GTDに学ぶプロジェクト管理ツール導入――3つのポイント:デジタルワークスタイルの視点
プロジェクト管理ツールは間違って使うと思ったほど効果が上がらないことがあります。効果的なツールを導入するには、GTDで学んだ手法が役に立つことをご存じですか――。
プロジェクト管理ツールは、間違って使うと効果が上がりません(3月28日の記事参照)。とはいえ、管理ソフトやツールを全く使わずにプロジェクトマネジメントをするのは大変です。そこで今回は、実際にプロジェクト管理ツールをチームで利用する場合、どのような視点で導入するべきなのかという点について、GTDを参考に考えてみたいと思います。
No. | タイトル |
---|---|
1 | “1人プロジェクトマネジメント”に取り組んでみよう |
2 | プロジェクトが“簡単に頓挫する”3つの要素 |
3 | 管理を完璧にしようとすればするほど、プロジェクトは失敗する |
4 | 失敗しないプロジェクトマネジメント――Appleやはてな、Googleに学ぶ3つのヒント |
5 | ちょっとだけ、失敗しないプロジェクトに近づくための3つのヒント |
6 | プロジェクト管理ソフトの「3つの落とし穴」 |
GTDに学ぶプロジェクト管理ツール導入の3つのポイント
- メンバー視点のリストを提供する
- メンバーのToDoも一緒に管理できるようにする
- メンバーの作業管理がしやすいものを選ぶ
メンバー視点のリストを提供する
まずプロジェクト管理ツールを利用する際に重要なのが、メンバー視点のリストを提供するという点です。管理者目線だと、ついつい全体のスケジュールをプロジェクト管理ツールやエクセルを使ってガントチャート形式でまとめて満足という流れになってしまいがちですが、これでは前回書いたようにプロジェクト管理者の自己満足になってしまいます。
では、どうすればいいのか――。まずは、全体のスケジュールから、個別のメンバーごとに作業リストを切り出して渡してあげましょう。ここで参考になるのがGTDです。
GTDでは、自分がやるべきことのリストを自分で作成します。ここではプロジェクトメンバーのスタッフ各人がやらなければいけない作業の一覧を、プロジェクト管理者のあなたが作成して渡してあげるイメージです。
当然、自分の作業リストだけを渡されたメンバーには、自分が担当するタスクの前後関係は分かりません。いずれにせよ、各メンバーが作業できるのは1度に1つの作業だけです。全体のスケジュールの進捗管理をするのはプロジェクトリーダーに任せ、各メンバーはとにかく作業リストの作業をそれぞれ処理する体制を作り上げることで、GTDのコンセプト同様、メンバーは余計なストレスなく作業に打ち込むことが可能になるわけです。
メンバーのToDoも一緒に管理できるようにする
「プロジェクト管理ツールが次第に使われなくなる」という課題を克服するポイントが、メンバーが抱えているプロジェクトタスク以外のToDo管理です。
せっかくプロジェクト管理ツールを導入しても、ツールで定義されている以外の作業がなくなるわけではありません。プロジェクト管理ツールのタスクをあまりに厳密にしすぎると、ちょっとしたToDoのメモやリマインドのために、プロジェクトメンバーは結局ほかのツールで管理しなければならなくなってしまいます。
GTDのコンセプトを参考にするなら、やるべきことのリストは、できるだけまとまった場所に存在している方が好ましいはず。自分のToDoリストとプロジェクトのタスクリストというように、管理すべき場所が2重に存在すると、どちらかを使うのが面倒になってしまうケースが多々あるからです。
そこでお勧めしたいのが、できるだけプロジェクト管理ツールをメンバーに開放すること。メンバーがプロジェクト管理ツール上で、プロジェクトチーム以外の作業も管理できるようにすることです。
メンバーが各自の作業管理をプロジェクト管理ツールで行うようになれば、自然と毎日プロジェクト管理ツールが利用されるようになり、プロジェクトの進捗がシステムに反映されることになるわけです。
メンバーの作業管理がしやすいものを選ぶ
先ほどの、メンバー各自のToDoも管理できるようにするというポイントの延長にもなりますが、メンバーに使ってもらう上で重要なのが使い勝手です。多くの場合、プロジェクト管理ツールの使い勝手を、プロジェクトリーダーが管理しやすいか、という管理者目線で試しています。しかし、プロジェクトメンバーと進捗管理するのが目的であれば、これは大きな間違いです。メンバーの目線で使い勝手を判断する必要があるでしょう。
GTDでも、作業リストを「自分が使い慣れているツール」に入れることが重要です。使いづらいツールで作業管理をするほど、プロジェクトメンバーにとってストレスがたまることはありません。もし、使っているプロジェクト管理ツールが、最初の計画や管理目的には最適でも、メンバーにとって日々使い勝手が面倒という場合は、最初の計画と、進捗管理は別のシステムを使うという手もあります。
極端な話を言えば、もしメンバーにとって面倒なのであれば、プロジェクト管理ツールとして、必ずしもプロジェクト管理専用のシステムやソフトを使う必要もありません。例えば最初の計画立案は、細かい工数管理のできるマイクロソフトの「Project」で作成し、実際の進捗管理は、オフィスのホワイトボードを使ってみるのも方法です。ホワイトボードの代わりに、サーバ上でExcelファイルを共有したり、オンライン上のToDoリストツールや、Google Docs & Spreadsheetsなどのオンラインスプレッドシートで管理してしまってもいいわけです。
重要なのはプロジェクトのタスクを含め、メンバーが自分たちの作業を自ら手軽に管理できる仕組みを作ること。メンバーと進捗管理をするプロジェクト管理ツールを導入する際には、GTDで学んだことを生かして、プロジェクトメンバーのストレスを軽減する視点でツールを考えてみてください。
筆者プロフィール 徳力基彦(とくりき・もとひこ)
NTT、ITコンサルを経て、現在はアリエル・ネットワーク株式会社プロダクト・マネジメント室マネージャ。ビジネスパーソンの生産性向上のためのソフトウェアの企画・開発やコンサルティング業務に従事するほか、グループウェアやブログ、仕事術などに関する執筆・講演活動を行っている。ブログは「ワークスタイル・メモ」と「tokuriki.com」
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