どう埋める? 企画と社員の「温度差」――ソフトバンク:「働きやすい」を形に イマドキの福利厚生(2/2 ページ)
従業員の定着率の強化を図り、子育て支援策を次々と打ち出すソフトバンクグループ。2007年の「第5子の出産祝い500万円」に続き、2008年も支援策を打ち出したが、従業員との間には温度差があるようだ。埋めることはできるのか――。
「仕事と時間のマネジメント」「心の病」に関心が集まる
一方、想定参加人数が60人のところ約90人も参加したセミナーもある。心の病を抱える家族が複数いる家庭、激務続きの仕事。2つの両立がテーマの講演「私は仕事も家庭も決してあきらめない」だ。こちらは11月21日の朝10時30分から開催された。
講演したのは、東レ経営研究所の社長、佐々木常夫(ささき・つねお)さん。「リーダーとは幼稚園のころに言われたことをちゃんとできる人」「仕事と時間のマネジメント」「切り捨てる事も大事」「部下の教育は実際にいる事柄・業務で行う」「プラス思考」「人の幸せは相対的なもの」という、ビジネスから人生全般に及ぶ佐々木さんの言葉が、参加者の印象に残ったようだ。
盛況の原因は、経営者の説くワークライフバランスは、メンバーの扱いを模索する管理職層や、人事担当者のニーズにマッチした。自殺未遂を繰り返す妻や自閉症の長男を抱える家庭の話は、自分自身や周囲に同様の人がいる社員のニーズにもマッチした。ソフトバンク総務部はそう分析する。
参加者の多くがソフトバンクテレコムの社員だったことも特徴的だった。ソフトバンクテレコムでは法人相手のビジネスも多い。「日ごろから法人や経営への関心が高いからではないか」と、担当者。
総務部では、参加率の結果を見て、「参加したいかどうかは、やはりテーマ次第なのかもしれません」と、結論づけた。これを踏まえ、今後のセミナーには、社員個人のニーズにマッチしたテーマを優先的に取り上げたり、 開催の時間帯を工夫するなどしていくという。
「参加者がやりたいこと」をそのまま実現したファミリー・デイ
1800人の定員に対し2200人の応募があった「ファミリー・デイ」も盛況だった。「家族の日」の11月16日、日曜日。ソフトバンク本社の5フロアを使って開催された、1日限りの“アミューズメントパーク”だ。
機関車トーマスの乗り物やクイズ大会、アニメ上映、パン作りなど親子で楽しめるさまざまな企画がある中、目玉は200人参加した「日本一に挑戦! 長〜い太巻き作り」。継ぎ目のない100メートルの海苔を用意し、この上に親子で具を載せて巻いていく、というものだ。挑戦は見事成功。すでに日本一の記録をデータ化するWebサイト「日本一ネット」に申請済みだ。
企画はすべて、主催者ではなく従業員からの応募をそのまま採用したという。「参加者がやりたいこと」を実現化したことが、イベントの人気につながったのかもしれない。
従業員は先入観を捨てることも必要?
さて、筆者を含め11月17日の朝の講演「家族のきずな〜あなたに会えてよかった〜」に参加した、ソフトバンクグループの社員たち。会場がいつも働いている同じビル内のためか、多くの人は会場にコート類や大きなかばんを持ってきていなかった。社員証のカードを首からぶら下げ、手ぶらか、せいぜいメモ書き用の手帳だけを手にふらっと立ち寄ったといった軽装である。
「ちょっと社内の打ち合わせに来た」。そんな気軽さで参加したら、意外な話を聞く機会が得られるのが社内セミナーの醍醐味だ。うまく活用すれば日常生活では得がたい「気づき」に出会えるかもしれない。
以前の記事で「社内イベントを成功させる5つの鍵」を紹介したが、これらは企画する側の鍵だ。参加する側も「お仕着せでつまらなそう」「対外的な対面のため、仕方なく開催しているのでは」などの先入観を捨て、少しだけ関心を持って福利厚生に注目してみると、企画する側との温度差がより縮まるだろう。
里親制度とは? (坂本さんの話より)
さまざまな事情で実親と暮らせない18歳未満の子供を、乳児院や養護施設などから一般家庭に迎え入れて育てる制度のこと。児童福祉法に基づいており、育てる親を里親、育てられる子を里子という。
坂本さんによると、里子になる子供たちは、実親の育児放棄や虐待などで心に深い傷を負っている。日常生活の中で、坂本さん夫婦が「信用してもいい大人」であることを子供に肌で感じてもらい、時間をかけて“親子”のきずなを深めていく。
「血のつながらない親子」「施設にいた子だからあの子は変」。周囲のそんな無理解や偏見で、坂本さん親子は冷たい視線を浴びてきた。「愛する娘が苦労ばかりする」と、里親に猛反対の両親とは疎遠になった。それでも「子供がいるだけで我が家は命に満ちている。子供は大きな喜び。だからやめられない」のが、坂本さんにとっての里親制度なのだ。
※里親制度については、坂本さんの著書『ぶどうの木』(幻冬舎刊)でも詳しく解説されている。
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