“目隠し”しながら手探りで食事を――上司と仲良くなれる「クラヤミ食堂」:暗闇コミュニケーション体験リポート(3/3 ページ)
もしも視覚を奪われたら――。そんな“もしも”を体感できるのが“日本唯一”の「クラヤミ食堂」。未確認物体を口に入れては「トリ肉だ!」「いや魚だよ」「ブタじゃない?」などと食材を予想する声が飛び交う。見えない闇だから“見えた”ものとは?
目を拘束して心を開放する、絶大な目隠し効果
目隠しをとると、一瞬の沈黙が流れた直後に「思ったとおりの人だった」「想像と全然違う」と、声のイメージと実像とのギャップに対するコメント大会となる。例えば髪が短めの体育会系サラリーマン。筆者がそう予測していた男性は、繊細なクリエイティブ系の雰囲気を醸した人物だったし、「ショートヘアの人かと思った」と指摘された筆者自身も、どうやら声と実像にギャップがあるらしいことが判明。筆者はロングヘアである。
さらに、写真のように夜桜畑に埋もれたお品書きで答え合わせをしていくと――なんと2品目のカキ以外は、付け合わせを含め、予想が当たっていた料理が皆無であることが分かった。肉か魚か、赤ワインか白ワインか。普段なら間違えようのないこうした基本の判別すらできていなかったのだ。視覚がいかに大きな力を持っているか、改めて痛感する。
だが、この夜“見えた”中でなにより嬉しかったのは、目隠しを外した後でも皆が心に壁を築かなかったこと。それどころか、打ち解けるあまり話が尽きなかった。目隠しには、視覚が受けるインパクトや偏見、社会的立場や理性の殻などを瞬時にとっぱらい、心を素っ裸にしてしまう絶大なパワーが宿っているのだ。
今回の春バージョンに訪れたのは、女性男性の割合がほぼ半々の約80人。1日あたり参加者40人に対し20人ものギャルソンがつき、目の見えないぶんを手厚くフォローしてくれた。そのうえアレルギーなどにも配慮して料理をサーブしてくれたから、誰もが安心して参加できたことだろう。
アレルギーに限らず、このレストランでは苦手な食材を使わないよう、最初に申請できる。ただ目隠しして食べたら実はおいしかったという前例があるそうだ。食わず嫌いが治るチャンスでもあるから、苦手な食材申請を控えるのも手かもしれない。
心の距離を縮め、もっと仲良くなりたいと思っている上司と部下や、関係を修復したいカップルには“裸”でぶつかりあうキッカケになる場所。そして自分自身を見失いそうな人や、自らの内面をもっと知りたい人には、胸の奥に眠るもう1人の自分に出会える場所。それが幻のレストラン、クラヤミ食堂である。
食堂の扉が次に開くのは6月。日程やチケット入手方法は、「こどもごころ製作所ブログ」内の『クラヤミ食堂』でチェックするか、同ブログのメルマガ登録をすればOKだ。店のドアを開ければきっと、あなたの内側で閉じていた扉が次々に開き、心地よい風が吹き抜けるだろう。
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