ビジョン型と価値観型 タイプ別アクションプラン──ビジョン型・後編:成功するのに目標はいらない
「ビジョン型」の人、「価値観型」の人のそれぞれに、成功のための具体的なアクションプランの立て方をお伝えする本連載。今回はビジョン型の人に向けた完結編です。
成功するには目標は必須ではない──なぜなら、人にはビジョン型と価値感型があるからです。以前紹介した「ビジョン型、価値観型」の例を前提に、ではそれぞれのタイプの人は、どんなアクションプランを立てたらいいのかを紹介します。
前編、中編に引き続き、ビジョン型の人のアクションプランを作っていきましょう。ビジョン型完結編です。
これから2年後、1年後にはどうなっていればいいかを想像する
平本 では、次のステップにいきます。今から3年後にジャスダックに上場するためには、これから2年後にはどうなっていなくてはいけないでしょうか。だいたいでいいですので、想像してみてください。
T 売り上げが30億くらい欲しいですね。
平本 そのほかには?
T 上場のためのプロジェクトチームを作ります。特に社内の管理体制をしっかりさせておかなくてはいけないので、管理部門を強化しなくてはいけません。取締役の人数を、今は4人なので、6人に。管理部門の人数は20人くらいまで増やします。上場ができるような内部体制にもっていきます。
平本 ほかにありますか? 2年後にここまでなっていないというのは。
T リーダーを育てておかなくてはいけないので、4人くらい次期リーダーとなれるような人を作っておく。あと、米国進出のためのプロジェクトチームを作る必要があります。上場で得た資金でそこを大きくするという形にしたいですね。
平本 いいですね。
T 上場が目的ではなくて、米国進出のための上場ですから。
平本 あくまでも米国で成功するため、未来のために、ですね。では、そういう2年後になるために、今から1年後にはどうなっていればいいですか?
T 売り上げ30億の達成のためには、1年後には今やっている既存の事業がそれぞれ150%くらいになって来年も伸びる必要があります。A部門は今、好調だけれども、よりペースを上げて来年は150%くらいまで伸ばしてほしい。B部門は新規事業なんで、今年は赤字だったけれど、来年は黒字に転換してほしいです。
平本 なるほどね。あとは?
T 採用計画を今年は真剣にやって、来年は社員数を1.5倍ぐらいまで増やします。
平本 すごいですね。それから?
T 米国進出のプロジェクトを具体的に始めたいので、準備をするための人員をどこかからスカウトしてきましょう。ヘッドハンティングですね。
平本 素晴らしいですね。ここでまた、ありありと想像してください。その1年後、自分の目標が達成されている場面。どんな場面で、これは達成できていると思いますか?
T 各部門の売上が上がったのをみんなで確認しているときや……。そうですね……新入社員を含めた全社員に向けて自分が挨拶しているときに、「実はウチは2年後に上場を目指していています」といったら、みんなからワッと歓声が上がって……そんなときに感じると思います。みんながいい意味で緊張しているのが分かって。
平本 社員のモチベーションが上がったのが感じられるわけですね。
T そうです。
1年後にそうなるための具体的なアクションを決める──期日目標
では、ここからは1年後にそうなるための具体的なアクションプランを立てていきます。ここで大事なのは、“期日目標”です。1年後そうなるために、いつまでに何をするか、を決めていきます。やり方は自由でかまいませんが、例えば付箋を使ってやってみましょう。1年後にそうなるために、やらなくてはいけないことを付箋1枚に1項目、できるだけたくさん書き出してください。
- 役員に自分の意志を告げる 今週中
- 人材紹介会社に連絡 今週中
- 証券会社に連絡 2週間後
- 監査法人に連絡 2週間後
- 上場に向けたプロジェクトチームを作る 3週間後
- 会社情報を集める 1カ月後
- 社内規定の改定 2カ月後
