マッキンゼーなら常に「完全な仕事」が当たり前:マッキンゼー流仕事術
UP OR OUT(バリューを出し続けるか、出て行くか)──。言葉にすると厳しいかもしれませんが、どんな立場のどんな仕事でも「完全な仕事をする」「常に前向きに」ということを当たり前にしておいたほうが、結果的にバリューに困ることがなさそうです。
『マッキンゼー流仕事術』について
なぜ、マッキンゼー出身者は各業界で活躍できるのか? その秘密はマッキンゼーの新入社員研修にありました。本連載ではマッキンゼーの厳しい新人研修を著者のエピソードと共に紹介しながら、そこで叩き込まれるマッキンゼー流問題解決の基本を解説しています。
この記事は2013年4月27日に発売されたソフトバンククリエイティブの『マッキンゼー流 入社1年目問題解決の教科書』(大嶋祥誉著)から抜粋、再編集したものです。
通常コンサルティングファームでは、クライアントに対するアウトプットはきっちりとした提言書にまとめられます。しかしマッキンゼーでは、それまでのプロセスでも常に「完全な仕事」(Complete work)を求められます。
例えばプロジェクトのミーティングが1週間後にあるとしましょう。マネジャーからは、そのときまでにある業界の現状分析を資料にまとめるように頼まれていました。
ところが急きょ、別の問題が発生して対応に追われてしまったために、頼まれていた資料が半分しか用意できなかった。
一般的にはマネジャーに状況を報告すれば、「それなら、用意できなかった資料は口頭で話して、後日あらためて配布して」などと指示されるかもしれません。けれどマッキンゼーでは、たとえミーティングでの資料といえども「半分しかできていない」ものは許されないのです。
半分の資料で何を検討できるの? ということです。その仕事にはA〜Eまで5つの要素が関係してくるのに、BとCの分析資料しかありませんというのでは、意味がない。とにかく必要なものは会社で徹夜をしてでも間に合わせるのが当然、という緊張感がすごくありました。
だからといって、悲壮な感じでもないのがマッキンゼーらしいところ。「どうしよう! 徹夜しなければ間に合わない」ではなく、「なんだ、徹夜すれば間に合うよ」というポジティブなマインドセットが基本的にあるのです。
もちろん、ただ間に合いさえすればなんでもいいわけではありません。中身の質にもComplete workが求められます。
自分では完璧な資料と思っていても、上司からは“赤”が入るのはザラ。新人の間では、「大前さんに資料を渡したら、そのままシュレッダーにかけられた人もいるらしい」という伝説のような話も流れていましたが、「まあ、あり得ない話ではないな」と思ったぐらい厳しかったのです。わずか入社1年目で「どこまでやれば完璧なのか」なんて見極められるわけがないという見方もできます。
しかしだからといって、それを言い訳にはしない人たちが集まっていました。もう、本当に頭から赤い汗が流れるのでは? というぐらい必死になって取り組んで「これだ!」という自分だけのインサイトを探し当て、それを軸にしたアウトプットが出せたときは、自分でも本当にうれしいし、周りからも評価してもらえます。
完全な仕事を目指しているからこそ出せるバリューというのがあるのだと思うのです。
UP OR OUT(バリューを出し続けるか、出て行くか)──。
言葉にすると厳しいかもしれませんが、よく考えてみれば、どんな立場のどんな仕事だって、そうですよね。お蕎麦屋さんが、伝統の味を守り続けることも立派なバリュー。常に、お客様を満足させ続けるというバリューを出せなければ、競争から出て行かなくてはならないということなのですから。
それだったら、最初から「どんなときも完全な仕事をする」「常に前向きに」ということを当たり前にしておいたほうが、結果的にバリューに困ることがなさそうです。この基本姿勢を意識するだけでも、仕事の結果がまったく違ってくるはずなので、ぜひ皆さんも自分の仕事に対する基本姿勢を再確認してみてください。
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