えるよ」とセリプスキー氏は話した。
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