「残業の短縮」が最重要――社労士から見たメタボ対策:近・楽・長で選ぶメタボ対策ツール
社労士の目から見たとき、メタボ防止の最重要課題は「残業の短縮」だという。メタボと残業に、どんな関係があるのか。
企業の人事労務問題のアドバイザーである社会保険労務士。もし社員に健康問題が起きた場合にはさまざまな手続きを社労士が行うことになる。労務のプロはメタボ対策をどう考えているのだろうか。
労務管理を数多く手掛ける社会保険労務士の武内事務所・武内淳一郎さんによると、社労士の視点では、メタボリックシンドロームに関連する最重要課題は「残業の短縮」である。
コスト、健康両面で有効な残業時間の短縮
「法的な規制も強まってきている中で、企業としても残業は減らしたい。また、残業を減らしても業績低下にはつながらないというデータもあり、社労士としても残業を抑制していくことを提案しています」と武内さん。
少なからぬ企業が抱える大きな問題が、残業代未払いといった賃金の問題。残業を減らすことはコスト面で有効であると同時に、健康問題にも寄与する。不規則な生活を脱することで、健康なライフスタイルを取り戻せば、メタボリックシンドロームの予防につながるというわけだ。
また、健康診断の実施や産業医の選任などのほか、2006年4月に施行となった改正労働安全衛生法への対応も見逃せないという。
「まずは法律に基づいた健康診断を確実に行う。そして、その結果を産業医がチェックしてアドバイスできる体制を作ることが基本です。また、2006年4月に施行となった改正労働安全衛生法により長時間労働者への医師による面接指導の実施が義務付けられました(50人未満の事業場は2008年4月から適用)ので、これに応じて社内的な体制を見直すことも重要な課題ではないでしょうか」
社員が病気になったときの休業規定をチェック
もちろん、法に基づいた対策を行っても、社員の病気がゼロになるわけではない。このようなケースに適切に対応する規定を作っておくことがトラブル防止には必要だと、武内さんは言う。
「さまざまなケースがありますが、企業によっては社員が病気になって就業できなくなった場合にどうするかという規定を定めていないことも。また、規定があったとしても、その企業の現状に全く合っていないということもあるので注意が必要です」
例えば、「病気になったときは6カ月休職期間を置く」などと規定していても、企業として活動していくために別の人材を採らねばならず、休職期間を確保できないということになりかねない。これは企業にとっても社員にとっても不幸なことだろう。
「ベンチャー企業などに多いのですが、社内規定の例文集などを丸写しで採用したりすると、こういうことになりがちです。まずは社内規定が自社にとってふさわしいかチェックする必要があります。また、昔からの社内規定を使っているという場合、会社の現状からずれてしまっているということもあります」
産業医と社労士が協力して職場の安全衛生を守る
また武内さんは、産業医の重要性を強調する。
「50人以上の事業所では産業医を選任することが義務付けられていますが、これを守っていない企業、あるいはこの義務を知らない企業さえある」
産業医が重要なのは社員の健康管理上はもちろん、健康上のことで人事トラブルがあったような場合に医療面での正確な判断を仰ぐこともできるからだ。先にも触れたが、2008年からは50人に満たない事業場であっても長時間労働者への医師による面接指導の実施が義務付けられる。そうなると、ますます産業医の重要性は高まってくるだろう。
「医療面を産業医が、法律面を社労士が対応し、協力して取り組むという姿勢が必要になってくると思います。あまり知られていないようですが、50人未満の事業場が複数で産業医と契約する場合には、助成金制度(労働者健康福祉機構が行っている小規模事業場産業保健活動支援促進助成金)などもあります。このような制度をうまく利用して、その会社に合った体制を整えていってほしいですね」と武内さん。
生活習慣病に限らず、メンタルなどの面でも病の芽を摘み取ることで企業の医療費負担も軽減できる。そういった意味でも健康診断や産業医の選任、社内規定の見直しを軸に、社内体制を整えることが急務といえるだろう。
『月刊総務』2006年10月号 第2特集「社員の生活習慣病予防 メタボリックシンドロームにどう取り組む?」より
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