その4、5「細かいことにこだわって」やる気をくじく:やる気をくじく、8つの方法(2/2 ページ)
「やる気」のくじき方、その4とその5は、“完璧主義”でやる気をくじく。そして、“強い競争”でやる気をくじくです。やる気のくじき方をしっかりマスターしましょう。
5──「競争が強すぎる」と、やる気がくじける
競争が強すぎると、やる気がくじけます。競争があると、やる気が出る人は確かにいるのですが、強すぎると、やる気がなくなります。
例えば、進学校でよくあると思いますが、学校の中で競争をさせると、一番になってやる気が出てくる人がいるのは確かですね。ところが、本当にむちゃくちゃ強く競争させると、やる気が出るのは10%程度ですね。下手したら5%です。トップ5%〜10%くらいは、常にこのポジションを守る、ということでやる気が出るのですが、残りの8割くらいは、「もういいや、いつも同じだし」みたいになってしまうのです。
学校の方針が「できないヤツは放っておいていい。とにかく競争させて、年間3人でも1人でも、東大、早稲田、慶応に入れたい」というものだったら、そうするのはやむを得ないかもしれません。しかし、それでは実はクラスの総生産性は低くなります。1割の人間だけやる気を出させて、残りの8〜9割のやる気をくじいてしまうと、40人全体の成績という見方では下がるわけです。
では、競争を止めればいいか、何も比べず楽しいことだけを好きなようにやらせればいいのか、というと、それでは成長がない。成長はしてほしい。そこで何と比較するかというと、自分と比較するのです。
比較には2つのやり方があって、個人“間”評価と個人“内”評価があります。個人間評価、つまり他者と比較すると、競争が強すぎる状況が起きてしまいますね。なので、個人内評価をしてほしい。昨日の自分と比べて、どれくらい伸びたかを見てほしいのです。
事例──昨日の自分と比べて、どれくらい伸びたかを見る
私が塾の講師をしていた頃の話です。算数の苦手な小学3年生の男の子がいました。3年生なのに3年生の問題ができなかったので、家族もその子をダメな子だといっていたのですが、国語やスポーツはできるし、算数でも2年生のテキストを持ってくるとスラスラできる。「そんなの当たり前じゃないか、3年生なんだから」と周りは言うのですが、私は素直に感動したのです。2年生の問題をスラスラ解いたのを見て、すごいね、と言い、毎回、今日はこんなにできたね、こんなにできたね、とやっているうちに、半年もしないうちに3年生の問題もスラスラできるようになりました。つまり「あの子に比べて、あんた劣っているでしょ」といわれると、やる気がなくなるけれど、「昨日に比べてこんなにできたね」と、本人がどれだけできたかを見ていくと、やる気になるのです。
私のプライベートな体験でいうと、以前、毎日水泳をやっていた時期があったのですが、水泳部の人と比べちゃうと泳ぐのが嫌になりますね。あの人たちはできるに決まっているのです。なので、自分の中で、ここから向こうまで前回は1分何十秒かで泳げたから、じゃあそれを5秒縮めようとか、もしくは時間ではなく、いつも20周を通して泳いでいるから、今日は25周にしようとか、こんなふうにすると楽しいですね。もちろん、目標が高すぎてはダメです。昨日は20周だから、今日は40周にしよう、なんて高すぎます。高すぎない範囲で、以前の自分と比べて評価するのがいいのです。
このように、高すぎない目標にして、自分のダメなところは探さず、昨日の自分に比べてどれだけできたかの方に意識を向けましょう。
個人間評価の問題点は、自分が相手に勝てると思ったときはすごくがんばるのですが、「勝てないな」と思った瞬間に、急にやる気がなくなって生産性が低くなる点です。「あの会社はウチのライバル。あの会社に負けないようにがんばろう!」といって、ヒーヒーいいながらもがんばれて、ギリギリでも勝てているときは、もっとがんばろうと思います。そんな時期に業績が飛躍的に伸びるのは事実です。でも、永続的には無理ですね。3カ月から1年くらい、せいぜい3年まではガツガツとがんばれます。しかし、10年も20年も競争していたら疲れてきてしまいますね。そして、勝てないと思ったら、急にやる気がなくなります。相手が一気に先に行ってしまうと、いきなり会社のムードが「ああ、もういいや、あいつらには勝てない。もういいよ」みたいな感じになってしまうのです。
ところが、昨日の自分と比べていたら、勝てるときもあれば勝てないときもあるけれど、常に昨日よりは成長しているから、「じゃあ、もっとやろうかな」みたいな気持ちになります。だから、個人内評価の方がやる気が出ます。個人間評価は時には大事ですが、やりすぎるとやる気をくじきます。
くれぐれも、競争がダメだと言っているわけではありません。それが強すぎるのがいけない、という話です。自分との競争はいいですが、それも強すぎるといけません。その基準は人によって違うので、よく自分を見つめてみてください。
次回は最終回。やる気のくじき方の6つ目の方法から8つ目まで一気に紹介します。
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