半永久的に持つ!? 「生き延びる」ための非常食:「いざ」への想定力が決め手、企業の震災対策&グッズ
もしも仕事中に巨大地震に襲われたら――。首都圏では公的支援を受けられるまでに約8日間かかるという。その間、帰宅難民となり社内でサバイバルしないといけなくなったら、先立つものは水と食料だ。備蓄管理のコツは?
「一番困ったのは水。髪を洗えないから、いつも帽子をかぶって汚い髪を隠していた」。これは1995年の阪神・淡路大震災直後の被災者の体験談だ。被災直後からライフラインが止まり、水道の復旧まで1カ月かかったという。被災者はその後、いざという時のため風呂の残り湯を残しておく生活習慣を身に付けた。
とはいえ風呂の水は、あくまで生活用水としての備え。それ以前の飲み水となると、やはり別途、備蓄しておく必要があるだろう。それでも飲み水は最低限の飢えしかしのげない。生き延びるには食料が必要だ。
飲み水と食料、管理するなら一括保管を
もし就業中に震災に遭ったら――。あらかじめBCPの取り決めで復旧担当になった場合や、帰宅ルートがまだ危険なため帰るに帰れない場合、1週間以上を会社でじっと過ごすことになるかもしれない。
そうなると、いよいよ水と食料問題は切実だ。いざ口にしたらカビていた、腐っていた――ということがないよう、企業や家庭内の備蓄担当者は管理を万全にしておきたい。なにかポイントはないだろうか?
以前防災用帽子や脱出・救助グッズの紹介で登場したコクヨS&Tでは、同社が販売している各々の従業員に配る非常用品セットには、水や食料をあえて入れていない。
というのは、同社と防災グッズを共同開発している防災システム研究所では、首都直下型地震クラスの巨大地震が発生すると、交通やライフラインが麻痺し、公的支援が被災地全体に行き渡るまでに約8日間かかると想定している。
「8日」とは、一般的に定着している「3日分の備蓄食糧を」の「3日」では追いつかないことになる。この想定に基づき、仮に100人分の食料を8日分備蓄する場合、2400食必要だ。
コクヨS&Tは、これらを従業員に個別に配り、賞味期限ごとの交換も個別にしていたのでは、管理が大変。漏れも出てくると予測した。そこで備蓄食を一括保管し、管理業務を簡便化しよう――という主旨のもと、食料や水を入れないことにしたという。入れる場合はオプション扱いとなる。
1人1人に配らないのは、管理上の理由だけではない。実は、配られたそばから食べてしまう人がいる――という備蓄管理担当者の“泣き”の声も反映させたのだ。空腹の中、遅くまで残業している人なら思わずうなずいてしまうかもしれない。
長期保存できるものを選び、交換時の負荷もカット
一括管理し、賞味期限時などの交換をスムーズにしようという以外に、管理のコツはもう1つある。交換回数そのものを減らすことだ。減らした分交換の手間もコストも省けるから、担当者だけでなく会社にとっても一石二鳥だろう。
交換回数を減らすには、できるだけ長期間保存できるものを選ぶに限る。どれくらい保存できるのか?
水ではエイトノットの「いのちの水」のアルミボトルタイプのものなら10年持つという。同社ではペットボトルタイプも製造しており、こちらは5年持つ。期間の違いは「中身の違いではなく、単にボトルメーカーがうたう耐用年数の違い」だという。
長期間保存できる理由は、不純物を除いたほぼ真水と、ボトルに空気が入らないようボトリングしことから、カビにくくなっているためだ。
食料では、25年持つという米国のオレゴンフリーズドライの「サバイバルフーズ」がある。湯を加えると野菜スープやチキンスープになるものだ。湯が調達できなければ水でも問題なく食べられる。
実はこの商品は半永久食。総輸入販売しているセイエンタプライズによると、米国同様、日本でも最初に売り出した30年前は賞味期限の表示はしていなかった。
というのも、メーカー名が示すようにサバイバルフーズはフリーズドライ食品。「水と酸素がない状態なので、化学反応が発生しない」(同社)から半永久的に保存できるのだ。ところが法律上の記載義務が生じ、現在は便宜上「25年」とうたっているのだという。
10年持つ水に理論上半永久的に持つスープなど、なるべく長期保存可能な食料と水を、個別ではなく一括管理しておく。これが従業員が「いざ」を生き延びてもらう策の1つだ。
ところでこれらの備蓄食、お味のほどは――? 管理担当者なら購入前に試食して、満身創痍の従業員に少しでも笑顔が戻るようなおいしさも追求しておきたいところだ。
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