マッキンゼーは“見た目”にもこだわる:マッキンゼー流仕事術(2/2 ページ)
持ち物が仕事をしてくれるわけではないのは当たり前。けれど、細部にまで気を使い、相手に与える印象にも気を配るという姿勢は、結局、仕事のクオリティにもつながりクライアントにも影響を与えるのです。
伝わりやすいのどっち?
例えば次のような資料のチャートならAとBの、どちらのチャートのほうが理解しやすいでしょうか? 伝えたいメッセージは「A社の台頭が脅威になりつつあり、日本・アメリカ両市場でのシェア安定のために一層の努力が不可欠」ということです。
チャートAの問題点
- パッと見て、何をどう読み取ればいいのか分かりにくい
- 本来、このチャートでは自社と競合3社の日本市場、アメリカ市場でのシェ
ア推移を伝えたいのに、その意図が伝わってこない
チャートBの改善点
- 日本市場、アメリカ市場での自社と競合3社のシェア推移が分かりやすい
- それぞれのシェアの内訳もよく分かる
- つなぎ線やシェードを効果的に使っていることで、チャートの意図がさらに伝わりやすくなっている
比較してみると、伝えたいメッセージが視覚的に分かりやすく伝わるのはチャートBのほうですよね。神は細部に宿ると言われますが、このように細部にこだわり、伝えたいことを洗練させることで、ぐっと読み手をひき付ける資料になるのです。こうしたこだわりを面倒だと感じる人もいるかもしれません。けれど、優れたものには、必ずそうであるための理由があります。
マッキンゼーが「見た目」にこだわるのも、そこに至るプロセスを含めて、細かいところまできっちり押さえた仕事をすることで、後になってから「想定レベルに達していない」「思ったような結果が出ない」ということになるのを防ぐことができるからです。
一般的な仕事の場面でも、細かいところをきっちり押さえることは、いろいろな良い結果につながります。メールの件名、メモや会議資料でも、必ず何の資料なのか、パッと目に入り理解できるタイトルを付けるというのもそうです。
会議資料で「社内の省エネ対策における費用対効果」というタイトルよりは、「空調温度プラス2度で年間10万円コスト削減」のほうが、伝えたいことと伝わることのズレが少ないですよね。
資料の中身にはいいことが書いてあるから、読んでもらえれば分かると思っていても、相手が忙しい人であれば、すべて目を通してじっくり読み込んでくれるとは限りません。
プレゼン資料のタイトルやリード文だけをサッとスキャンして読み取っただけでも「何が伝えたいのか分かる」もの、そのうえでさらに「これは重要だ」と相手をひき付けるものにする習慣は、早めに付けたほうが絶対にプラスです。
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