マッキンゼーのプレゼン資料は、1チャート1メッセージ:マッキンゼー流仕事術(2/2 ページ)
クライアントの目が輝くプレゼン資料を作るために、どうすれば思考を深められるのか。実は、その鍵をにぎっているのは母国語の能力なのです。
1チャート、1メッセージ
マッキンゼーのプレゼン資料をご覧になったことがある人がどれだけいるでしょう。
ここに取り上げたものは、もちろん本物ではなくサンプル(何しろ厳重にクライアントの機密は守られます)ですが、マッキンゼーのプレゼン資料の雰囲気としては、ほとんど本物に近いものです。見ていただくと一目瞭然ですが、とてもシンプルであるということ。
基本は「1チャート、1メッセージ」。
結晶化された「これ!」というものが出てくるまで精査されたメッセージが1つと、関連があることが簡潔に説明されたチャートが1つ。このシンプルで強いメッセージになっているからこそ、クライアントを動かす力を持つわけです。
言いたいことがたくさんあって、とても1つには絞りきれない。そんな資料もよく見かけますが、それでは結局、どのメッセージも伝わりません。
ちょっと、思い出してみてください。皆さんが日ごろ、街の中を通り掛かったときに、「公共の掲示板」や「役所の広報板」を見かけることがあると思います。では、そこに掲出されている情報やメッセージを思い出すことができるでしょうか? たくさんのお知らせがあったり、メッセージが届いたりしているはずなのに、ほとんど視覚に飛び込んできていません。
でも、そもそも掲示板の存在自体があまり気に留められていないということもあるでしょう。それなら、電車の中吊り広告ならその内容を覚えているかというと、それもよほど自分が関心を持っていることが載っていない限り、目では追っても「自分の中に刻まれる」ほどではありません。
それは当然のこと。なぜなら、結晶化された、どれか1つのメッセージだけを伝えたいというものではないからです。しかし、同じ広告でもインパクトのあるメッセージの広告は心に残ります。例えば、ナショナルの「きれいなお姉さんは好きですか?」やシャープの「目の付けどころがシャープでしょ」など、心に響いたキャッチコピーの広告を覚えている人もいるでしょう。これらは、読み手の心に伝えたいメッセージを結晶化して、伝えたいことの神髄に迫っているからこそ心に残るメッセージになっているのです。
プレゼン資料に限らず、誰かに何かを伝えたいとき、メッセージを通して行動を促したいときは、結晶化されたメッセージを使うということを心に刻んでおくことをお勧めします。
もうお分かりのようにプレゼン資料は、プレゼン相手に「何らかの意義のあるアクションを起こさせる」ために作るもの。プレゼンを受けた相手が「具体的にどんな行動をすれば問題解決につながるのか」分かりやすく具体的に提示されていなければなりません。
それなのに「○○をさらに強化」「○○の活性化を促進」「○○を検討」というような言葉でしか具体的な行動計画が書かれていないのはNG。例えば「情報収集を強化」という行動に落とし込むのなら、どんな情報収集の仕方を、どのような仕組みの元でいつからどんな態勢で行うのかということまで明らかになっていなければ掛け声だけで終わってしまいますし、そもそも本当にそれで情報収集が強化できるのか判断することもできないからです。
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