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「シンボリック・チャート」って何だ? セミナー導入部の6つのワーク(前編)プロ講師に学ぶ、達人の技術を教えるためのトーク術(2/3 ページ)

「つかみは大事」とよく言われるように、教育研修を始めるときの最初の数分の流れはその後のすべてを左右する重要なものです。2回に渡って最初の数分を構成するための6つのワークを紹介します。

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イントロを構成するための6つのワーク

 まずは個条書きで挙げると、この6つです。

  1. スタート&ゴールを決める
  2. シンボリック・チャートを用意する
  3. チャートの間をつなぐストーリーを作る
  4. 細かな文言の調整をする
  5. 対話ポイントを入れる
  6. 休憩ポイントを入れる

 少しイメージしやすいように、図にすると下記のようになります。

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図1:イントロを構成するための6つのワーク

 それでは1つずつ説明していきましょう。

「ゴール」の一言に心血を注ごう

 まずは「1.スタート&ゴールを決める」ですが、スタートとゴールはそれぞれ、

ゴール イントロが終わった段階で頭に刻み込んでおきたい一言

スタート 全員が容易に認識を共有できる一言

 となります。特に「ゴール」にどの一言を選ぶかは決定的に重要です。この話はイントロについて考えているので、全体で2日間のセミナーであっても、短ければ数分、長くても十数分程度の部分です。しかしその10分程度のイントロ部分で「ゴール」をきっちり決められるかどうかは、残りのすべてに影響します。ですからこの「ゴール」の一言は念入りに考えなければなりません。

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図2:イントロ部分の「ゴール」は残りすべてに影響する

 しかし、「ゴール」が大事だからと言っていきなりそこから話を始めてもうまく行かないことが多いですね。というのは、「ゴール」が画期的な話であればあるほど、「そりゃ違うだろう……(反発)」とか「この人何言ってるの? 意味不明……(理解不能)」といった反応を呼びやすいからです。「反発」にしても、「理解不能」にしても、いきなり冒頭でこういう印象を持たれるのはよくありません。

 そこでゴールとは別に、誰もが「ああそりゃそうだね」と同意するようなことをスタートに持ってきます。庄司さんの営業「チーム」作りセミナーの場合、スタートとゴールはこのようなものでした。

スタート 「腕利きの営業マンが欲しい」と多くの会社が思っています

ゴール 必要なのは、営業「チーム」を作ることです

 スタートでは営業マン「個人」を意識しているのに対して、ゴールでは営業「チーム」へと意識を変えています。何しろ「営業チーム作り」のセミナーなので、本論はすべて「チーム」の話なのですが、残念ながらその認識を最初から全員に期待することはできません。そこで、共通認識として同意を得やすい「個人」の話をスタートにしたわけです。

 スタートとゴールはいずれも「一言」に絞り込みましょう。特にゴールの一言はセミナー全体を通して何度も使うので、心血を注いで考えるべきです。

シンボリック・チャートを作る

 さて、スタートとゴールを決めたら、今度はその間をつなぐ「納得感のあるストーリー」が必要です。ところがこれが大変難しいのが普通です。セミナー講師経験の浅い人がよく陥る落とし穴もここにあって、

 ゴールの一言は決めた。

 ところが、いくら説明しても聴衆からは「なるほど! 分かった」という手応えを感じられない。焦ってさらに詳しく一生懸命説明しようとすればするほど、かえって聴衆の顔には消化不良感がただよい始めてしまう……


 といった事態に陥りがちなのです。人は自分の専門分野については豊富な知識経験を持っていますから、説明を増やそうと思えばいくらでもしゃべれてしまうものです。かといって聞く方がそれを理解できるとは限りません。それどころか講師がしゃべりすぎることで聞き手の理解が混乱してしまうことも多いのです。

 そこで、「納得感のあるストーリー」が欲しいわけですが、これが難しい。

 実はこのストーリー化の段階では、ある種の「シナリオライター」的な能力を必要とする場合があります。つまり、説明したいテーマに応じて、それにもっとも適したビジュアル(映像)とワーディング(言葉遣い)を選択し、創造し、組み合わせる能力ですね。

 そんなトレーニングを意識的に積んだことがある人はそうそう多くはいません。だからこれを独力でやろうとするのは難しいのです。わたしがコンサルを行う理由も主にここにあります。

 もしこの「スタートとゴールをつなぐストーリー」が簡単にできてしまって、実際のセミナーで試してもうまく行ったという場合はメデタシ、メデタシです。素直に喜んでしまいましょう。

 でも、どうもうまく行かない、なんとか改善したいがどうしていいか分からない、という場合は、

  • ストーリーをいくつかに分割して、分割したそれぞれを図解

 してみてください。この図解のことをわたしは「シンボリック・チャート」と呼んでいます。ストーリーの一部を「象徴的に表す」チャートなのでそう呼びます。

photo 図1

 ちなみに、わたしの場合はストーリーよりもシンボリック・チャートのほうを先に書いて、その間をつなぐようにストーリーを考えます。ですから図1では第2段階がシンボリック・チャート、第3段階がストーリー化、の順にしてありますが、実際にはこれはやりやすい方からで構いません(図解が苦手な場合は、口頭でしゃべる台本の形で「ストーリー」を考えてから、それを分割してチャート化してもいいでしょう)。

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