第15回 「全然オッケーです」――いいのか悪いのか!:つい口に出る「微妙」な日本語
全然+肯定の表現は、ビジネスの現場にも着実に浸透しつつあります。必ずしも間違った言い回しとは限らないようなのですが、まだまだなじめない人々も多いので、控えましょう。
「今度来る派遣のコの席、君の隣にしようと思うんだけどどうかな」
「全然オッケーですよ!」
「どうせ自腹切るわけじゃないんだから、銀座で寿司とかでもいいよね」
「全然、アリでしょう」
私は、長らく「全然」は、「全然ない」のように、否定の前に付けるものとして慣れてきました。ですので、後ろの部分に肯定的な表現がくる「全然オッケー」のような表現に出合うと混乱します。
手元にある、『大辞林』で「全然」を調べてみたところ、〔(打ち消し、または「だめ」のような否定的な語を下に伴って)1つ残らず、あらゆる点で。まるきり。全く。〕と書かれています。
やはりそうなのだ、と安心して、解説を読み進めると、なんと〔(話し言葉での俗な言い方)非常に。とても――いい〕とも書かれています。
そうです。全然+肯定形も間違いではないんですね。
「全然」を単なる強調語として使うのが間違いではないにしても、強調すべきならば、「たくさん」とか「とても」のように自然な表現をしてほしいものです。
そもそも、あとに続くのが否定であれ肯定であれ、何もかも強調する必要があるのかと思うことも、よくあります。
「内田君、A3のコピー用紙、まだ在庫あるよな」
「全然残ってます!」
「やけにうれしそうだな。いいことでもあったの?」
「全然そんなことはありません」
「ところで、何で君はいちいち全然をつけるんだ?」
「全然意識してません」
すべてを強調されては、本当に強調したいことが何なのか、分からなくなってしまいますからね。
肝に銘じよ!
「全然」を 控える気持ちは 全然なし
筆者:濱田秀彦(はまだ ひでひこ)
ヒューマンテック代表取締役。1960年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業。住宅リフォーム会社に就職し、最年少支店長を経て大手人材開発会社に転職。トップ営業マンとして活躍する一方で社員教育のノウハウを習得する。1999年に独立。現在はコミュニケーション研修講師として、プレゼンテーション、話し方、マネジメントなどの分野で年間100回以上の講演を行っている。また、Webサイトのプロデュース、システム開発も手がける。著書には『ビジネス快話力』(主婦と生活社)、『みんなのパワーポイント企画・構成・話し方』(エクスナレッジ)などがある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.