シトリックスが日本で「GoToMyPC」提供を本格化――働き方や生産性はどう変わる?
米シトリックス・オンラインが、リモートPC操作サービス「GoToMyPC」の日本での本格的な商用提供を開始した。GoToMyPCでは何ができるのか。また、日本においてどのようなユーザーをターゲットにしているのか。発表に合わせて来日した担当者に聞いた。
米シトリックス・システムズといえば、日本では仮想化技術の「XenDesktop」や「XenServer」で有名だが、グローバルではリモートアクセスやコラボレーションサービスのSaaS(Software as a Service)プロバイダーとしても知られている。
同社のオンラインサービスカンパニーであるシトリックス・オンラインでは、これまでサポートを含む商用サービスを日本では展開していなかった。この5月8日に複数の日本のパートナーを経由して、同社のサービスの1つである「GoToMyPC」の提供を開始すると発表した。(参考記事:KDDI、米シトリックスの遠隔PCサービス「GoToMyPC」国内提供を開始)
ビジネスユーザー向けのリモート接続を提供する「GoToMyPC」
GoToMyPCは、インターネットを通じた「リモートPCアクセス」をサービスとして提供するものだ。ユーザーは、外出先や自宅などの遠隔からPCにエージェントソフトウェアをインストールしておけば、他のWindows PC、Mac、スマートデバイス(iOS/Android)といったさまざまな端末から、そのPCのデスクトップを呼び出し、操作できるようになる。
従来、こうしたリモートPCアクセス(リモートコントロール)は、システムの運用管理者が遠隔地からデータセンターにあるサーバを操作したり、サポート担当者がユーザーのPC操作を助けたりといった用途に多く使われていた。実際Windowsにも、そうした用途で利用するための「リモートデスクトップ接続」というアクセサリが標準で用意されている。
「GoToMyPC」の特徴は、こうしたリモートPCアクセスの機能を、より一般的なビジネスユーザーが業務のために使うものとして拡張している点だ。そのために、特に「セキュリティ」や「アクセス権限の管理機能」といったものが充実している。GoToMyPCの中継サーバでは、ユーザー認証や、システム管理者によるアクセス可能なデバイスの設定、パーミッションの設定などを集中的にできるようになっている。
例えば近年、外出の機会の多い営業担当者に対してノートPCの代わりにスマートデバイスを支給し、ワークスタイルを変えたり、生産性を向上させようといった業務改革の取り組みが増えている。また、従業員が自宅や私物のデバイスを使って業務を行うことを認めるBYODの取り組みについても、関心が高まっている。
こうした場合にGoToMyPCを導入すれば、ユーザーに「社外のデバイスから会社にあるPCのデスクトップを操作させる」という形で、リモートアクセスの環境を提供できる。もちろん、ファイルダウンロードの可否や参照可能な情報の設定などは、管理者側で任意に設定できる。VPNなどへの追加投資を必要とせず、インターネット接続さえできれば、こうした環境をすぐに構築できる点もポイントだ。
日本でのパートナーは「KDDI」と「アセンテック」
GoToMyPCの日本展開パートナーは、KDDIとアセンテックの2社だ。前者は通信事業者であり、後者は企業向けのシンクライアントソリューションなどで実績のある企業である。
KDDIでは、「KDDI GoToMyPC」という名称で、主に中堅中小規模企業をターゲットとしたソリューションメニューの1つにラインアップする。KDDIの担当者は、「企業での導入が急速に進んでいるタブレットやスマートフォンといったデバイスや、MDM(モバイルデバイス管理)などと組み合わせた汎用的なソリューションとして、幅広い業種や規模の企業に提案を行っていきたい」と話す。
発表に合わせて来日した、シトリックス・オンラインでストラテジーアンドビジネスディベロップメントバイスプレジデントを務めるマイク・ムッソン(Michael Musson)氏は、KDDIとのパートナーシップについて「KDDIは、オンラインサービスを展開する上で必要なボリュームとクオリティ、そしてユーザーベースを備えている。サービスプロバイダーとして、その市場やユーザーについての専門的なノウハウに長けており、オンラインサービスを日本においてスピーディーに展開していく上で優れたパートナーだと考えている」と話す。
ムッソン氏は「特に高いセキュリティが求められる情報を扱う企業において、GoToMyPCの提供するリモートPCアクセスの環境はメリットが大きいだろう」という。実際に海外では、法律事務所における同製品の導入事例があるそうだ。弁護士がオフィスのPCで管理しているクライアントの情報、事件の情報に対し、裁判所などの外出先からアクセスために利用しているという。通信経路の暗号化に加え、アクセスしてくるデバイスやユーザーに対する権限管理を集中的に行える機能があるからこそ可能になる利用形態だろう。
シトリックスでは、GoToMyPC以外にも、ソーシャルコラボレーションツールの「Podio」などをはじめとした、さまざまなオンラインサービスを展開している。今のところ、他のサービスの日本での提供は予定していないとのことだが、ムッソン氏は、今後の日本市場の変化に合わせて、より本格的な展開もあり得ることを示唆した。
「日本においてもモバイルやオンラインサービスを企業で本格的に活用していこうという気運が高まっており、機が熟したと感じている。モバイルの導入や、それに伴うワークスタイルの変革が進んでいくようであれば、シトリックスのSaaS事業における日本での売り上げシェア目標を、ワールドワイドの5〜10%といったあたりにまで引き上げていくことも十分に考えられる」(ムッソン氏)
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