わずか4年で3度も被災 コロナの「生きた」事業継続計画とは?:「いざ」への想定力が決め手、企業の震災対策&グッズ(2/2 ページ)
わずか4年の間に震災2回水害1回と、3度も大きな自然災害に見舞われた企業がある。新潟県の住宅設備機器メーカーのコロナだ。コロナが被災経験から導き出した、従業員の家族や地域ぐるみの「生きた」事業継続計画(BCP)とは?
トップの従業員、地域への気遣いが復旧への原動力に
話を被災時に戻そう。浸水が進む中、コロナでは、すぐに内田社長を最高責任者とする緊急対策本部を立ち上げた。そして、従業員の安否確認とともに、「従業員を今日は帰さない」ことを決定。面接の学生、健康診断のために訪れていた医師、看護師など来客を含む約700人で停電して冷房も止まった暗闇の中、わずかな飲料とお菓子などで飢えをしのいで一夜を過ごした。
翌朝、自衛隊のボートで無事救助されたものの、本当の意味の戦いが始まったのは翌日から。汚水も入り交じった泥水をかぶった物や場所の片付けの大変さは想像以上だったという。
そんな従業員を力づけたのは内田社長の「これは、会社の新陳代謝だ」というプラス思考だった。必要な投資については即座に社長決裁をし、対策を採った。また、朝昼夕と各部門の代表者を集めて対策会議を開き、状況を黒板に書いていった。
「状況を書いていったことで、従業員の誰もが『確実に復旧している』と実感しながら作業に当たることができました」(高橋さん)
また、被災した地域や従業員の自宅にも積極的に人員を出した。IT企画室の場合、通常業務を行う者、社内の復旧作業に当たる者、被災した従業員の自宅作業を手伝う者と三班体制で対応したという。
「自社を早く復旧させることはもちろん大切ですが、地域全体が被災している中で、自分のことしか考えないのは企業倫理に反します。ですから、社内よりも先に、社外に流出したゴミなどを回収し、会社に送っていただいた支援物資も地域の方や従業員の家族へ先に配りました」(高橋さん)
そうして、従業員はもちろん、地域とも一致団結し、被害総額13億円を出しながらも、当初の予想より早く、約1カ月で完全復旧を果たした。
同社ではこの時の経験を踏まえて、各種の規定集、対応マニュアル作りなど、まだ制定していなかったBCP(事業継続計画)の策定に着手。その結果、水害からわずか3カ月後の10月23日に新潟県中越地震で長岡工場が、3年後の2007年7月16日に中越沖地震で柏崎工場が被災した際も、スムーズに復旧することができた。
この2回の地震が発生した際、今井さんは、すぐに現地に駆け付け、初期対応を行ったという。
「長岡が被災した時に車を使ったら、交通規制と渋滞で到着まで何時間もかかりました。それで、柏崎にはバイクを利用したんです。車が通れない道でもバイクなら進むことができたので2時間ほどで到着することができました」と今井さん。ちなみに、車で向かった場合は到着まで7時間以上を要したそうだ。
マニュアルに頼らない 「自分で考え、行動する」意識で
「マニュアルを作るとそれで安心してしまいがちですが、『いざ』という時は、マニュアルを持ち出せないケースも多い。マニュアルは平常時に見て頭に入れておくべきものとして、頼り過ぎないのがいいと思います」と高橋さん。
「○○をしろ」と書いてあるからするのではなく、今、何をするべきかを考えて行動することが重要なのだ。それには、定期的に訓練をしたり、日常的に意識しておくことが大切となる。
前述したが、地域や関係先との関係を大切にするのも企業継続に不可欠だ。
「当社が被災した時、多くの助けをもらいました。その経験から、備蓄品も自社のためにではなく、他社やほかの地域が被災した時の支援品として考えています。いくら備蓄していても、持ち出せなかったらしょうがないですからね」と高橋さんは語る。
そして何より大切なのが、日ごろからの従業員同士のつながり。非常時には部門やセクションを越えた横の連携が重要となる。大きな試練を乗り越えるごとに、コロナ従業員の結束は強まり、それが企業の成長を支える原動力になっているようだ。
『月刊総務』2008年1月号 特集「あなたの会社の“もしも”を救う 事業継続マネジメント」より
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