小飼弾氏に聞く: 会議についてどう思いますか?(5/5 ページ)
会議、そしてコミュニケーションは、ネットで大きく変化したと言われる。“会議”という場も実は大きな変化を遂げている。アルファブロガーでオープンソースプログラマーの小飼弾さんに、会議、そしてコミュニケーションについて聞いてみた。
ディシジョンメイキングの場を超えて
小野 最近、取引先の人でWoWを始めた人がいて、わたしもWoWに没頭している人間なので、その人とはビジネスのシビアな話をしていても、前提にWoWという共通の話題があることでとても場の空気がなごむ──ということがありました。何も話していないのにお互いほほ笑んでいる、というような。
小飼 現代の、というより、モダンな会議というのは、アジェンダを設定して決断を下す。ディシジョンメイキングの場であると。それ以外の情報をやり取りするというのは時間の無駄じゃないかという意識が強くあったわけです。会議中にWoWの話をするなんていうのはもってのほかだったわけです。
ところが人間はそういうときにオプティマルに動ける動物でないということはだいぶ分かってきた。ネトゲの話ができるならネトゲの話をした方が、気持ちがいいだけじゃなくて良い結論が出るということが分かってきた。会議もそこで時代が1つ変わったのだと思う。モダンからポストモダンへと。やってて単に自分が気持ちがいいだけじゃなくて、良い結論が出るのはポストモダン的な会議だと思う。人間がやる限りにおいては。
もう1つポストモダンな会議でよいのは、マイナスポイントにならないこと。例えばモダンな会議では、議題について知らない人がいれば、その人は単なる準備不足。ポストモダンな会議では、「この人にはまだこういうものが入る余地がある」という受け取られ方をする。
その背景には、知識がめちゃくちゃデフレしてるというのがある。何々を知っていることがすごかった時代から、「へー」と言ってもらうのが関の山になってきている。そういうときに何が価値があるかというと、相手を気持ち良くすること。笑いというのも、どんなにシリアスな場合にも必要になるでしょうし。
小野 今の弾さんの話を聞いていると、弾さんがよく言及されるラリー・ウォールのことが思い浮かびます。
小飼 ポストモダンにかけてはラリー・ウォールは神様みたいな人。Perlは世界初のポストモダンコンピューター言語である、という。言われてみればたしかにそうで1998年の素晴らしいスピーチがあるんだけど、英語を目いっぱい使っているから日本語に訳せない。昔に戻っているという言い方もできるかもしれないが、ポストモダンという言い方が一番正しいのではないか。何でそれをわざわざあえてポストモダンかというと、やはりモダンの知見も得ている。合目的的には十分以上の価値がある。1時間の会議が5分で終わったら価値がある。でもそれを突き詰めすぎるのはつまんないよね。
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