第6回 終了のホイッスルは次の会議の始まり:議事録ドリブンで会議の効率アップ
前回の記事では、実際に会議で議論をするときは、一度に1つのトピックを議論して、意見や結論の関係を明確にしましょうという話をしました。
さて、すべてのトピックの議論が時間内に終わりました。最初に予定していた終了時刻ぎりぎりになっています。会議はもう解散でしょうか。時間がなくても、会議の最後に締めをしっかり行うかどうかによって、会議の後のアクションが変わってきます。今回のテーマは終了時確認です。
プラクティス8──終了時確認(final confirmation)
いくら早く帰りたくても、会議の終了時に絶対に確認を忘れてはならないことがあります。これも順番がとても大事で、以下の順序でやっていきましょう。
- 今回の会議で何が決まったのか(結論とToDoの確認)
- 次に何をすべきか(次回会議までのToDo確認)
- 次の会議はいつ誰が参加し、何を話すのか(次回会議設定)
早く帰りたくてうずうずしているのに、なぜこんなことをしなければならないのでしょうか。理由を具体的に見ていきましょう。
1 結論とToDoの確認
2時間も会議をすれば、最初に議論した内容を忘れてしまってもおかしくないでしょう。最後のほうに議論したことが、実は最初のトピックに影響しているということもあり得ます。最初のトピックから結論内容を流して確認していくと、こうした問題を解決できます。
「では、結論とToDoの確認をします。まず最初のトピック『来年度の予算案を確定させる』についての結論ですが……おっと予算案に修正が必要ですね。数字を増やしておきましょう」
という具合になります。
また議論中はよいと思ったことが、時間をおいて見ると問題を抱えているように思えることもあります。結論を会議参加者全員の合意にするために、結論を意見にしたり、意見を結論にしたりということも発生します。
「この意見は結論にしてしまってもよさそうですね」
「この結論はまだ早すぎると思う。来週もう一度議論するために意見に戻しておいたほうがいい」
「このToDoの担当者は、田中さんより佐藤さんのほうがいいと思う。期限も3日早くできないかな」
この結論とToDoの確認は、いわば「議事録というアウトプットの推敲作業」になります。このプロセスを経て、全員が合意したということが確認されるのです。
長い議事録の中から、結論とToDoだけを切り出して目視確認するのは面倒くさい作業ですが、議事録専用エディタを使うと色分けがされるので、楽にできます。通常のエディタを使うときも、結論やToDoは色分けするように工夫するとよいでしょう。
2 次回会議までのToDo確認
結論とToDoが確定したので、次回会議までにやらなくてはならないToDoがリストアップされたことになります。
今回の会議でたくさんのToDoが発行されました。よく見ると、1人の作業量としては明らかに多い人もいるかもしれません。そのために、次の会議までにやらなくてはいけないToDoをひとりひとり確認してあげて、作業量が多すぎる人のToDoをほかの人に割り振ったり、優先順位の低いToDoの期限を延期したりしてあげましょう。
3 次回会議設定
会議終了のホイッスルは次の会議の始まりです。
次の会議のセッティングもその場でしてしまうとよいでしょう。会議をセッティングするコストは馬鹿になるものではありません。参加者の日程調整で仕事時間の大半をつぶしてしまうことさえあります。会議のセッティングを一番しやすいのが会議中そのものです。参加者全員がそろっていることが多いので、長くても5分もあればスケジュール調整がききます。
会議の時間と場所が確定したら、アジェンダを作っていきます。今日、話し残したトピックや、次の週まで期限のToDoの報告をしてほしい場合はそのトピックを追加します。
会議の終わりに次の会議の議事録のアジェンダを書いていくことは、単に効率の問題だけではありません。アジェンダがあらかじめ決まっていれば、次の会議までに何を準備しなければならないかが分かるので、その後1週間のメンバーの仕事の質が変わってくるからです。
そして、会議の設定で一番大事なゴールを確認しましょう。
プラクティス9──会議中に別の会議を設定する(fix meetings during meetings)
会議の終わりに次の会議を設定するだけではなく、会議中のトピックから、別の会議を切り出すことも重要です。
参加者の一部しか関わっていないトピックで、議論時間が長くなりそうなものがあれば、そのトピックについて議論する会議を別途設定することにしましょう。たとえば、8人が参加している会議で、3人しか意味が分からないいテーマについて1時間も話してはいけません。その場で、3人が集まれる時間と場所を確認して、別の会議を設定してしまうのです。その会議の結論は、次の会議で報告してもらうことにしてください。
筆者:鈴木健
国際大学GLOCOM主任研究員、サルガッソー社長。サルガッソーでは、究極の会議を実現するためのツール「Sargasso XM」を開発している。「伝播投資貨幣」という概念の通貨「PICSY」の研究・実装に取り組み、個人ブログとしてPICSY blogを運営している。IPAの未踏ソフトウェア創造事業に採択(2002年)、同年度の天才プログラマー/スーパークリエータに認定。共著書に「NAM生成」「進化経済学のフロンティア」。
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