こうして離職率は28%から4%に改善された――サイボウズ青野社長に聞く“これからの働き方”(1/2 ページ)
優秀な人材に、いかに長く活躍してもらうか――。これはIT業界の抱える大きな課題の一つだ。そんな中、28%に達していた離職率を4%にまで改善したのがサイボウズ。この成功の裏には、多様なワークスタイルを認める制度があった。この制度が生まれる背景やプロセスとは?
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サイボウズが多様なワークスタイルを認める理由
人材の流動が激しいWEB・IT業界。自らの成長のため、またより良い環境に身を置くために、転職を繰り返すエンジニアやクリエイターも多いことだろう。
その業界において、注目したい企業がある。企業や組織内の情報共有やコミュニケーションを支援するグループウェアの開発を手掛けるサイボウズだ。
サイボウズが長年取り組んでいるのがよりよいチームワーク、そして多様なワークスタイルの実現。今回、お話を伺ったサイボウズ社長・青野慶久氏が社長に就任した年の離職率はなんと28%に達していたという。
離職率の改善を目指して、「より多くの人がより成長して、より長く働ける環境を提供する」というポリシーを定め、ワークライフバランスに配慮した制度や、社内コミュニケーションを活性化する制度を導入した結果、離職率は4%まで低下。企業としても着実に成長を果たしている。
彼らはなぜ多様なワークスタイルを認めるようになり、それを上手く機能させるためのどんな制度を整えてきたのだろうか?
毎週のように送別会がある会社だった
―― サイボウズが多様なワークスタイルを求めるに至った背景とは、どこにあるのでしょうか?
青野社長: 避けて通れないのが離職率の話になりますね。サイボウズは創業以来、毎年15〜20%前後の離職率で推移していたんですが、私が社長になった2005年には28%まで上昇したんです。100人に満たない会社において、1年間で30人弱が辞めるとなると、オフィスの雰囲気も正直良くない状況でしたね。
「そんなに青野が社長になるの嫌か……!」なんて思ったこともありましたが(笑) 当時を考えると、業界的にはちょうど2度目のITバブルがはじけ、サイボウズとしても長時間労働や休日出勤が日常化していた時期。改めて、社員にいかに自社で長く活躍してもらうか? というテーマについて真剣に考え始めました。
まず始めたのが、社員の話をきちんと聞くこと。すごく単純なことなのですが、みんなが求めている働き方が本当に多種多様なんだなということが分かってきたんです。
そこで、どんな人でも気持ちよく働ける環境を作っていこうと、社員と一緒になってあらゆる人事制度をボトムアップ型で整えてきました。制度の充実と社員への浸透によって2012年には離職率を4%まで下げることができました。
―― さまざまな制度があるようですが、その判断軸はどこにあるのでしょうか? 社員の定着のためなら、なんでもアリというわけではないですよね。
青野社長: おっしゃるとおりです。制度は必ず、サイボウズの目指す「グループウェア世界一」という目標に対して同じベクトルを向いているものでなければならない。うまくいっている他社の取り組みをマネするだけではダメなんです。
また、「社員の定着を目指す制度=社員を甘やかす制度」になってしまっては元も子もありません。もちろん社員には、自分にあった環境で長く働いてもらいたいと思っていますが、居心地のいい空間に居続け、会社に依存し自律できないいわゆる“ぶらさがり”のようなエンジニアやスタッフを抱える気はまったくない、ということは、社員に伝え続けています。
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