まずブレストします。思いついたものを付箋に書いてください。そして、それを期日の早いもの順に並べていってください。次に完全じゃなくていいので日付を入れてください。これは今週中にとか、2週間後、3週間後までに、というように、最初の1カ月は週単位で出していきます。その後は月単位ですることを書き出してください。何もない週があってもかまいませんが、記述はずっと1年後まで続きます。それをこなしていきましょう。
ビジョン型の人は、こういう作業にワクワクするはずですね。ワタミの社長である渡邉美樹氏も典型的なビジョン型の方で、60歳になるまで毎月、何を実現するか、月単位で全部決まっているそうです。また、それを実現するために、今日することも毎日20〜30個目標があるといいます。その中でできないものがあったら明日に順延。前倒しできたら、別のものをもっと早くやる、だめだったら次の日に挑戦する、というようにしているそうですね。
ともあれ、1年後、3年後に目標を実現するためにやるべきことをブレストして、その期日を決めます。スケジュールが詰まってしまうときと、空くときがあります。詰まり過ぎたら、もう少し後にするなり、別の人に振るなりして対処してください。
1年後にそうなるための具体的なアクションを決める──ルーティン行動
期日目標のほかに、毎日やるべき“ルーティン行動”が必要です。3年後に上場するために、毎日やるべきことを決めて、それをこなします。
平本 3年後にジャスダックに上場するために、毎日何をしますか?
T 上場について考えたりする時間を30分でも1時間でも必ず持ちたいですね。経済新聞や雑誌なんかはよくチェックしているのですが、もうちょっと専門的な雑誌や本を読むとか、経験者に話を聞くとか。
平本 なるほど。他には?
T 社風を作っていかなくてはいけないし、人を増やしていく計画なので、社員と毎日1人ずつ面談して、コミュニケーションするような時間を取ります。
平本 いいですね。ほかにありますか?
T これからは通常業務のほかに、上場の準備が必要になるので、健康管理をしっかりしていこうと思います。朝食をとるようにして、野菜の多い食事を心がけます。
平本 じゃあ、そんな感じで目標に近づけていってください。
総括しましょう。ビジョン傾向が強い人は「何の制約もなかったら、20年後どんな風になりたいか」を想像し、そこから逆算してビジョンや目標を決めます。
例えばTさんの場合は、最高の目標が“東証一部上場”、余裕の目標が“地方市場上場”で、今回の目標を“ジャスダック上場”と決めました。まずはこのジャスダック上場という目標をなんとしても実現させてください。3年後の目標を設定したときに大事なのは、ありありとイメージ化すること、視覚化することです。見えるもの、聞こえるもの、感じるものをありありと思い描いて、感情があふれることが大事です。ここでは“五感と感情”がキーワードです。五感と感情でありありと思い描けば思い描くほど、モチベーションが上がります。そして、3年後の目標を達成するために必要なことを、その1年前、2年前と逆算して考えていきます。まず、2年前、つまり今から1年後の目標を設定して、必要なことをやってください。
アクションには2タイプあって、いつまでやるという期日行動と、毎日やるルーティン行動があります。まずは期日行動から、やることを書き出してください。10か月後くらいの行動になるとハッキリしないこともあるでしょうから、それは期日が近づいたら書き出していってください。まずは最初の1カ月ですることを週単位で書き出しましょう。
それと、毎日やるルーティン行動を書き出してください。目標を実現している自分を想像して、そういう自分になるためにはどういう行動が必要かを書き出します。仕事のことや、健康面を含めたプライベートなことを合わせて4〜5個程度あるといいでしょう。
これらを毎日やっていくのは確かに大変です。くじけそうになったら、3年後の目標が実現された場面、Tさんでいえば鐘をつく場面、社員に上場を報告する場面を思い出してください。そうすれば、やる気がふつふつと湧いてくるはずです。
次回は、「価値感型」の人のためのアクションプランの立て方に入ります。
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