頼み事には「なぜなら」を付ける:あなたの話の9割は相手に伝わっていません(1/2 ページ)
あなたは何かを誰かに頼むとき、断られず、快く引き受けてもらえる話し方をしているだろうか? 理由はハッキリしなくても「なせなら」が付くと、人は納得しやすい傾向がある。私たちは、どのような行動にも「なぜ?」という理由を無意識に求めているのだ。
集中連載「あなたの話の9割は相手に伝わっていません」について
本連載は、松本幸夫氏著、書籍『あなたの話の9割は相手に伝わっていません』(アスコム刊)から一部抜粋、編集しています。
「自分が思うのと、全然違うかたちで伝わってしまっていた」「丁寧に話しているつもりなのに、相手を怒らせてしまった……」そんな経験は、誰でも1度はあるのではないだろうか。
実は、その原因の多くは相手にあるのではなく、自分自身が作ってしまっているのだ。そういう人はこれからも相手を怒らせたり、自分の言いたいことを伝えることができないままだろう。
本書では「相手に伝わらない」あるいは「相手を怒らせる」などの、伝わる話し方ができない人の問題点を指摘し、具体的にどんな言葉で話せばいいのかなど、今すぐに簡単に出来る改善策を詳しく解説。話し方で損をしてきたと悩んでいる人、また、相手にもっと気に入られたいと思う人にも役に立つ1冊だ。
著者プロフィール:
松本幸夫(まつもと・ゆきお)
執筆とセミナーでの講義をメインに活動するコンサルタント。スピーチドクター、NPO法人認定日本プレゼンテーション協会認定マスタープレゼンターの肩書きも持つ。NHK、その他テレビへの出演実績多数。
セミナーは好評で、全国で年間200回以上も行う。リピート率は高く、92%を超えている。
話し方以外のメソッドも定評があり「最短でできる人をつくる」をモットーとして、人材育成をはじめ、タイムマネジメント、交渉、プレゼンテーション、営業術など、さまざまな分野の研修や執筆活動を行っている。
アメリカの実験で、コピーを取りに並んでいる列の先頭に割り込んで「先に取らせてください」とやると、なんの理由もない場合にはほとんどノーと言われるという。当たり前だろう。「後ろに並んでください」と言われるのがオチだ。
「スミマセン、2時の会議に使うので急いでいるんですが……」
「部長が急に使いますので、なんとか先にお願いできませんか」
というように理由付けをすると、過半数が「ハイ、どうぞ」と譲ってくれるのだという。しかも「会議」「上司から」「急ぎ」のように理由が正当でないときでも、カモフラージュして「理由」であるかのように言うと「どうぞ」となったという。
アメリカ人の典型的な論理として、この「WHY――BECAUSE」を身につけることから、英語を学ばせるという英語の先生もいる。
「先に取らせてもらえませんか? なぜなら、ちょっと先に取りたくて……」
「スミマセン、いいでしょうか? というのは、あの、急いでいて……」
と、はっきりしなくても“なぜなら”が付くと、人は納得しやすい傾向がある。
理由があると、まずは納得するしないにかかわらず、人は「許しがち」なことは覚えておこう。
また、行動に理由づけがあると「しっかり考える人」と思われることも忘れてはならない。
「なぜ、あの人はあのような行動をとるのだろう?」と人に疑問を感じさせる行動をするとき、頭のいい人、少なくとも頭のいいと思われる人は、その行動に理由をつけるのである。もちろん、行動をしたあとに「なぜなら」というのもある。また、やり方としては“理由を先に言う”という形もありだ。「〜なので」をくっつけて話をすると、とても説得力は高くなる。
仮に、上司が頼み事をする場合を考えてみよう。「悪いけど、コピーを15枚とってくれるか」という小さな依頼でも、訳が分からないと「なんでオレが……」と思うものだ。
「君は要領よくやってくれるから、会議用の資料15セット頼む」
「会議で緊急に使いたいんだ、君は今日、私と一緒に参加するから頼む」
「その内容で発言するし、君も同じ部で出席だから、目を通したほうがいいと思うよ。目を通しついでにコピーを頼む」
と、言い方はさまざまだが、なんらかの理由があれば「ただのコピー取り」とは思われないだろう。
このへんは、コミュニケーションスキルにもなってくる。それは「頼み事には理由をつけて言う」ということになる。これはコピーとりに限ったことではない。
「〜ので」と理由を付けて、だから頼むというのは引き受けやすい言い方になる。また、理由が付けられる人は相手の共感を得ることができるし、「ちゃんと考えて行動する頭のいい人」という評価を付けてもらえる。
褒め言葉に理由を付けると、相手は納得しやすい
同様に、褒め言葉にも理由を付けるのもいい。「いいネクタイですね」「いいカバンですね」などという褒め方は、お世辞っぽくなる。なぜなら「なぜ褒めたのか」がないので、褒められた側が納得しないのである。
「いいネクタイですね。先程Dデパートに行ったら、春の新作として展示されていた柄だったと思うんですが。さすが流行に敏感ですね」
「マーク・ジェイコブスですか〜、素敵なカバンですね。じつは妹も持っていまして、妹もすごく気に入っているみたいですよ」
というように、ひと言でも理由があると「それでこの人は褒めているんだ」と相手は納得してくれるものだ。
ただ「いいです」「すごいです」では、あまり知性は感じさせられない。しかし、ひと言「褒める理由」を付けるだけで、褒める側の頭のよさも演出できる。
私たちは、どのような行動にも「なぜ?」という理由を、無意識に求めている。だから、たとえひと言でもいいから、行動にはいつでも理由を付けられるようにしておこう。
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