日本HP「席を決めなくてもつながる」働き方
日本HPの本社のある市ヶ谷オフィスでは、800人がフリーアドレス制で働いている。社員はノートPCを持ち運び、自分が所属していないオフィスや外部のレンタルオフィスなどでも仕事ができる。
日本ヒューレット・パッカード(HP)は、3月2日に報道陣に対して本社のある市ヶ谷オフィスを公開した。
HP創業者のビル・ヒューレットは「人間は良い仕事をしたいと思っていて、それにふさわしい環境に置かれれば、そうするものだ」という性善説的な考え方を持っていた。この「ふさわしい環境」を実現するために就業環境を良くすることに力を入れている、とワークプレイスソリューション本部の西崎泰司氏は説明する。
本社のある市ヶ谷オフィスでフリーアドレスを大規模導入
本社の市ヶ谷オフィスは2006年11月にリニューアルし、それまで本社機能を持っていた天王洲オフィスから社員を集約した。現在このオフィスには、固定席が500席、800人分のフリーアドレス席が400席あり、合計1300人が働いている。フリーアドレスの席数は対象社員数の半分だが、これは在席率が最大でも60%であることから計算したもの。400人以上がオフィスに来た場合は、会議室や応接室を使ってカバーする。このほか、全国すべてのオフィスでフリーアドレス制を導入している。
総務部門は全面的にアウトソースし、社員を管理するのではなく、ホテルのコンシェルジェのように社員にサービスを提供する部門と位置付けている。例えば、プリンタのトナーがどのくらい減っているかWeb経由でチェックし、なくなる前に交換し、紙の補充もする。そのほかPCやコピー機などの不具合があれば電話一本でやってきて修理したり外部に修理の手配をし、従業員が本業に集中できるようにしているという。
さらに、コクヨのビジネスレンタルスペース「DESK@(デスカット)」(2月20日の関連記事参照)やフェデックスキンコーズと契約している。客先近くのDESK@で作業したり、キンコーズに大量のコピーを依頼して、客先まで届けてもらうといった使い方ができる。
メッセンジャーで現在のオフィスを表示
社員には自分専用のノートPCを与えられるので、持ち歩いて自分が所属するオフィスのほかに自分が所属していないHPのオフィスや客先、DESK@などで仕事ができる。利用するソフトウェアは中央のサーバから提供され、ネットで見つけたフリーソフトなどを勝手にインストールするのは禁止だ。オンラインのときは中央のサーバと常につながっているので、誰がどのソフトウェアをインストールしているか常に把握している。また、PCに不具合があるときは遠隔地にいるヘルプデスクの人がPCを直接チェックできる仕組みも備えた。
同社の各地オフィスやサービスをフル活用するAさんの1日。自宅から自宅近くのオフィスで海外と電話会議、客先で打ち合わせ、その後近くのDESK@を利用してメールチェック、別の客先に向かったあと、在籍オフィスで会議に出席したあとフリーアドレス席を利用する――といった過ごし方も可能だ
メッセンジャーは「Jabber」をカスタマイズしたものを利用。たとえば、オンライン状態の人は名前のあとにその人が現在いるオフィスを表示できるようにした。ある人が特定のオフィスにいるとは限らない同社ならではの工夫だ。
どこでも働ける――でも、顔を合わせるための工夫も
このように自由な働き方ができると、人事評価や出勤管理はどうなるのだろうか。実は、フリーアドレス制度の対象者のほとんどは裁量労働制で働いている。年度の初めに上司と面談して自分の目標を決め、1年間で達成できたかどうかが評価の対象になる。このため、決まったオフィスに決まった時間に顔を出す――ということが必要とされない働き方なのだ。
それでも、上司や同僚と顔を合わせたほうがスムーズにいく事柄もある。同社では、フリーアドレスの席を、場所によって主に使う部門を大まかに決めている。これによって、フリーアドレスでも同じ仕事をしている上司や同僚の近くで働くことを可能にしている。このほか、部署ごとに定期ミーティングを持ったり、部下が上司に相談があるときはOutlookやサイボウズで公開している上司のスケジュールをチェックして、空いている時間にミーティングを設定するなど、顔を合わせるための工夫もしているという。
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