ヤマト運輸に学ぶ「見えないコスト」に着目する術:トップ1%の人だけが実践している思考の法則(1/3 ページ)
宅配システムが高度に発展した現在の日本では、配達時間を指定できるサービスはもはや当たり前。しかし当時は、コストが掛かるものとして猛反対を受けていたのです。
成功する一握りの人々だけが実践する、共通の「思考の法則」を知るには、いったん私たちが常識だと考えてきたルールをリセットする必要があります。そして、彼らの行動や考え方に注目し、そのエッセンスを吸収して、その根底にある思考のサイクルを身に付けることが重要です。
成功者はみな、次にあげる5つのビジネスプロセスを何度も、高速回転で循環させています。私は、キーワードとなった5つの英単語の頭文字をとって「5Aサイクル」と呼んでいます。
- 顧客の抱える問題の「認知」(Awareness)
- 問題解決のための従来と異なる「アプローチ」(Approach)
- アイデアのスピーディな「実行」(Action)
- 仮説と実行結果の差異に対する「分析」(Analysis)
- マーケットニーズに合わせた柔軟な「適応」(Adjustment)
さて、ここで問題です。
【問題】解答例にならって自分なりに考えてみましょう。
- ある地域で配送業務をしているあなたの会社。最近、顧客から、時間を細かく指定して配達してほしいとの要望が増えてきた。確かに顧客にとっては都合がよいが、顧客に合わせることで無駄に配達回数が増えるのではないか? 顧客要望に応えるべきかどうか悩んでいるが、どうしたらいいのだろうか?
解答例A
- 顧客の要望とはいえ、何度も顧客の指定時間に出動するのはコストが増える。コストの回収ができる荷物量になるかどうかで判断すればいい。
解答例B
- 顧客が指定した時間に確実に配達できるなら、必ずしもコスト高にはならないのでは? むしろ、ムダ足を踏む数が減れば、コスト安になるのではないか?
宅配便の「見えないコスト」に着目したヤマト運輸
宅配システムが高度に発展した現在の日本では、配達時間を指定できるサービスは、珍しくはありませんよね。サービスは普及してしまえば、当たり前のことに思えますが、それが存在しない時代にはそのニーズに気が付きにくいもの。本当に人間が求めるぜいたくや利便性に限界はないんですね。
ところで、1976年にクロネコヤマトの生みの親であるヤマト運輸の元社長、小倉昌男氏が、周囲の猛反対を押し切って国内初の宅配便サービスを成功させたときにも、上記と同じ「顧客の配達時間指定の要望に応じるべきか」議論が巻き起こりました。普通に考えると、余分に配達回数が増える分、無駄なコストが増えそうに思えるからです。
しかし、実際には「見えないコスト」がもともと存在していました。それは、配達員がピンポーンと呼び鈴を押しても、留守で誰も出てこないことによって生まれるロス。配達員は何度も荷物を持って建物内に入り、呼び鈴を鳴らし、また不在票を記入してポストに投函して荷物を持ち帰らなければならない。これは、大変な見えないコストです。
もし、配達員が留守宅を回るために要した時間を、確実に配達する時間に当てることができたとしたら、利益を上げられたことになります。
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