質問1 かかりつけ医って必要ですか?:現役医師がズバリ回答(2/2 ページ)
医師不足! 病院倒産! 医療崩壊! といった報道が後を絶たない今、どう病院と向き合えばいいか分からない――。こうした不安を軽減するため、患者からの素朴な疑問に、現役医師ドクトル・ピノコが医療現場のリアルな目線でお答えします! 全10回連載スタート。
メリットその1:迅速な診断が受けられる
メリットは主に3つあります。1つ目は、前述のように患者個人の特徴や嗜好(しこう)を良く知った、気心知れた医師が相手なら、あまり医師に気を使うことなく本音のやりとりができるということです。体調の不具合だって、わざわざ事細かに説明しなくても、よくその患者さんを診ている医師ならば迅速に判断しやすいわけです。
つまり、初対面の医師にかかるよりも無駄なエネルギーを使わずに済むし、より的確な診断や治療を期待できます。初対面では話せないようなちょっとしたことも、かかりつけ医と普段の信頼関係があればきちんと伝えられるでしょう。
メリットその2:高度医療機関との連携プレー
2つ目は、より高度な医療が必要と判断されるような病態の時に、かかりつけ医から専門の病院に紹介してもらうというルートがあります。もちろん、かかりつけでなくても別の病院に紹介状を書いてもらうことは可能ですが、かかりつけ医からの方がより詳しい情報も提供でしますし、普段の状態などもより把握しているわけですからスムーズにいくことでしょう。
例えば、手術や特殊な検査などは専門の病院でお願いして、回復してきたらまた普段のかかりつけ医のところに戻してもらうというルートもよくあります。これならかかりつけ医と専門の病院との間で患者の情報を細かく共有することができ、結果として患者にとってもメリットとなります。
メリットその3:たらい回しになるリスクが減る
また、最近話題の救急車がたらい回しされた問題についても、普段から患者の健康状態を良く知っているかかりつけ医がいれば、搬送先の病院を探すに当たっても何らかの手助けになることだってあります。救急隊や初めて運ばれる病院は、その患者のことを何1つ知らないんだもの。せめてもの情報を家族や付き添いの人から聞くのが精一杯。
しかし、「普段はこの医者にかかっています」の一言で、直接そのかかりつけ医に連絡し情報を収集することができるんです。普段飲んでいる薬や持病など、より正確に伝えることができるわけですよ。
このように、かかりつけ医を持つことのメリットをいろいろと熱く語ってきたわけです。もちろん、ここには書ききれないほどほかの利点もあります。ね、かかりつけ医を持って悪いことはないでしょ?
医師も人の子、全ての患者に「ベストな医師」はいない
あとは、どの医師をかかりつけにするかです。
これはもう、人対人の問題。全ての患者に対して「ベストな医師」なんていません。相性や好き嫌いもあるしね。これこそ、まさにお気に入りのキャバクラ嬢(あるいはホスト)を探すつもりでじっくり吟味してください。
まあ、できれば家や職場から近くて通いやすいに越したことはないですけどね。自分にフィットするドクターを探すなんてことを少しは楽しむぐらいの余裕があってもいいかも。「あー、今日もまたハズレだった」なんてね。時間に余裕がある人とそうでない人でも違うでしょうけど、なるべく自分が満足できる医師をぜひ探してみてくださいな。
次の質問「セカンドオピニオンって聞いてもいいんですか?」に続く――。
本日の処方せん
- かかりつけ医とは、普段から自分がかかりつけている医師(または医療機関)のこと。
- かかりつけ医は、患者の健康状態や病気について時系列で把握してる。
- 通院しやすい生活圏内で、かかりつけ医は作っておいた方がいい。メリットは主に3つある。
- メリット1:本音でやりとりができ、迅速な診断を下してくれる。
- メリット2:高度医療が必要な時、その医療機関と連携プレーしてくれる。
- メリット3:いざという救急医療時、たらい回しになるリスクが減る。
仁科桜子(ドクトル・ピノコ)プロフィール
女医。 医大生時代には体育会に属しつつ、某社キャンペーンガールや大手塾講師など数々のバイトをこなす日々を過ごす。 現在は、酒と体力だけには自信アリの外科系ドクターとして病院勤務。
ドクトル・ピノコ名義で「週刊ビジスタニュース」などにコラムを執筆している。2009年1月、仁科桜子(にしな・さくらこ)名義で『病院はもうご臨終です』(ソフトバンク新書)を発売した。
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