これだ! というヒラメキを得たければPCから離れてみよう:説明書を書く悩み解決相談室(3/4 ページ)
私はよく考え事をするときに付せんを利用します。PCの描画ソフトを使って描くこともできますが、やはり手書きの方が大量の情報を一覧しつつ試行錯誤することに向いています。このような場合は一度PCを離れて論理構造を整理してみてはいかがでしょうか。
坂口 開米さんがいつもやってるのってこういうことなんですか?
開米 そういうことです。よくあるのが「主たるストーリー」と「その捕捉、注釈」を分けてみること。
坂口 主たるストーリーというのは「AについてBならばCが起こってDになる」と言ってたあの部分のこと?
開米 そう、それです。主たるストーリーとその注釈って、文章で書いてあると区別しづらいんですよ。書いてる本人は分かっても読む方は大抵書き手よりも知識も乏しいから分かりにくいのが普通です。
坂口 確かに、そうですね……。
開米 だから、付せんを使っていったんバラバラにしてから自分でそのストーリーを探します。
坂口 付せんの方がいいのかなあ……でも、PCでWordのようなアウトラインプロセッサを使っても似たことはできますよね。
ごちゃごちゃした情報こそ手書きで整理を
という坂口さんの疑問は最もな話で、……というより私自身が20年ぐらい前は「手書きをしたくないからPCで使えるアウトラインプロセッサを探していたものでした。アウトラインプロセッサは特殊なワープロのようなもので、文書を階層化されたパーツの集合として扱い、階層やパーツ単位で移動したり表示・非表示を切り替えたりして、「考えをまとめていく」作業に適したソフトウェアです。
今どきのワープロソフトでは類似の機能を備えている場合が多く、文章だけでなく図形をベースにしたものもあります。さらにはアイデアプロセッサという名前で呼ばれている場合もあります。
私にとっては手書きよりもキー入力の方が速いですし、どのみち作った文書をメールで送るなら最初からPCに入力しておく方が二度手間になりません。
ところが、その私が今では「本当に訳が分からないときには手書き」を推奨しています。
ある程度方向が見えている時には最初からPCでカチャカチャ打ってもいいのですが、「まったく訳が分からない、五里霧中」のときにはなぜか付せんに手書きというアナログメディアを使うとストーリーが見えてくることが多いんですよね。そういう経験が一度や二度ではありませんので、手書き推奨派に転向した次第です。
坂口 そりゃまた不思議ですねえ……。
開米 もしかしたらですけど、手書きをするときの方が、書いたキーワードがよく頭に入ってるような気はしますよ。
坂口 ああ、そうなんでしょうね。そうやって情報を頭に入れた上で「ストーリーを自分で探す」んですか。
開米 そうです。やってることはそれだけですから、特に何か「決まったやり方」があるわけじゃありません。「これだ!」というストーリーが見つかるまで、執念で試行錯誤ですよ、試行錯誤。
坂口 えっ、そうなんですか? もっとスマートにやってるかと思ってました。
開米 スマートってなんですかスマートって(笑)
坂口 いやあ、開米さんの書くものっていつもロジック明快だから、何かすごい論理構成法があるのかなあ、と思ってたんですよ。
開米 ロジカルライティングの手法って一応ありますけどね。
坂口 そうそう、そういうのを覚えて使えばロジカルになりそうですよね。
開米 まあ、付せんっていうのはロジカルライティングにも対応しやすい方法ではありますよ。よくあるのがピラミッドストラクチャーとかロジックツリーとか言われてる、枝分かれ状に論理構成する方法がありますけど、それが必要なら付せんをこう並べればいいだけですし。
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