第10回 Tシャツをメディア化する――小規模企業でもできるCSR:みんなで作る地球のあした、企業発“巻き込みエコ”最前線(2/2 ページ)
ここ数年、注目されるようになった企業のSCR(社会的責任)。今ではその一環としてエコに関する活動を行っている企業も多い。ここでは地域社会や環境問題と向き合うために「Tシャツ」を通じてさまざまな活動を行っている久米繊維工業のCSR活動の事例を見てみよう。
本業とリンクしたCSR活動を
久米さんはNPO日本オーガニックコットン協会の設立に尽力し、有機栽培綿製品の認証と普及、国際団体の日本窓口として現在も活動している。
「Tシャツってメディアなんですよね。衣類ではありますが、プリントによって、メッセージを発信することができるという特性があるんです」
そこで、久米さんは、オーガニックコットンによるTシャツをエコロジーのPRに活用する仕掛けを作った。その結果、有名アーティストやミュージシャン、大企業や各種協会などがユーザーとして名乗りを上げてくれた。エコの精神とオーガニックコットンがリンクしたのだ。
久米繊維工業は、以後、さまざまな社会貢献活動に取り組む。Tシャツをキャンパスに見立てて、それを砂浜に展示する「砂浜美術館Tシャツアート展」の支援や、「JMAAエコロジーチャリティ2007/Tシャツアート展」の後援、また明治時代の中期に商業ベースの生産が途絶えた「和綿」(日本産の綿)を復活させるプロジェクト「しあわせのコットンボール」の応援企業となり、スタートから5年かかった今年の夏、ついに約90着の和綿Tシャツを作り上げた。
中小企業がCSRにどう取り組めばいいのか。この質問に久米さんは「本業とどうリンクするかを考えるべきです。まずは本業の中でこだわりを見つけること」と答える。そのこだわりが、ひいては自社の魅力になっていくはずだ。そして、久米さんはそれを発信することが重要だという。
「今はインターネットなどを使うことで小さな企業でも全世界に向けて発信することができるので、大きな広報予算を立てなくても効果を得ることができます。そして、人とのつながりができたら、状況に応じてNPOを作るなど、仲間作りをすることも大切です」
有志を募ることによって、中小企業の会社組織だけでは集められない人員を増やすこともできる。さらに、久米さんは「CSR」と「PR」の両輪を忘れてはいけないと強調する。社会貢献やボランティアはあくまでも無償でなければいけない。見返りを期待すると純粋さが失われてしまうからだ。しかし、それでは資金力の限られている中小企業の場合、長続きさせることは難しい。そのために、この2つのバランスが大切なのだ。
「PR」という側面に着目し、企業と社会とのつながりを広げていくような活動を展開するべきだと久米さんは主張する。そうすれば取引先からの要望によるお仕着せの「CSR」でなく、企業の次世代を見据えた取り組みができるはずだ。
項目 | 内容 |
---|---|
1 原材料・資材の厳選 | オーガニックコットンも含め、単年草の天然素材である綿花を主原料に使用し、原材料やプリントに使用する素材および製品に使用する副資材等についても環境負荷の低いものの使用に努めます。 |
2 省エネと廃棄物削減 | 技術的・経済的に可能な限り、商品デザインの工夫や新技術の導入で資源・エネルギーの効率的活用をはかり、事業活動により発生する廃棄物の再利用および再資源化を高めることにより廃棄物の削減に努めます。 |
3 コミュニティとの調和 | 工場については特に周辺環境に配慮して地域住民との調和をはかり、本社のショールームやインターネッ トのホームページでは、その情報発信機能を生かして、地球環境の大切さと、Tシャツを通じて誰もができる地球環境対策についての情報交換の場を創造します。 |
4 環境NPO・NGO等支援と協働 | 地球環境の保全を目指す、NPO・NGO等の活動をオーガニックコットン商品の企画・販売・サービスの提供およびインターネットを通じたPR活動で応援します。また、NPO・NGOと協働で、地球に優しい商品・サービスの開発を行います。 |
5 法律・規制・業界基準の順守ならびに汚染の防止 | 環境マネジメントシステムに関する法律、規制、業界基準を順守するとともに、自主基準、業務手順を整備し、環境負荷の低減ならびに汚染の予防に努めます。 |
年 | 内容 |
---|---|
1997年 | ・日本オーガニックコットン協会「I Support Organic Cotton」協力開始 |
1999年 | ・「砂浜美術館Tシャツアート展」に低価格でオーガニックコットンTシャツ提供開始(毎年GW期間中に開催) |
2002年 | ・「ISO14001」取得 |
2004年 | ・日本綿業振興会「COTTON USAアワード」に低価格でTシャツ提供開始(毎年GW期間中に開催) |
2006年 | ・直島町役場主催「うぃ・らぶ・なおしまTシャツアート展」に低価格でオーガニックコットンTシャツ提供開始(毎年GW期間中に開催) ・JILLA主催「JMAATシャツアート展」に低価格で日本製Tシャツ提供開始(毎年7月中旬に開催) ・グループ工場運営に「グリーン電力証書システム」導入 |
2007年 | ・2002年より、渡良瀬エコヴィレッジ・エコロジーオンラインと協働で取り組んだ「和綿Tシャツ」が完成 LIVE EARTH JAPANのオフィシャルTシャツとして採用→ Yahoo!チャリティーオークションにて販売(収益はエコNPOに分配) ・「小布施Tシャツ畑プロジェクト」に低価格でオーガニックコットンTシャツ提供開始 |
『月刊総務』2007年11月号 特集「事業特性を生かして伸ばせ 企業価値を上げるCSR対策」より
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