若者の「習っていません」発言に40代以上が「やる気がないのか?」と思うワケ:ひといくNow!―人材育成の今とこれから―(2/2 ページ)
OJTで仕事を覚えた人が大半の40代以上は、若者が言う「習っていないから知らない」発言に受け身な印象を持ちます。一方で若者がそうした発言をするのには、ある社会要因が関係しているようです。
若手が「習っていません」という理由
一方、当事者の若手側に視点を移すと、彼らが「習っていない」というのは、ムリもありません。というのは、大きく分けて2つの要因があるからです。
1つは、採用環境の変化。20年前は、就職活動期に「会社が人材育成に投資しているか」を気にする人はほとんどいませんでした。しかし今は、採用時に「人材育成制度があるか」をチェックする人が増えています。そのため、採用情報には必ずと言っていいほど、人材育成について紹介があり、「基礎から丁寧に指導します」「OJTでしっかり仕事を身に付けていただけます」などの文言が添えられています。彼らにとってみれば、生命保険会社を例に挙げて紹介した、システムにのっとった人材育成こそ、イメージするものでしょう。
もう1つは、仕事を覚えにくくなった環境にあります。
IT化が進んだことにより、多くの仕事はパーソナルになっています。そのため、人材育成会社の例で紹介したようなOJT中心の育成は、上司や先輩の仕事を見て覚えることがしにくく、機能しないと言えます。
また職場は余裕がない上に、年の近い先輩も少ないため、ちょっとしたことなどの相談や質問もためらわれます。
結果、さまざまなことを1人で抱えた上、指示者の意向とズレが生じたアウトプットを出します。さらに評価されない経験を1度でもすると、そこで気持ちが萎縮します。気持ちの萎縮が起こると、それからは自己防衛を始めます。よって「習っていない」という表現をする必要が出てくるのです。
彼らが「習っていません」と言う時は、何の他意もなく素直に言っている場合と、ミスや失敗をしたくないという自己防衛心から言っている場合があるわけです。
「やる気がないのか?」と思った時は
ここからは、若手に「習っていません」と言われ、「やる気がないのか?」と思った時のアプローチ方法を紹介します。
私は最初、彼らに「やる気がない」ことを前提にアプローチしました。そのため「やる気を出すためのアプローチ」に必死になって取り組みました。コミュニケーションを取る頻度を増やしたり、褒めたり、叱ったり、動機付けをするための方法論を試したり、仕事の心構え(自立姿勢)などを伝えていました。
しかしコミュニケーションを取っていると、何となく違和感を感じます。彼らは伝えたことはしっかりやってくれるし、ミスや間違いもとても少ないです。私が20代のころよりも、はるかに優秀とさえ感じます。
どうやら、やる気がないのではないのです。
そこで次に試したのは、「仕事の覚え方」を教えることでした。私が人材育成会社時代にやっていた方法の一部を伝えることです。
例えば、仕事は全体像を見せて、その中で今取り組んでいる業務の位置付けを伝え、その前後も考えながら仕事をすること。顧客先に同行する際には、議事録を書いてもらい、その議事録の中で分からない用語を確認し、それを調べる方法を教えること。
1つの仕事が終わったら、課題を見つけてその改善策のアイデアをいくつか出してもらい、やってみてもらうこと。
などです。
すると「習っていません」という表現は使わずに、「ここはどうしたらいいですか?」や「自分としてはこう考えてみたんですが」という表現に変わっていきます。
その方法が上手くいっているかどうかを測る目安として、私はメンバー1人1人の表情が明るくなっているか、口数の少なかった人の口数が増えているか。こんな点をポイントに置いています。
まとめ
紹介したアプローチ方法は一例にすぎませんが、「習っていません」と言われ「やる気がないのか?」と頭をよぎった時の参考になれば幸いです。
※この記事は、誠ブログのひといくNow! -人材育成の今とこれから-:「習っていません」と言われると、「やる気がないのか?」と40代以上が思うワケより転載、編集しています。
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