SCAMPER法――「10分以内にアイデア3つ出さなきゃ」をかなえる方法:アイデア創発の素振り(4/4 ページ)
午後から新製品を考える会議。ふと、メールを見返すと「1人3つアイデアを持ってくること」という指示――しまった、見落としていた。しかし会議まであと20分しかないぞ。こりゃまずい。 という時にうってつけの方法がある。
SCAMPERはどうやってできたの?
日本創造学会の、あるベテランの先生からのアドバイスによると、E.P.トーランスの『創造性の教育』(誠信書房、1966年刊、原題『Guiding Creative Talent』1962年刊)で記載されたリストが、現在確認されているもっとも最初のSCAMPER風の知識セットと思われる。ただし、発想ツールとして紹介されているのではなく、発想の柔軟性を評価するための項目として紹介されている。
創造性テストの柔軟性を評価する項目において、以下の項目が示されている(『創造性の教育』P.316より)。
- 修正
- 追加
- 色の変更
- 形の変更
- 組合せ
- 分解
- 拡大
- 縮小
- 動作
- 数の増加
- 位置
- 材料の質
- 再配置
- 転換
- 感覚に訴える(耳)
- 感覚に訴える(眼)
- 感覚に訴える(鼻)
- 感覚に訴える(触覚)
- 代用
- 除去
なお、最も端的にSCAMPER誕生の流れを示しているものの1つに、マイケルマハルコの『アイデアのおもちゃ箱』(ダイヤモンド社、1997年刊、原題『Thinkertoys: a Handbook of Creative-thinking Techniques』1980年刊)の以下の文章を紹介しよう。
SCAMPER(7つの問いかけ)は、アイデアを刺激する問いのチェックリストである。
問いのうちいくつかは、最初アレックス・オズボーンという創造性の第一人者によって提案されたものである。その後ボブ・イバールが次のような覚えやすい頭文字に並べ変えた。
- S=Substitude? 代用品はないか
- C=Combine? 結びつけることはできるか
- A=Adapt? 応用することはできるか
- M=Modify?=Magnify? 修正、あるいは拡大できないか
- P=Put to other users? 他の使いみちはないか
- E=Eliminate or minify? 削除か、削減できないか
- R=Reverse?=Rearrange? 逆にするか、再編成できないか
ちなみに、オズボーンの著書として、現在手に入る復刻版の『創造性を生かす』(創元社、2008年、原題『YOUR CREATIVE POWER』1948年刊)には、SCAMPERという表現はないが、項目立てて、SCAMPER質問に相当する項目が見れられる。
- 第19章 試案を得る
- 第20章 利用法を考える
- 第21章 借用と翻案
- 第22章 一ひねり変化させてみよう
- 第23章 拡大しよう
- 第24章 縮小しよう
- 第25章 置き換えてみよう
- 第26章 配置変え・再調整をしよう
- 第27章 反対を考えてみよう
- 第28章 結合させる
今回紹介した48の質問が絶対無二のものではない。SCAMPERを発展させた詳細版のリストには、今までに見聞きした中でも、複数のアレンジ版が存在する。ある企業では100近い質問項目からなるオリジナルのSCAMPERを持っている例もある。
つまりSCAMPERは、オズボーンの源流から、彼の流れをくむ人々がさまざまなナレッジを蓄積した結果なのだ。今回連載で翻訳した『creativity UNBOUND』はその中の主要なテキストブック。同書のSCAMPER表現を、筆者は好んで利用している。
次回は、「TRIZ」という開発理論を同じようにトリガーリストにしたものを紹介する。
著者紹介 石井力重(いしい・りきえ)
事業のアイデア創造支援や技術開発をサポートする事業化コーディネーター。仙台のベンチャー企業デュナミスが事務局を務める創造性育成ツール開発プロジェクトでは、プロジェクトリーダーを務めた。このプロジェクトで誕生した新商品が「ブレスター」である。みやぎものづくり大賞(2007)で優秀賞を受賞。社会人院生として、東北大の博士課程にも在籍、新事業創造マネジメントや創造工学を研究。Webサイトは「石井力重の活動報告」。
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