どう働く? 会議システム選びは「働き方」選び:目的別に使いこなす「遠隔会議システム」、導入と活用ポイント
遠隔会議システムは大きく分けてテレビ会議システム、Web会議システム、電話会議システムの3種類。目指す働き方に応じて選択する必要がありそうだ。
遠隔会議システムを使う最大のメリットは出張交通費や時間などのコスト削減。前回はこうした遠隔会議システムの基本を押さえた。それぞれの特徴は次のようになる。
内容 | テレビ会議システム | Web会議システム |
---|---|---|
新たな設備購入 | 必要(専用端末) | 不要(既存PCとネット環境のみ) |
イニシャルコスト | 数十万円〜 | なし |
ランニングコスト | 電気代のみ | 月額利用料が数千円〜 |
主な使用場所 | 会議室や打ち合わせ卓など、専用端末のある場所に限られる | PCがネットで環境ならどこでも。会議室や打ち合わせ卓ほか、自席や外出先でも |
利用時の特徴 | 映像と音声が鮮明 | データを共有できる |
接続システム | SIPなど相互接続 | 社内システムなどシステム連携 |
安定性 | 専用端末のため安定している | PCのCPUやメモリ能力の影響を受ける |
このほか電話会議システムも存在する。1対1だけでなく3拠点以上で同時に音声通話して会議ができるシステムだ。電話だからもちろん相手の表情は見えない。専用のモニターもWeb画面も必要なく、音声のみで通信するから、3つの会議システムのうち最もシンプルなシステムといえる。
テレビ会議が優勢 導入企業の利用状況
では実際、企業ではどんな会議システムを採用しているのかをソニー、マイクロソフト、ヤフー(五十音順)などの例を見ていこう。いずれの企業でも出張費削減が導入理由の1つだ。
・テレビ会議システム、Web会議システム、電話会議システムをすべて導入
まず、3種類の会議システムをすべて導入しているのがソニーとマイクロソフト。
ソニーでは、リアルタイムでコミュニケーションを取るのに会議システムは必須という考えのもと採用。どのシステムを使うかは部署ごとの判断に委ねている。特にテレビ会議システムは自社開発。システム上で会議室の予約さえすれば全部署で使えるため、利用頻度が高い。
ただしPC「VAIO」の開発部署などではノートPCを持ち歩く習慣がある。専用端末ではなく携帯するPCからでも会議ができるWeb会議システムと、事前予約が必要なテレビ会議と用途や好みで使い分けているようだ。予約が必要な時や大人数の会議ではテレビ会議システムを、急な会議の時はWeb会議といった具合である。
マイクロソフトでは、1対1の打ち合わせから大人数の会議まで広く活用しており、どのシステムを使うかは各自に任せている。導入にあたっては使用方法のトレーニングなども行った。
オフィスの多拠点分散や在宅勤務など、「場所にとらわれない働き方」を目指すというから、3種類の会議システムのうち、Web会議システムが最適かもしれない。また危機管理ツールとしても活用する予定だ。
・テレビ会議システム、電話会議システムを導入
テレビ会議システムと電話会議システムを導入しているのがヤフーだ。
多拠点での会議が増加したため採用したという。全社的には会議システム自体を「あまり活用されていない」(ヤフー)というが、テレビ会議システムでは旧アルプス社、電話会議システムでは旧オーバーチュアの部署など、特定部署のみ利用している。というのも、複数の会社を吸収合併してきたヤフーでは、合併前の会社で使っていた会議システムがそのまま使い続けられる傾向があるからのようだ。
・テレビ会議システムのみ導入
テレビ会議システムのみを導入しているのが、国内大手のある文具メーカー。
東京−国内地方間、東京−欧米の各都市間などで経営会議を行ったり、小さい文具をズームで見たりする必要性があったため導入した。導入を決めたのは海外のスタッフだ。Web会議システムは、テレビ会議システムほど鮮明な画像が得られないため、候補には挙がったが、導入には至らなかったという。
というのも、本来、高精細な画像を送ろうとすれば、帯域幅の広い通信回線が必要になる。インターネット回線を活用するWeb会議システムの場合、日本国内では問題なくとも、海外との通信をした時に画像がうまく映らなかったり、そもそも通信がつながらないこともあるからだ。
その点、専用線を利用したテレビ会議システムなら、価格は高くなるものの接続性は増す。ある程度安定して動画の送受信もできるである。
会議システムで、働き方まで提案する
今回紹介したどの企業も、テレビ会議システムだけは採用していた。また、たんなる会議の効率化にとどまらず、利用者のワークスタイルを考慮して会議システムを採用する企業もあった。
いずれにしても遠隔会議システムの活用は、利用者あってこそ。利用者にとってどのシステムが使いやすいのか。導入する会社では、どういった働き方を従業員に提案していくのか、といった点も採用時の指標になるだろう。
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