「君はボールを投げたら拾ってくるワンコ。それだけ」――ぶら下がり社員を変えたひと言:続「新・ぶら下がり社員」(3/3 ページ)
言われたことはきちんとこなすけど、それ以上はやらない。頑張らない。そんなぶら下がり状態に葛藤を持ちながら日々を過ごしていたある日、上司や先輩社員の一言がきっかけでまた仕事を頑張る決意ができた。その一言とは……?
自分が働く原動力は身近にあった
吉田 その、上口さんにしかできないものって何なんでしょう?
上口 同年代の人が持っている悩みを知り、それをWebメディアを通じて解決のヒントになる情報を発信していきたいです。今回、吉田さんにお話を聞かせてもらえたのもメディアを通じてだからこそ、というのもありますよね。自分が見た、聞いた一次情報を広く伝えていきたいです。
吉田 友人でも同じように「ぶら下がり」で悩んでいる人がたくさんいるのですか?
上口 はい、たくさんいます(笑)。学生時代の友人と話をしていると、まさに自分もそうだよという人が何人かいて、ただ彼らは絶対に、仕事をさぼっているわけではありません。だから自分でもある程度罪悪感がなく過ごしている。けれどやっぱりどこかで活躍したい、とか仕事を楽しくしたいっていう気持ちはあるんです。
先ほど吉田さんが言われていた、今ぶら下がり社員な人は5年後も10年後も変わっていないという話を聞くと、「いや、自分は変わりたいし、友人にも変わってほしい」と思います。
吉田 友人には具体的にどうなってほしいですか?
上口 やはりイキイキと仕事をしてほしいと思います。職種にもよると思いますが、例えば金融系や公務員はやはり年功序列のようなので、安定はしているから、それ以外の働く価値をもって楽しく仕事をしてほしいなと。
吉田 なるほど。でもなぜ、他の人にイキイキと仕事をしてほしいと思うのですか? その原動力は?
上口 これまで仕事を通じて、いろんな人にインタビューをさせてもらいました。そこで感じたのは、イキイキしている人のほうが自信を持って自分の仕事を語ってくれるんです。そういう人はきっと自分の子供とか奥さんとか友人に仕事のことを楽しく自信を持って伝えられていると思うんですよね。
人って基本的に笑顔のほうがいいですし、それと同じで、仕事をイキイキしているほうが話をしても、人間的にも充実しているのかなと思うからです。
吉田 自分らしさ、とか自分だからできることに価値を見い出すのはすごく大切だと思っていまして、いま上口さんと話をしていて、すごく周りの人にイキイキしてほしいという思いを持っていますよね。笑顔で子供に仕事を語れる人が増えたらいいなとか、仲間や友人をすごく大事にする人だなという印象です。
前の部署にいるとき、機械的な作業でロボット化していたと言っていましたが、その環境でも、上口さんがいるからみんな楽しいぞ、とか、チームで働く感覚って何か楽しいよね、みたいなことに対して影響を与えられたら、上口さん自身もイキイキできるのではないでしょうか? たとえ希望とは違う仕事をしていても、周りの人のイキイキに対して影響を与えながら仕事をすることは、上口さんらしいと思います。
上口 ありがとうございます。これはまた別の先輩に言われたことなのですが、「例えば仕事がすごいできる嫌なやつと仕事ができない上口さんだったら、上口さんと働きたい」と言われたことがあるんです。そういう風に言ってもらえるのは幸せなことなので、そこに働く価値を置いていったらいいのかなと思いました。
今まさに「ぶら下がり状態」の人へ
上口 ここで少し話題を変えて、当時ぶら下がり状態だった私もそうなのですが、ぶら下がりって何だかんだで居心地がいい面もあるんですね。ただ、ぶら下がり社員ばかりになると周りの頑張っている人たちの負荷が大きくなる危険があります。そんな部下を抱える上司は燃え尽きていく社員とぶら下がり社員の面倒を見ながら、かつ業績のことも考えなくてはいけない。大変です。部下としてできることはありますか?
吉田 いろいろありますが、最終的にはきちんと自分と向き合って、自分の「したい」という気持ちを見出していくことが大事です。結局その「したい」より「やらされ感」や日々のマンネリが強くなってくると、この組織じゃもう無理だとか、諦めが生まれます。するとさっき上口さんが言った周りにイキイキしてほしいよりも、この組織で頑張ったって、もう駄目だ……のような思いが強くなってしまいます。それを打ち破る原動力となるのは、やはり自分の「したい」気持ちなんだと思います。
上口 その「したい」気持ちはどうすれば見い出せますか? (次回に続く)
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