“最も”なのに1人じゃない? 最も気になる日本語――「最も〜な10人」:Biz.ID Weekly Top10(2/2 ページ)
新連載の「つい口に出る『微妙』な日本語」が好調だ。そこで日ごろからつい気になっている日本語表現のうち、最も気になる“最も”の使い方について調べてみると――英語との意外な接点が浮かび上がってきた。
「最も〜な1つ」は日本だけ。直訳だけが1人歩きする「one of the most〜」
小松氏によると、「one of the most〜」を日常生活で使うときは、「the most〜」という表現と使いわけている。
- That mountain is the most beautiful mountain I've ever seen.(あの山は今まで見た中で最も美しい山だ)
- That mountain is one of the most beautiful mountains I've ever seen.(あの山は今まで見た中で極めて美しい山だ)
この2文は、「one of」がついているかいないかが違う。ついていない上の文は、実際に体験した実感として使い、「the most〜」は「最も」という意味。
一方、下の「one of the most〜」の文は、ポジティブな内容を賛辞するときや、ネガティブな実体験をやや大袈裟に表現する場合が多いという。日本語にすると、「最も〜」という堅苦しいものではなく、「very」のようなニュアンスで十分らしい。
例えば「You are one of the most greatest students.(君はとっても優秀な生徒だったよ)」「This is one of the most beautiful meals I've ever had.(この食事は素晴らしくおいしかったなあ)」Today is one of the most miserable days of my life.(今日はマジで悲惨な1日だったよ)」「That was one of the most awful experiences of my life.( あれは、はなはだひどい経験だったよ)」など。
というわけで、現地では「one of the most〜」は「最も〜な1つ」ではなく、国語辞典に辛うじて出てきた「極めて、はなはだ」の方がしっくり来ることが分かった。
真相はいまだ闇の中に
さて、この「最も〜な1つ」なる“不自然”な日本語。対象になる人やモノを1つに限定しなくて済むから使い勝手がいい。だから今ではすっかりメジャーだ。いったいいつ、誰により持ち込まれたのだろう?
「カステラ」はオランダから、「カルタ」はポルトガルから、「カルテ」はドイツから――現在、日本には多彩な外来語が定着している。もし「最も〜な1つ」が米国から来た外来語なら、戦後の義務教育に英語を取り入れたことが一役買っている可能性がある。
たかだかこの60余年間であっという間に広まった――かもしれない「最も〜な1つ」。その真相はまだ明らかになっていない。どなたかルーツをご存知の方は、当編集部までぜひご一報を!
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