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なぜ、人は悩むのか? プラス思考が難しい理由仕事に負けない、頭と心の整理術(1/2 ページ)

人は生まれてからこれまで触れてきた情報を基に信念・価値観を作り、それによって感情や気持ちが生まれています。信念・価値観と目の前で起きていることのギャップに悩まず、自分自身との気持ちに向き合うことも大切です。

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 不安、怒り、悲しみ、不満……。私たちは仕事の中で毎日さまざまな感情を抱き、悩みます。コミュニケーションの具体的な話をする前に、「なぜ、人は悩むのか?」について考えます。

編集部からのお知らせ

職場で起こっているさまざまな問題を取り上げながら、メンタルを整えて「自分にとって働きやすい職場」を作っていくヒントを記したのが、『イラッとしたときのあたまとこころの整理術―仕事に負けない自分の作り方』(竹内義晴 著)です。本連載では、同著の一部を加筆・修正し、掲載しています。


人はギャップがあると悩む

 「なぜ、人は悩むのか?」

 ……テーマが壮大で何だか哲学的ですね。この問いの答えを哲学的に深く考えるのも楽しいのかもしれませんが、私はとてもシンプルに考えています。

 「“目の前に起こっている出来事”と“自分が大切にしていること”との間にギャップがあるとき、人は不安、怒り、悲しみ、不満などのネガティブな気持ちを抱き、悩む」

 “自分が大切にしていること”をもう少しかみ砕くと、「自分が正しいと信じていること」「○○であったらいいなと思うこと」「○○すべき」と思うことなどです。これらのことを信念や価値観とも言います。

 ネガティブな気持ちを抱くまでのプロセスを図に示すと次のようになります。


  1. 「目の前で起こっている出来事」を、目や耳などの五感によって情報を得る
  2. 「目の前で起こっている出来事」と、「信念・価値観とを比較する
  3. 出来事が信念・価値観通りなら「これはポジティブな出来事」、そうでなければ「これはネガティブな出来事」と解釈し、意味付けをする
  4. その反応としてネガティブ、またはポジティブな感情を抱く

 ネガティブな気持ちは「本当はこうありたい」「本当はこうあるべき」というような、信念・価値観があるからこそ抱くものです。言い方を変えると「目の前で起こっている出来事」そのものはネガティブでもポジティブでもありません。

 例えば、分かりやすい例がお金です。お金そのものは数字が印刷されたただの紙や金属なので、それ自体に意味はありません。それに対し、私たちはいろんな意味を付けます。「お金は大切なものだ」「お金がないと幸せな暮らしができない」「お金を持っている人は偉い」「お金があれば異性にモテる」などのようにです。

 このような、さまざまな解釈や意味を付けているのが信念・価値観です。信念・価値観が「目の前で起こっている出来事をどう捉えたか」によって、出来事がネガティブなのか、ポジティブなのかを決めるのです。

 もちろん「感情のすべて」というのは少し乱暴かもしれません。例えば自然の素晴らしい景色を見て美しいと感じたり、目の前に急に車が飛び出してきたときに「ドキッ!」として冷や汗をかいたりするような、人間の本能が感情やネガティブな気持ちを生むこともあるでしょう。

 しかし、もし私たちが何かしらの信念・価値観を持っていなければ、ネガティブな気持ちの多くは抱けないのではないかと思います。

ネガティブな気持ちの背景にあるもの

 信念・価値観は次の2つに大別できます。

 「○○でありたい」――自分にとって本当に大切なもの

 「○○であるべき」――自分の行動を律するもの、相手に行動の変化を要求するもの

 「○○でありたい」は自発的で理想的、温かさがあり、愛情あふれる母性的な印象があり、「○○であるべき」は社会的で知性的、理性で感情をコントロールするような、やや強制力を持った父性的な印象があります。どちらも重要な信念・価値観です。

 例えば次のようなネガティブな気持ちの背景には、次のような信念・価値観があると考えられます。

信念・価値観の例
ネガティブな気持ち 信念・価値観
「○○でありたい」
信念・価値観
「○○であるべき」
将来が漠然と不安 安定した暮らしがしたい 大きな組織に入って、安定した収入を得るべき
しっかりとした目標を持っておくべき
何かしらの仕事をしていないと不安になる 私は行動的な人でありたい
早く成果を出したい
行動しないと結果は出ない
働かざる者食うべからず
一生懸命働くべき
家族のことを思うと仕事をやめられない 子どもに幸せになってほしい 男は一家を守るべき
上司が評価してくれないと感じ、不満を持っている 私は周囲から評価される人でありたい 上司は部下を正当に評価すべき
上司がいつも叱咤し、つらい 私は毎日楽しく働きたい 上司はポジティブな言葉をかけるべき
同僚が自分を避けている感じがする 私は周囲から慕われる人でありたい 周囲の人を気遣うべき
信頼される人間であるべき
中間管理職で1人孤独だ 仲間と楽しく働けるチームを作りたい 中間管理職はリーダーシップを発揮し、チームをまとめるべき
部下が自発的に動いてくれず、イライラする 1人1人が活躍できるチームを作りたい 部下はもっと自分から動くべき
目上の人をもっと敬うべき
部下を信頼できず、仕事を任せるのが不安 仕事の品質をベストな状態に保ちたい 私は価値ある人であるべき(部下に仕事を任せると私の価値がなくなる)

 ここに挙げたのは一例ですが、これらの信念・価値観が満たされていないとき、私たちはネガティブな気持ちを抱くのです。ネガティブな気持ちの背景には、自分でもあまり意識していない何かしらの「○○でありたい」「○○であるべき」があります。

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