社長を目指せばうまくいく――元トリンプ社長が説く「社畜」からの逆転術とは?:企業家に聞く【吉越浩一郎氏】(2/2 ページ)
女性下着メーカーのトリンプ・インターナショナルの元社長・吉越浩一郎氏は、全員が社長を狙えと説く。その中には合理的な自己実現のための技術と社会へのメッセージが含まれている。
仕事は楽しいものじゃない
まつもと: 落伍者を生む競争は不可避、という話にも通じますが、自分のビジネスをコントロールできるようになるべく、日々の仕事と向き合う際には、いろいろなストレスやいざこざがあります。これは避けようがないのでしょうか?
吉越氏: 結果を出すまでのプロセスにおいてはその通りですね。仕事のプロセスは苦しくてつらいものだと割り切った方がいい。「残業ゼロで増収増益」とは、決められた時間内でほかの誰にも負けないような仕事をしよう、と宣言しているわけです。1時間かけていた仕事を45分で終わらせる、迷わず判断は即下す――定時にはもうみんなクタクタですよ(笑)。でも、そうやって結果を出せば、会社の雰囲気も盛り上がってくるし、自分の仕事も楽しいものになっていく。
まつもと: 結果とプロセスにおいて、PL(損益計算書)を常に念頭におくべき、とも説いておられますね。
私のビジネスパーソンとしての土台は、香港のメリタ・パシフィックで培われた。そして、それがそのまま将来社長になるときの準備になっていた。
具体的にいうと、PL(損益計算書)に対し責任を持たされたことで、仕事への取り組み方が劇的に変わったのだ。
吉越氏: そうですね。あくまで結果で評価する/されるべきで、例えば「売上が上がった!」と喜んでも、実はそれは過程に過ぎないんです。販促費などの経費がかさんでしまい、肝心の結果としての利益が確保できていなければ元も子もない。
逆に言えば、利益が十分出るなら、必要なコストはかけるべきです。僕がそれを強烈に感じたのは、香港に赴任したときに、20代の役員でもなんでもないドイツ人の同僚が着任早々に秘書を雇ったことなんです。「生意気な」と最初は思ったけど、時間と生産性を考えるだけでも、これは実に合理的なのです。
あちこちに自分で電話をかけて、走り回るのが仕事だと思っていた私にとって衝撃的でしたね(笑)。でもPLを意識しないということは、自己満足に終わってしまうリスクを常に抱えるということ。逆にPLを意識するのは、まさに経営者感覚を磨くことだから「社長を狙え」にも通じるんです。
『「社長」を狙うか、「社畜」で終わるか。』ではヘッドハンターと上手に付き合う術も紹介していますが、その肝もやはりPLにあります。外資系の会社をクライアントに持つ彼らは、その人材が事業をどうレバレッジさせられるかを見ています。本人がいかに頑張ったか、とか意欲を持っているかは二の次なんです。PLで語れない限りは、「ああ、この人は大した仕事を任されていなかったんだな」という評価から一歩も出ることはありません。
(後編に続く)
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