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第3回 コーチングとティーチングをどう使い分けるか?今さら聞けないマネジメント&コーチングの基本(2/2 ページ)

コーチングは効果的なマネジメントの方法ですが、場合によっては教え込む──ティーチングが必要な場合があります。どんなときに、どちらの手法を使えばいいのでしょうか?

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 その人に聞いてみるといいでしょうね。「専門的な仕事をやっていたようですが、どういうところに気を付けていましたか? どんなところに誇りを持っていますか?」と。たぶん、とうとうと語ってくれると思いますよ。そうすれば本人の自尊心が満たされますし、聞いてくれた人に対して好感を持つはずです。そして、「専門職でうまくやっていた部分を、プロジェクトで生かすとしたらどんなふうに生かしますか?」というような質問をします。そうしたら、できること、できないことを答えてくれるでしょう。自信がないという部分はティーチングを増やせばいいし、生かせる部分は「ぜひ生かしてほしい」とお願いします。

 要は、相手のプライドをくじかないことです。とかく「専門職とは違うんだから。お前、こうじゃなきゃダメだ!」とやってしまいがちですね。確かにそうなんですが、そうすると、その人の今までの実績がゼロになってしまいます。生かせるものは、生かしていきたいものです。

 困るのは、専門職時代の思いをとうとうとしゃべって、新しいプロジェクトでもこんなふうにやってみたいということが、明らかに「違うだろ!」という場合です。この場合は、私メッセージです。「なるほど、キミのこういう部分は生かせると思う(Yes)。そして(and)、私の意見だと、ここの部分はこうしたほうがよりよくなると思う」と、私メッセージで伝えます。たいていの人はそれを聞き入れるはずです。

 ところが、「いや、僕のやり方でいけます!」という人がまれにいます。そのときは、説得しようとはせずに、引き出すスキルで対応します。「なるほど、そう思うんだね。じゃあ1週間後、どうなっていればいい? そのために何ができる? じゃあ、1回それでやってみよう」とやらせてみます。上司に「こんなの無理だよ」という気持ちがあると、部下はけんか腰になるので、完全にニュートラルな気持ちで対応してください。そして1週間後、「どうなった?」と聞きます。「ダメでした。やっぱりこのやり方はマズイですね」と、本人が気づいてくれれば話が進みますよね。

 このコーチングをせず、「できます」といいながらできないまま、本人の気付きもないままになってしまうと、放任型になってしまいます。コーチングは、放任や傾聴と似て非なるものです。任せることが大事だといって放っておけば、それはコーチングではありません。また、部下が話したいことを、ただじっくり聞くというのも、カウンセリングではあってもコーチングではありません。上司にすでに答えがあって、部下に気づかせる質問をするという方法もあるようですが、それもコーチングではありません。それはコーチングの仮面をかぶった指示命令です。世の中のコーチングの誤解がこの部分です。

 コーチングの成果が出ないというのは、それがコーチングではなく、放任や傾聴になっているからです。コーチングでパフォーマンスが落ちることは、まずありえません。確かに無理やりやらせようとするとパフォーマンスは下がります。また、「あの人がこんなにひどいからうまくいかないんだ」という部下に対して、「ああそうか、大変だな、キミも」みたいな傾聴型の対応では、成果につながりません。

 部下がほかの人に対して不満を持っている場合は、「そうだよな(Yes)」で一通り受けてください。そしてその後、「だけど(but)」にはしません。「なるほど。ところで、キミはどういうふうになればいいと思う?」と聞きます。部下が答えたら、「では、そうなるために、キミにできることは?」と進めます。「そんなものない。アイツらをクビにしてくれないとできない」と答えるかもしれません。そのときも、「だけど」はナシで、粘り強く聞いてください。目標に対して達成度はどれくらいか、達成度が0.5でも1でも上がったとしたら、どうなっているか、そこに向けてできることはないか、といったことを聞いていきます。

 この方法は、上司の行きたい方向を指示しているわけではないし、相手のことを聞いているだけでもありませんし、ほったらかしているわけでもない。ニュートラルな立場だけど、しっかり軸を持ってリーダーシップを発揮しています。これがコーチングです。

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