たった一言で信頼を失う:一撃「超」説得法(1/2 ページ)
言葉には「効果的な説得によって、相手の心を動かす」力がある一方、「決定的なミス」の一言によって自分の能力のなさを暴露してしまうことがある。
集中連載「一撃『超』説得法」について
本連載は2013年4月12日に発売した『「超」説得法 一撃で仕留めよ』(講談社刊)から一部抜粋しています。
出版界の最前線で、100万部突破をはじめ数々のヒット作品で多くの読者の心をつかんできた野口悠紀雄が、成功する説得の要点を大公開。
「たくさん投げるは人の常。一撃突破は神の業」「ドラッカーを読むより聖書を読もう」「必要なのは、正しさでなく、正しいと思われること」「うまく命名できれば千人力」「悪魔の方法から盗めないか?」など、全11章で説得までの筋道を、順を追って分かりやすく解説。
説得の理論、相手の心のつかみ方とそのタイミング、ネーミングや比喩の使い方、やってはいけない説得法まで、具体的事例を交えながらビジネスシーンで活用できるノウハウを伝授する。
- 筆者インタビュー:誰でも実践できる――野口悠紀雄に聞いた「超」説得法
前回までで、「効果的な説得によって、相手の心を動かす」ことを解説してきた。これに対して「負の一撃説得」というものもあることを今回は述べておこう。
それは、不適切な一言によって自分の能力のなさを暴露したり、信頼を喪失したり、相手に悪印象を与えたり、反感を持たせてしまったりすることだ。つまり「決定的なミス」という一撃を放ってしまうことである。
「負の一撃説得」とは?
例えば新聞の場合には、1面トップでの誤報だ。
閣僚が公的な場で失言すれば、負の一撃になる。注意すれば避けられるにもかかわらず、民主党内閣の閣僚にはこれすらできずに能力のなさを一撃で示した人が、あきれるほど多かった。一番最後の例は「北朝鮮のミサイルは早く打ち上げてほしい」と言った官房長官だが、それ以外にも山ほどの実例があった。
「民主党には政権を任せられない」と国民が判断し、2012年12月の総選挙で民主党が惨敗したのは、当然と言えば当然だ。
われわれの日常生活でも、ネガティブな一撃をうっかり放ってしまい、知らぬ間にマイナス点を付けられていることは思っているよりずっと多い。親しい間柄だったのに(あるいは、それが故に)何気なく発した一言が相手の心に修復不可能な深い傷を与えてしまうこともある。しかも、負の一撃を発した当人がそのことに気付いていない。
私は次の2つの場合には、無条件に「アウト」と判定している。
- 私の名前を「野口悠紀夫」と誤記してある場合。名前を間違えるのは、私のことはどうでもよいと考えている証拠だからだ。間違えている本人にその意識がなく、単に誤記された名簿を機械的に使い続けているだけだとしても、そうである。
- 「さらなる」という表現が用いられている場合。「さらなる」という日本語は誤りである(詳しい説明は、拙著『「超」文章法』(中公新書)の第6章を参照されたい)。これを平気で用いている人は、文章についての気遣いがないことを暴露している。そうした人の書くものは信頼できないと考えて、間違いない。
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