自分と意見が合わない人への接し方:マグロ船会議術(2/2 ページ)
創業20年のデコボコ水産がお中元商品として開発した「フナムシ寿司」の売れ行きがイマイチです。部長はテコ入れのための会議を招集しましたが、意見が対立して社員が出て行ってしまいました。こんなとき、あなたならどうする?
部長が分かるまで説得しましょう――20点
こちらの説得に、相手がいつでも納得してくれるとは限りません。あなたの判断が正しい場合もありますが、相手には相手の考え方があります。
得てして自分の意見を強く主張すればするほど、他人の意見の良さが見えなくなってくるもの。理屈で説き伏せようとすれば、相手は強情になり感情的に反発します。
そうなりますと個人間での戦争状態となり、非常に仲が悪くなります。毎日同じ建物で働くのですから、嫌いな人同士が顔を合わせることほど辛いことはありません。なので、相手が納得するまで説得を続けるというのは、長期的な視点で見れば、かなり危険な行為です。
部長に期待するのは止めましょう――80点
たとえ自分がどんなにいい意見を言っていたとしても、「会議のメンバーは、きっと自分の意見を採用してくれるハズだ」と期待をするのは止めたほうがいいでしょう。
確かに、いい意見を思いついたのなら、それが会議のメンバー全員に伝わるように、冷静に説明することは大事です。しかし、その後、自分の出した意見がメンバーに受け入れられるかどうかはそのメンバー次第です。
「みんなしょせん人の子だから、常にいい判断なんてできないよね」と思っておけば、自分の自信のある提案が受け入れられなくても、「まー、しょうがないか」で諦められます。
「人を信じる」というのは、一般的には美徳と思われがちですが、その反面、信じた相手がミスを犯すと、必要以上に腹が立ってしまうものです。言い方は悪いのですが、最初から人を信じなければ、うまくやってくれたときは、「すごい!」と思えますし、ミスをしたときは「しょうがないよね」で終わらせることができます。
強打者と呼ばれるイチロー選手でも、ヒットを打てるのは10打席に3回です。ビジネスにおいても、常にいい判断ができる人などいないと思っておいた方が現実的だと言えるのではないでしょうか。
部長の言う意見には、無条件に同調しましょう――30点
「意見対立は避けたい」という理由で、普段からメンバー全員の意見に同調していれば、確かに会議での争いは少なくなると思います。しかし、さすがにすべて言いなりでは自分の意見を持たない人というレッテルを貼られてしまいますし、会議の場が常にそれでは結局、決定権を持った人の意見が通りやすくなり、偏った意思決定になってしまいます。
ですから、やはり一度は「わたしは、○○だと思うんです」と、明確に自分の意見は伝えましょう。
逆に言えば、あなたの仕事はそこまでです。 そして、どの意見を採用するかは会議のメンバーの合意の上で決めることであったり、または意思決定者の上司の仕事であったりします。
「淡泊だな」と感じる方もいるとは思いますが、あまりに自分の主張を強くするのは、ある意味でそういった意思決定者の仕事を奪っているのです。
他人はコントロールできない
マグロ船に乗せられるまでは、船に乗ればマグロはたくさん釣れて、船の上でピチピチ暴れているものと思っていました。しかし実際見たものは、仕掛けたたくさんの釣り針うち、マグロがかかるのは100針に1匹という、かなりの低確率でした。
そこで漁師に、「これだけ釣れないと気疲れしませんか?」と聞いたことがあります。そうしたところ、「俺たちはできることはすべてやった。針にマグロがかかるかどうかは、興味がない」と答えが返ってきました。
現在のマグロ漁のやり方は、1300年前から受け継がれている最も効率のいい方法だそうです。ですから、人間ができるのは、その漁法を忠実にやることだけであって、マグロが釣れるかどうかまでは、人間はコントロールできないし、コントロールをしようとすると無駄に疲れるだけと言っていました。
会議を含め、すべての人間関係でも、コントロールをできるのは自分のことだけ。基本的には、他人はコントロールできないものなのかもしれません。
このことを、今回のテーマであった「意見対立が起きたときの対処法」に当てはめますと、以下の2つを心がけましょうということになります。
- 自分の持っている意見は、明確に主張する。
- 自分の意見が採用されるかどうかについては、こだわり過ぎない
今回のコラムは、非常にわたしの主観性が高い内容になっています。ですから、あなたが違う意見を持っていても全然構いません。
これが相手に分かってもらおうとしない、「いい意味での相手に期待をしないこと」だと思うのです。
筆者紹介:齊藤正明(さいとう・まさあき)
ネクストスタンダード代表。1976年東京生まれ。北里大学水産学部卒。大学卒業後、民間企業の研究所に入社し、「マグロの保存剤」の開発に携わる。
入社2年目のとき、上司から「マグロの保存剤の開発を成功させるには、お前は一回マグロ船に乗ってこい」と理不尽な命令をされるも、断りきれずマグロ船に乗せられる。
嫌々乗ったマグロ船であったが、人間関係がギスギスしやすい閉ざされた空間だからこそ、素晴らしいコミュニケーション術がたくさんあり、笑顔で働く漁師たちに感銘を受ける。
マグロ船を降りたあと、漁船での体験を元にファシリテーション術を自社に導入し成功。その後独立し今に至る。代表著書に『活きのいい案がとれる!とれる!マグロ船式会議ドリル』(こう書房)、『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』(マイコミ新書)がある。雑誌などの掲載多数。
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