「永久ベンチャー」で有り続ける――南場智子氏、だからこそDeNAは強い:企業家に聞く:南場智子氏【前編】(3/3 ページ)
DeNA創業者で、現在は取締役としてDeNAの経営に携わる南場智子氏。6月に出版した『不格好経営―チームDeNAの挑戦』で驚くほど赤裸々に失敗談もつづっている。南場氏が本書に込めた思いを聞いた。
「永久ベンチャー」で有り続ける
まつもと なるほど。変化を続けてきたDeNAですが、創業時だけでなく事業の拡大や重心の置き方を変え続けてきましたように思えます。昨今、日本でもイノベーションの重要性や、それを生み出すベンチャー育成が叫ばれています。本書では「永久ベンチャー」という言葉が度々登場しますが、DeNAでそれが可能だったのはなぜなのでしょうか?
南場 社内に対しては「永久ベンチャー」をはじめとするDeNAの考え方を伝えていく、というのが基本です。しかし創業者が本にまとめたからといって、それだけでうまくいくものではありません。個々人が仕事をする上で――何を大切にし徹底するか、どんなスピード感で行うか、どういう約束(コミットメント)が、どんなメンバーで遂行されるか、どこでどう意思決定がなされるべきか――といった内容で形作られるものが圧倒的に大きいはずです。
まつもと 多くのベンチャーにとって避けて通れない道ですが、DeNAも創業から数年間はオークション事業で先行するYahoo!に打ち勝つことができず、資金繰り的にも苦しい時期が続きました。そういった脅威に対して経営者の立場でどう折れずに向き合っていったのでしょうか?
南場 本でも正直に述べていますが、「敗北感」がありましたね。もっと冷静に、あるいは客観的になっていたら、もしかしたら止めていたかもしれません。でも多くのベンチャーが創業後数年はそうであるように、一種の熱狂の中に私もチームもいました。「こんなにすごい仲間が集まって、全力でコミットしているんだからうまく行かないはずがない。これでうまく行かないなら世の中に成功なんてものはない!」と。それに次々といろんな事が起こる中で冷静になるも何もなかったですね。
その状況を乗り越えられた今だから、ポジティブに振り返ることができますが、それが良かったかどうかというのは、結果論に過ぎません。とはいえ、その熱狂が続くことで、モバオクが生まれ、そこからモバゲーが生まれ、結果的に会社を成長させることができたのだと思います。
ネットオークションからショッピング、そしてソーシャルゲームへ――。DeNAのたどってきた道のりは外から見ると一直線ではないように見える。しかし南場氏が「熱病」とも呼ぶ熱気の中、インターネットサービス事業の成長に向けた取り組みが続いていた。その過程が『不格好経営―チームDeNAの挑戦』では赤裸々に語られている。そして南場氏が復帰した今、DeNAは「グーグル越え」を合言葉に、世界ナンバーワン企業への進化を目指す。
インタビュー後編では、南場氏が現在力を注ぐグローバル展開や、そこで求められる資質などを聞く。
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