第20回 考えるためには“情報は邪魔” インプットを遮断しよう:実践! 専門知識を教えてみよう(3/4 ページ)
前回の記事で「量感を身につけるためには、目をつぶってイメージを広げてみる」ことが大事だと書きました。「目をつぶる」とはいったいどういうことなんでしょうか。
シチュエーションとアクティベーション
さて、イメージトレーニングをすることの意義は分かったとしても、実際にそれをやれなかったら絵に描いたモチです。いきなり、
- じゃ、イメージトレーニングやってみろ
と言われてできるかといえば、お察しの通りなかなかそうはいきません。そこで、イメトレをすることに慣れていない人に対しては、ある程度“補助線”を引いてそれができるようなお膳立てをしてやらなければなりません。
実はそのヒントになるのがシーン2の「土壇場ピッチング練習」でのコーチの「実況中継風トーク」です。この場面でのコーチの言葉をよく読むと、大まかに次の2種類に分けられます。
シチュエーション・フレーズ
どんな状況かを語る言葉。「相手は強豪、上位打線」「ぶんぶん振り回して」「一発くらうかもしれない」「呼吸が浅くなってきた」など。
アクティベーション・フレーズ
その状況における「行動」の判断または自覚をうながす言葉。「どうする? どこ投げる?」「バッターどうなった?」「マウンド外した」など
シチュエーション・フレーズはつまりS・C・AモデルにおけるS系の要素を働かせるための言葉であり、アクティベーション・フレーズはC・A系の要素を働かせるための言葉です。ちなみに、シーン1におけるコーチの言葉はまた別な種類のもので、下記のようになります。
ディレクション・フレーズ
特定の状況における「行動」を直接指示する言葉。「脇しめて」「もっとタイミング早く」など
「ディレクション」はAを「直接指示」する言葉であって、C要素がありません。一方、「アクティベーション」はCを経た上でのAを「引き出す」言葉であることに注意してください。
結局のところ、シチュエーションとアクティベーションを適切に組み合わせてやると、学習者は「イメージトレーニング」の感覚をつかむことができるようになります。これがつまり前回の記事でいう「メンタルモデルの操作能力」そのものなのです。
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