「1に運動 2に食事、しっかり禁煙、最後にクスリ」――内臓脂肪を減らす4つのルール:近・楽・長で選ぶメタボ対策ツール
ズボンやスカートのウエスト回り、最近きつくなってきていないだろうか? 内臓脂肪が原因で動脈硬化などを引き起こす生活習慣病。予防のカギは4つある。
「メタボリックシンドローム」とは、内臓脂肪型肥満が原因となり高血糖、脂質異常、高血圧などを呈する病態だということは、知っている人も多いだろう。それらが重複すると動脈硬化が進行し、虚血性心疾患や脳血管疾患などの発症リスクが高くなるのだ。
大敵は内臓脂肪
体重が増えるとかウエスト回りがきつくなるなど、肥満は自分で気付くことができるが、高血糖、脂質異常、高血圧においては、多少の異常ではほとんどの場合無症状。知らず知らずのうちに日々、少しずつ動脈がボロボロの状態に進行していってしまうのが恐ろしいところである。よって、「検査結果はやや高め程度なのでようすをみよう」など悠長ことはいってられず、ただちに基準値をクリアするように治療に取り掛かる必要がある。
では、複数の危険因子を持っている場合には、いったい何から手を付けていったらよいのだろうか?
従来は血圧を下げる、血糖を改善させる、脂質異常を改善させるなど別々に治療が行われていた。しかし、メタボリックシンドロームの概念より、それらの危険因子の根源となっている「内臓脂肪」を減少させることこそが根本的な治療法だ、と考えられるようになってきている。
2006年2月に行われた2005年度生活習慣病予防週間には「内臓脂肪 減らして防ぐ 生活習慣病」のスローガンが掲げられた。これは、内臓脂肪を減らしてメタボリックシンドロームの病態をつくり出さないことが生活習慣病の予防につながるということを明快に表しているスローガンだ。
生活習慣病には運動第一
それでは、どのような予防策を講じればよいのだろうか? これにも、同じく2005年度生活習慣病予防週間で使われたキャッチフレーズがそのまま当てはまる――「1に運動 2に食事 しっかり禁煙 最後にクスリ」。これをみると、運動が真っ先に挙げられているのが分かる。運動による効果が科学的に証明され、運動の重要性が社会的にもしっかり認知されてきたことは、皆さんに運動を推奨してきた私たちにとって喜ばしい限りだ。
ただし、これだけは勘違いしないように強調しておきたい。病気の予防と治療では、それぞれアプローチの方法が異なるということ「1に運動……」はあくまでもメタボリックシンドローム予防のためのキャッチフレーズ。完全に高血圧や糖尿病と診断され、かつ重症の場合には、「運動」ではなく「クスリ」が最優先される場合もある。
例えば重症の高血圧の人が一生懸命に運動し、さらに血圧を上げながら運動を行えば、血管の壁を傷つけ動脈硬化をいっそう進行させてしまう。また、長年メタボリックシンドロームの状態で過ごしてきた人は動脈硬化が進行している恐れもあり、運動を始めたとたんに虚血性心疾患や脳卒中などの事故を引き起こしてしまう場合もあるので、運動に関しては医師と相談し、その指示に従い行うべきだ。
さて、何事でもさまざまな問題が生じた場合、本質を解決することが肝心となる。「楽だからつい車」「おいしいからもう一杯」など誘惑に負けそうになったときには、「内臓脂肪 減らして防ぐ 生活習慣病」のスローガンをぜひ思い出してほしい。
刹那(せつな)的に快楽を享受しながら、体の老化をスピードアップさせるのか、それとも多少なりとも節制した生活を送り数十年後に 「サクセスフル・エイジング」を迎えるのかは、現在の自分自身のライフスタイルにかかっているのだ。
『月刊総務』2006年6月号 カラダが資本だ!「健康運動指導士からのアドバイス」より 執筆:内山陽彦
執筆者紹介:内山陽彦(うちやまてるひこ)
七沢リハビリテーション病院医療福祉支援室主査、理学療法士、健康運動指導士
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